小瓶の中には
「こんなに小さくなっちゃって」
とても小さくなって戻ってきた”其れ”を見てそんなことを言う。”其れ”は以前の面影も全くなく、私は”其れ”に対して愛惜の念も、悲壮感も湧かなかった。”其れ”はただのカルシウムの塊だった。
私は”其れ”を粉々に砕いて、小瓶に詰めた。『貴方に見下されるのは癪』なんて言ってた癖に、更に小さくなるなんてね。
小瓶の中に入った”其れ”は太陽の光に当たってキラキラと光を反射していた。
まるで宝石を砕いたみたいに。
「君、キラキラした物好きだったもんね」
小瓶のコルクを抜いて、そのキラキラした宝石を私の中へと詰め込んだ。
なんだかこうすれば君と一緒にいられる気がしたんだ。そんな訳ないけれど。
小瓶に詰められなかった君の半分は、今頃日当たりの良い土の下にでもいるだろう。
それがなんだか少し悔しい気もした。
「之は”君”じゃあないのにね」
喋らないし、笑わないし、之は君なんかじゃない。
「まァでも、君は寂しがり屋だから」
傍にいてあげる。
___昨夜、××海岸に打ち上がった男性の遺体が発見されました。死因は溺死と思われます。警察は事件性は無いと見て___
人が2人ほど消えようが、世界は今日も回る。
其れが日常。
ありふれた午後の昼下がり。