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花火の音

 空に打ち上がる花火を狭い部屋の中で音だけ聴く。

 パラパラと言う音が遠くで聞こえる。

 暗く、物が散乱した部屋。

 机の上にはノートやらテキストやらが所狭しと互いを邪魔するように広げられている。

 携帯の通知が、自分以外の人間の楽しそうな様子を知らせる。

 その携帯を掴んで投げそうになって辞めた。

 文字列は段々と汚くなり、頭の上を滑る。

 積まれたテキストが心を圧迫する。

 時計と針が進む音が時間の有限さを物語る。

 花火なんて、見たところでなんの役に立つ。

 そんなものが将来の足しになるわけがない。

 そんなくだらない言葉を頭の中で並べた。

 プラス、マイナス、掛ける、割る。

 ルートに累乗、虚数i。

 漢字に文法にアルファベット。

 これを乗り切れば将来は明るいらしい。

 一般人になれるらしい。

 シャープペンの出しすぎた芯が折れた。



 私は『普通』にはなれなかった。

 花火が終わったあとも、狭い部屋から出ることは無かった。

 通知はひとつも来なくなった。

 携帯の連絡先はひとつもなかった。

 相変わらず汚い部屋。

 積まれていたテキストは紐で縛られて隅に追いやられていた。

 折れた芯はそのまま机に残ったまま。

 シャープペンから新しく芯が繰り出されることはなかった。

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