第4章 – 訓練
車は町から遠く離れた巨大な基地の前で止まった。そこは喧騒から切り離された静寂の中にそびえ立つ場所だった。巨大な建物が堂々と建ち、入り口には「G.S.A.P.」の大きなロゴがはっきりと掲げられている。
俺はその光景に驚きと戸惑いを覚えながら、基地をじっと見つめていた。車は厳重に管理されたフェンスの前に停車し、周囲には厳重なセキュリティが張り巡らされているのが見える。
運転席のカエルが俺に視線を向けた。
「ここがG.S.A.P.の本部だ。我々はここで宇宙のあらゆる脅威に対応するための訓練を受ける。」
彼は車を止め、ドアを開けた。
「君はこれからここで軍事訓練を受けることになる。これは入隊プロセスの第一歩だ。」
俺は車から降り、これまでの故郷では感じたことのない新鮮な空気を吸い込んだ。静寂が支配するこの場所は、まるで俺が知っている世界から切り離された異質な空間のようだった。
「脅威?宇宙から?」俺はまだ信じられない気持ちで尋ねた。まるでSF映画の世界に足を踏み入れたようで、目にするすべてが現実離れしていた。
カエルはうなずき、視線を前方に向けたまま説明を続けた。
「ああ。G.S.A.P.—『Galactic Security Atmosphere Preservation(銀河安全保障機構)』は、異星人、他の銀河からの攻撃、そしてこの世界の均衡を脅かすあらゆる存在から全宇宙を守るために設立された組織だ。」
彼は俺を促しながら基地のメインゲートへと歩を進め、先導するように中へ入っていく。そこには見たこともない高度な軍事設備と最新技術があふれていた。
突然、遠くから奇妙な音が聞こえ、俺は思わず足を止めた。カエルも立ち止まり、指で「静かに」という合図を送る。
その瞬間、影の中から何かが素早く通り過ぎた。基地の構造物の陰から現れたのは、人間とはかけ離れた巨大な存在だった。
「な、なんだあれは?」俺は驚きのあまり声を漏らした。
その生物は見たこともない姿をしていた。鱗に覆われた体、光を放つ鋭い目、そして人間よりもはるかに大きな体躯。
しかし、カエルは驚く様子もなく、淡々と答えた。
「あれは訓練用の異星生物の一種だ。心配するな、彼らはこの基地の防衛システムの一部として訓練されている。」
彼は肩をすくめながら続ける。
「いずれ君も訓練を進めるうちに彼らの存在に慣れるさ。」
俺は混乱しつつも、ただ黙ってうなずくことしかできなかった。宇宙には本当に異星生物が存在するのか?この世界は俺が思っていたよりもはるかに広大で未知に満ちている。
俺たちはさらに奥へと歩みを進めた。基地内部は想像以上に広く、巨大なドアが開かれると最先端の装備と訓練施設が目に飛び込んできた。
中ではすでに多くの教官と訓練生たちが、軍事訓練に励んでいる。
「ここでお前は鍛え上げられる。肉体だけでなく、精神もな。覚悟しろ、ハーヴ。ここでは普通の人生は送れないぞ。我々は宇宙を守るために選ばれた存在なのだから。」
カエルは訓練施設の前で立ち止まり、振り返って俺を見た。
「さあ、最初の訓練を始めよう。」
俺は深く息を吸い込み、うなずいた。
何が待ち受けているのかはわからない。しかし、ここでなら俺が探している答えが見つかるかもしれない。
G.S.A.P.に入隊した俺は、厳しい軍事訓練の日々を送ることになった。
毎朝、夜明け前にけたたましいサイレンが鳴り響く。俺たちは強制的に起こされ、わずかな時間で10キロを走らなければならない。
天候に関係なく、止まることは許されない。失敗すれば、腕立て伏せを何百回も課され、再び走らされる。
そして、その後にはさらに苛酷なフィジカルトレーニングが待っていた。
ある日の夜、俺は訓練施設のベンチに腰掛け、手に巻かれた包帯を見つめていた。
そのとき、声をかけてきたのは訓練仲間のアレックスだった。
「なあ、ハーヴ。なんでそんなに真剣な顔してんだ?」
俺は顔を上げ、アレックスが俺の隣に座るのを見た。
「…別に。ただ、もうすぐ訓練が終わるなんて信じられなくてな。」
アレックスは笑みを浮かべ、俺の肩を軽く叩いた。
「それはお前が本気で頑張ってる証拠だろ?なあ、誰か大切な人でも思い浮かべてるんじゃないのか?」
「…たぶん。」
「俺たち男は、守るべき存在があるからこそ戦うんだぜ、ハーヴ。」
彼はポケットからスマートフォンを取り出し、一枚の写真を見せた。そこには彼と一緒に映る美しい女性の姿があった。
「アンジェラ、俺の“半分”だ。」
「…彼女か?」
「ああ。訓練がつらくて挫けそうになったとき、いつも彼女が支えてくれた。俺は彼女とこの地球を命がけで守るつもりだ!」
俺はその言葉に心を揺さぶられた。俺にも大切な存在がいる――リッサだ。
「俺も…絶対に守ってみせる。」
この場所で、俺は絶対に引き返さない。リッサを守り抜き、あいつ――オーゼンに報いを受けさせるために。
「俺は…必ずやり遂げる!」