1/9

プロローグ：新しい世界

夜風が優しく吹き、ゆっくりと揺れる木の葉を撫でる。堂々と空に浮かぶ満月の光の下、一組の恋人たちが夜露に濡れた新鮮な草地に並んで座っていた。暗い空には星が散りばめられ、まるで彼らの幸せを静かに見守っているかのようだった。

男は深く息を吸い込み、その瞬間を味わいながら、女は彼の肩に頭を預けていた。心地よい静寂の中、ただ二人の鼓動だけが語り合っていた。

「ねえ…」

女は囁くように声を出し、指で彼の手を弄びながら、

「他の世界が本当に存在するって、考えたことある？」

男は微笑み、まだ空を見つめたまま、

「別の世界か…僕たちとは違う『僕たち』がいる世界ってこと？」

女はゆっくりとうなずいた。「うん…もしかしたら、そこでは私たちの運命は違っているかもしれない。別の形で出会っているかもしれないし、もしかしたら…」

彼女は一瞬言葉を止め、小さく微笑んだ。「…全然出会っていないかもしれない。」

男は軽く笑い、彼女の手を握りしめた。

「もし他の世界が存在するなら…彼らも今の僕たちみたいに幸せでありますように。」

女は顔を上げ、彼の誠実な瞳を見つめた。

「もし彼らが幸せじゃなかったら？」

男はゆっくりと息を吸い込み、優しく、確かな声で答えた。

「それなら…いつか彼らが出会って、僕たちと同じ幸せを感じられる日が来ることを願うよ。」

夜は更けていくが、彼らにとっては月明かりの下で時間が止まったかのようだった。彼らが気づかないうちに、運命は風の中に囁き、まるで彼らの願いに答えているかのように。