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9話 -名を与える-

 



「ねぇねぇ、サキュバスになってそれから地球に戻ったりとかできる?」


「ガッガッガッ!そりゃあ無理な相談だな」


 臥龍岡ながおか 小袖こそでは上目遣いでアヒルに聞いたのだが、あっけなくNOを突き付けられた。


「というか………」


 少し驚いた顔をして九十九は言う。


「お前って何者?」


「そう言われてみれば確かに名前も知らないし、何も知らない」


 なぜ今まで疑問を持たなかったのだろうかと九十九は少し怖く感じた。


「ガッガッガッ!俺はただの案内人さ。名前なんかない、必要ないのさ。死に過ぎる人間たちの手助けをしてやろうっていうことで、上の存在が作り上げた仮初の命だ」


「そうなんだ………名前がないとなんか呼びにくいかも。隊長でいい?」


「ガッガッ!それはなんだ?」


「名前。あった方が便利でしょ?」


「それって剛腕ダッシュのアヒル隊長から名前を取ったのか?」


「あ!わかる?アヒル隊長ってかわいいんだよね。私好きなんだ」


 小袖は楽しそうに言う。


「ガッガッガッ!名前なんてなくたっていいよ」


「なんで?」


「ガッガッ!なんでってもう会うことなんかほとんど無いだろうさ」


 確かに名前なんかなくてもいいような気もするが、そういわれるとなんだか寂しく感じてしまう。


「けど別に名前があったって困らないんだろ?」


「ガッガッ!そりゃあそうかもしれないけどな」


「それじゃあ決まりね。よろしくね隊長」


「隊長か………悪くないな、それじゃあ今から俺のことは隊長って呼んでくれ」


 モニター上のアヒルの画像からは分からないが、声の感じからするとどうやら嬉しがっているようだ。


「隊長、サキュバスにして異世界に行くことにしたら本当にこんな姿になれるの?」


「ガッガッガッ!そのはずだぜ」


「めっちゃいいじゃん………あれ?」


「どうした?」


「なんか灰色になってて選択できないのがある」


 小袖の方の画面に目を向けると確かにそうだ。


「天使、竜人、魔人にはなれないんだ。ねぇ隊長、なれないのにどうして表示してあるの?」


「ガッガッガッ!今はなれない、けど魔臓が十分に成長した後からだったらなれるからな」


「え?九十九は言ってることわかる?」


「さっぱりわからない」


「ガッガッガッ!人間には魔臓が無いからな。魔臓を持たない種族からいきなり上位種族にはなれないんだ。駄目だな、上手く説明できてないな」


「なんとなくわかるよ!ねぇ」


 小袖が九十九に笑顔を向ける。


「進化みたいなものか。上位種族になるためにはクリアしなきゃいけない条件がある、みたいな」


「そう!そんな感じで私も思った。違う?」


「ガッガッガッ!そうだ、そんな感じだ」


「けどどうやったら天使になれるのかがわかんないんだけど、何にも書いてないし」


「そうだな。これはもし条件を満たしたら勝手に種族が変わるのか?」


「えーそんなの嫌だよ。竜人とかに勝手になっちゃったら困る。サキュバスは可愛いけど竜人は可愛いかどうかわからないじゃん」


「そうだよな、もし竜人が全身緑鱗の顔トカゲだったらどうする?」


「えーそれは嫌だよー」


「ガッガッガッ!安心してくれ、勝手に種族が変わるなんてことは無い。その時はここの戻ってきてこのモニターで操作しないと変わらないようになってる」


「え!?どういうこと?」


「ここにまた戻ってこれるのか?」


「ガッガッガッ!戻ってくるためのアイテムがある。「神宝玉」っていうやつなんだけどな、それを使えばここに戻ってこれる。それで条件を満たしていれば種族を変えることが出来るぞ」


「「神宝玉」かなんかかなりレアアイテムっぽい感じだな。手に入るのかそれ?」


「ガッガッガッ!運しだいだな。向こうの世界に必ず7つはあるはずだから頑張って探せば見つかるんじゃねぇの?」


「7つか………」


「でももう無くなってるかもしれないんじゃない?」


「そうか!」


「ガッガッガッ!それはないな」


「だったアイテムなら使ったら無くなるんじゃないの?」


「ガッガッガッ!無くなる。無くなるがその代わり世界のどこかにはまた新しく「神宝玉」が生まれてる。だから必ず7つはあるんだ」


「そういうことか」


「ガッガッガッ!それともう一つ言うと「神宝玉」を使えるのは他の世界から来た人間だけ。そうじゃないやつには使うことはできない。だから人間が持ってる、なんてことも普通にあると思うぜ」


「それってどんな見た目のやつなの?」


「ガッガッガッ!それなら出せるぜ、ほらこれだ」


 画面に表示されたものは眼球のような丸い玉なのだが溶岩のような赤色で、その真ん中には細長い葉っぱのような黒い瞳孔がある。


「なんかの目みたい。ちょっと怖い」


 確かに怖く感じる。ただの画像なのに触れてはいけないもののような迫力がある。実物はどれほどのものなのだろう。


「ガッガッガッ!近くにあればわかるはずだぜ、何か感じるものがあるはずだからな。手の平に乗るくらいの大きさだからな頑張って探せよ」


「結構デカいな。どこにあるのか分からないのにどうやって探せばいいんだ?もし海の底にあったら一生見つからないだろ」


「あ!確かに海のど真ん中とかにあったら絶対無理だよね」


「ガッガッガッ!そうなったら他のやつを探せばいいさ。7つもあるんだから全部が全部海の中に落ちてるわけじゃないだろう」


「けど探すのは相当きついな。見つかるまで世界中を探し回らないといけないのか。というか不可能だろ」


「ガッガッガッ!転生する奴には「神宝玉」を探すためのアイテムはくれてやるからそれで十分探せるはずだ」


「なんだそうなのかそれってどういうやつだ?」


「ガッガッガッ!ボタンを押すと地図が出てきて、近い距離、中くらいの距離、遠い距離でそれぞれの自分の位置と「神宝玉」の場所が光って見れるようになっているやつだな。使ってみたらすぐに分かるはずだ」


「そうか、それならなんとなくいけそうかもしれないな」


「ガッガッガッ!まあ近くにあったら探すくらいでいいんじゃないか。そんなに頻繁にここに戻ってこなくてもいいだろ。「神宝玉」とか偉そうな名前はついていても、あとは元の世界に戻ることくらいしかできないアイテムだしな」


「えぇええええええ?!」


「はぁああああああ?!」


 九十九と小袖は大声を上げた。




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