家
半日ほど歩き続け、いくつかの町をぬけ、アルヒポリの中央に位置する都市に辿り着いた。
そこは、今まで通ってきた町のどれよりも壮大な都市だった。
数十メートルはあるであろう滑らかな石の建物がいくつも並んでいる。
その中に、一際目立つどの建物とも比べ物にならない建物があった。
石のようだが、一切の色の無い黒色。見方によっては、白色にも見える。
それを眺めているとシオンが話しかけてきた。
「あの建物が気になるの?」
「うん」
私は首を縦に振って答えた。
「あれはね、この国を護る結界のようなもの」
「結界?」
「そう、長い国の歴史で1度も敗戦したことがない所以のひとつ、初代皇帝のナスタチウムが構築した大規模結界術の要。それが、あの塔。」
「何でできているの?石?にしては少し変」
「あれはね、希少な鉱物の魔晶鉱から削り出して作った物なんだ。でも、そんな大きさの魔晶鉱は伝説と同じぐらい希少なんだ。」
「じゃあ、もうあれを作ることは出来ないの?」
「そうだね。でも壊すことが出来ない。魔晶鉱は魔法以外で傷つけることが難しいからね。」
「そうなんだ」
「着いたぞ」
サクラがそう言い指さした先に、小さな石造りの屋敷があった。
「ここが、あなた達の拠点?」
「そうだよ。」
サクラが錠前を解いて、戸を開ける。
まず、吹き抜けの大広間が見えてその奥に階段が2つ見える。
内装は、椅子やテーブル、燭台の蝋燭の長さまで左右対称で、少しホコリを被っていて、当たる陽の光は色を付けられて輝いている。
その内装に興味を惹かれ眺めていると突然ヒスイが
「ライム、着いてこい」
といって腕を掴まれ、そのまま私を引き摺って2階の1番手前の部屋に投げ込んだ。
「ここがお前の部屋だ、掃除しておけ」
部屋を見渡してみると、全く整備されていない部屋でホコリが積もっていて、蜘蛛の巣が部屋の隅にかかっている。
入ってすぐのホールとは違い、何十年も使われてなかったよう。
続いて箒を投げ込まれる。
「夜までには綺麗にしろよ」
腕をまくって、箒を拾った。
そして部屋全体を陽の光が照らす頃、その部屋は少なくとも人が過ごせる程度にはなったと思う。
「終わったか?」
サクラがドア越しにたずねる
「終わったよ」
「そうか、夜食ができてるから降りてこい」
「わかった」
服に付いた埃を払って、下に降りる。