第7話 角砂糖
『角砂糖』を知らない人なんていないだろう。
1センチ四方に固められた砂糖の塊で、コーヒーや紅茶に入れるもんだ。
…え?そのまま食べる?
否定はしないが糖尿になってもしらんぞ。
突然何を言ってんだ。と思った人は多いだろう。俺は今、角砂糖の正しい使い方を確認したかっただけなんだ。
さて、本題に戻ろう。
微笑む妖精(仮)。輝く角砂糖。そこから人が…。
…って
「お前…!なにをしたっ!?」
「あぁ、これは簡素な魔法陣です。今回は丁度いいものがなかったので、角砂糖で代用しました。」
角砂糖でなに作ってんだよ……。
「やればできるものですね」
妖精(仮)は笑顔で言った。
角砂糖…もとい、魔法陣から出てきたのは、筋肉隆々で、ステキなお髭をたくわえた、渋めな壮年の男性だった。
……それだけなら聞こえは良いのだが……
「…なんで全身タイツなんだ?」
…壮年の男性は真っ赤なタイツに身を包んでいる。
渋めな顔や筋肉質の体とも相まって、それは不気味としか形容できない…。
「より、自然の力を取り入れるためです。」
赤タイツ氏(命名、俺)は真摯な表情でそう答えた。
……が、全く説得力が無いのは何故だろうか?理由も意味分からんし…
「おや?ケペクさん…長老様はどちらですか?」
妖精(仮)が赤タイツ氏に尋ねる。
どうやら赤タイツ氏の本名は『ケペク』と言うらしい。
「まず私が来て安全を確認してから、長老様をお呼びして……その後サバーカが来る手筈だ……」
「…あの方も来るんですか?」
「長老様の安全を最優先に考慮した結果、それが最善の方法だったんだ…」
……なぜだろう?空気が重い…。
確かケペク氏が『サバーカ』とか言った瞬間から顔が曇っていたような……。文脈からして人名だろう。
「なぁ?」
「…なんでしょう?」
笑顔がとてもひきつってらっしゃる。
「その『サバーカ』とか言う人は何なんだ?」
「………すぐ分かりますよ…」
「…またそれか…」
俺がそう言うと同時に輝く角砂糖改め魔法陣。また人が出てきた。……人か?
その人(?)はテーブルの上に立っているのに、身長は椅子に座っている俺の目線の高さほどしかない。小さな老人だった。
「…セネカよ」
「はい」
妖精(仮)の名前発覚。『セネカ』と言うらしい。
初対面の時は頭が混乱していてそれどころじゃなかったからな…
「この方が異世界の…?」
「えぇ。どうやら……」
ガコンッ!
「なんだ?」
あれ?皆さん?さっきより更に顔が曇ってますよ…?なぜ全員でうつ向いているんですか?
物音がした方に目をやると、想像を絶する光景が広がっていた…。
「ナッハッハ!私のパワフリャーな筋肉がつっかえてしもうたわ!」
テーブルからマッチョが生えていた…。
うん。ケペク氏よりも一回り大きいマッチョだ。
いや待て!オカシイだろ!
マッチョ!?
よく見るとマッチョは魔法陣から生えている……のではない。ただつっかえているだけだ。
見事に魔法陣から上半身だけを出しているマッチョは、もはや畏怖の対象でしかなかった…。
「おいサバーカ。長老様の御前だぞ」
この人がサバーカか。ケペク氏とは対照的に青い全身タイツだ。
よく見ると顔も似ているような……
「おぉ!兄者!助けて下され」
なるほど。ご兄弟でしたか。納得です。
「戯けっ!そこで頭を冷やしておれっ」
俺の中でのサバーカ氏の第一印象は『暑苦しい』に決定だ。
…というか、この方々は『妖精』を名乗っているわけだよな……。
是非ともティ○○ー○ルに謝ってほしいものだ。
「異世界のお方…」
「はい」
後ろの2人を無視して、長老が話しかけてきた。
「この世界には言い伝えがありまして…」
「…はぁ……」
「詳しくはケペクが話します…」
えっ?丸投げ?
前途多難にも程がある…。
…つづく
秋田犬ですm(__)m
今回は名前について書きます。
セネカの名前は、古代ローマの哲学者『ルキウス・アンナエウス・セネカ』からつけました。
つけた理由は、ただ単に賢そうな響きだったので…。
長老の付き人として出てきた『ケペク』と『サバーカ』は、どちらも日本語に訳すと『犬』と言う意味です。
次回はやっと話の本筋に触れます。構成力の無い作者なので、一話でまとまるかわかりませんが……orz
それではまた次回m(__)m