僕らの種族は可でも不可でもない
「知ってるか?地球じゃ黎明期、有色人種を白人が奴隷として扱ってたんだ」
葉巻を噛み切らん勢いで口に咥えて喋る男。
僕らは異星人を数十人捕獲してとある惑星へ護送中だった。
「同じ星に生まれたのに差別があったんですね」
「そりゃあもう、差別というには生ぬるい扱いだったそうだよ」
「彼らを奴隷として扱うのですか?」
サイが尋ねた。
男は無言でうなづいた。
「人権とか、僕らは嫌というほどその問題に向き合ってきたはずです。それでも立場の違う人種は平気で虐げられるんですか?」
僕が聞くと。男は苦虫を噛み潰したような表情で、
「上層部のお偉方に聞いてみな」
と答えた。
惑星は資源の宝庫で、開発するのが楽しみだった。僕らはただ地球人である、というだけでその恩恵にあぐらをかいていた。異星人たちはこき使われたが、最低限の温情をもって扱われた。
ある日、飛行艇がやってきて、異星人たちの持ち主と名乗る白い人々が降り立った。
僕らが奴隷として扱っていたのは実はよくできたアンドロイドだった。
上層部は白い人々の科学力を前に全面降伏した。
「銀河系の人型生命の連盟に地球人を加えるべきか観察していたのだが」
上層部の面々は息をのんだ。
「可でも不可でもない。今後の経過次第だ」
白い人々はそう言って立ち去った。
上層部は奴隷のアンドロイドを解放したが、アンドロイドたちは惑星を開拓するのに夢中になってしまい、僕らは取り残されたような形になってしまった。
可でも不可でもない?生殺し状態の間違いじゃないのか?
僕は惑星の荒野を眺めながらぼんやりそう思った。