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架空競馬実況者

作者: くりゅ~ぐ

皆さんは 引っ越しした事があるだろうか?


自分は記憶にあるだけでも8回している

だから何だと言う話しだが。


皆さんの住んでいる所にも色んな人が居ると思う。


これはとある所に住んでいた時の話しだが

その町には 実況者が居た。


その実況者は 競馬の実況者であった。


その実況者はおじさんで いや おっさんで

競馬の実況をしていた。


おっさんは 自転車にいつも乗っていた


おっさんは微妙に小汚なかった。


とは言え いわゆる お家が無い人でも無いようだった


ただただ 競馬の実況をしていたのだ

しかもいつ見てもだ。


一応言っておくが 自分は競馬場の中に住んでいる訳では無いし 競馬場の近くに住んでいた訳でも無い


ならそのおっさんは何処で競馬の実況をしていたのかと言うと。


住宅地で競馬実況をして居たのである


そのおっさんは 大体夜に出没する


初めてそのおっさんの競馬実況に触れたのも夜だった


たま~に昼間の時もあったが 基本 夜に出没する


ここで皆さんは疑問に思うだろう

夜に競馬何てしてるの? と。


今でこそ夜間も競馬のレースは行われているが

当時はまだしていなかった筈だ


ならなんでそのおっさんは競馬実況してるの?


レースもやって無いのに何で?


答えは簡単である。


そのおっさんは 架空競馬実況をしていたのだ。


おっさんはおっさんの頭の中だけで行われる

レースの実況をしていた。


最初は自分も分からなかった。


とは言え何回かそんな事が続くと流石に分かる。


実際のレースの実況では無く架空競馬実況だったのだ


夜も遅い時間や 子供はもう寝なさいと言われる時間に、その架空競馬は行われる。


勿論そのおっさんの頭の中だけで行われる、特別レースだ。


おっさんは朗々とした 割りと良い声で架空競馬実況をする。


因みに声もデカイし、しかも良く通る声だ。


そして本当にレースが行われているかの様に実況するのだ。


毎日では無いが たまに実況しながら家の前を駆け抜けて行く。


おっさんは割りと自転車を漕ぐのが早い。


窓を閉めて居ても遠くから聞こえてくる


普通なら迷惑なのだろうが、一瞬で駆け抜けて行くので 意外と腹が立った事は無い。


そしてその 架空競馬実況だが、本当に今、レースが行われているかの様に実況するのだ。


これを見て

「ソレお前ん家の近くを通る時だけやってんじゃ無いの? 」と思うだろう。


所がどっこいだ。


自分がチャリに乗っている時に後方からあの実況者が現れた事がある、 おっさんは後方から何時もの様にチャリで駆け抜けて行った。


ソコは家から離れた場所だった。


この時点で「お前ん家の前だけでやってんじゃ無いの?」疑惑は解消された。


自分はチャリで少し着いていってみた。


どうせこの道、この方角なら、家に帰る 帰り道なのだからと、しかし。


自分は、自分の甘さを実感する事になる。


おっさんはチャリで何時も駆け抜けて行く


そう、おっさんはチャリを漕ぐのが早いのだ!


そこそこ早漕ぎしつつ後方からマークしていたが

おっさんは自分が接触してから15分は、架空競馬実況を続けていた。


因みに自分の家に到着したので架空競馬実況は、その時点で強制終了した。


おそらくだが実況は続いていたと思われる。


と言うか、遭遇する前から架空競馬実況が続いていたから、間違いなく15分以上は続いていた事になる。


一体何時まで続くのだろうか・・・


「気になるなら着いて行ったら良かったのでは?」

と言う人も居るだろうが


たまたま帰り道が同じ方向だから 着いて行っただけで 敢えて着いて行こうとは流石に思わない。


つーか 怖ぇーわ!



あのおっさんは 何処でも現れる。


住宅地だろうが街中だろうがだ。


それこそ人が居ようが居まいが。


人通りがあろうが無かろうが。


人通りが多かろうが少なかろうが そんなの知った事では無いと言わんばかりだ。


ある時は周りに建物も無い人通りの無い道で。


ある時は街中のいわゆる市街地の華やかな所で。


市街地の、夜とはいえ人通りの多い場所で架空競馬実況は行われるのだ。


しかも朗々とした美声で おっきな良く通る声で、

架空競馬実況は行われる。


当時付き合っていた彼女達 何人かもアレを聞いている、皆最初はビックリしていたが 何回か聞くと、

「あっ 又あのおっさんだ」と言う。


家で、街中で、市街地で、彼女達も遭遇した。


夜遅い時間に 架空競馬実況が聞こえて来ても

彼女達も怒ったりしなかった。


やはり一瞬の事だからだろうか?


架空競馬実況のおっさんの声がチャリと共に駆け抜けて遠ざかって行く。


最初はビックリして、架空競馬実況の事を説明して、

そして納得し 次からは「又だ」と言い笑う。


そして人とは慣れるものである、 付き合いが長くなるとその内 おっさんに対してのツッコミが無くなっていく。


時折思い出したようにおっさんに、つっこむようになるのだ。



架空競馬実況のおっさんは、うろ覚えであるが確かラジオを自転車に装備していた 小型のラジオを吊り下げていたか、それともやや大き目のラジオを前カゴに入れていたかどうかは思い出せないが、

ラジオを装備していた。


気のせいか 小型もやや大き目めも、両方見たような気がする。


まぁともかく、そのラジオからは音が流れていた。


当然 競馬実況が流れていた訳ではない、

普通の音楽だ。


しかも音楽では無く 普通のラジオ番組の時もあった

そしてラジオが 点いている時と点いていない時がある。


気のせいか音楽が流れている時のおっさんの架空競馬実況は、若干熱がこもっていた気がする。


そしておっさんの架空競馬実況であるが、色んなバージョンがある。


とは言え 架空であろうが 元は競馬実況である。


色んなバージョンとは言うものの スタートからゴール迄である。


一番盛り上がる・・・ 違うな、おっさんの熱が入るのは最後のカーブを曲がり、直線に入ってからだ。


最後の直線に入ってからバージョンはたまに聞いた。


レアなのはゴールした瞬間だろう。


そして更にレアなのはスタートした瞬間である、

確か一回だけ聞いた。


しかし毎回思ったが あのおっさんの頭の中では、どんな大レースが繰り広げられていたのだろう?。


あのおっさんの架空競馬実況を最後に聞いたのは、


確か7~8年位前だ、今の家に引っ越ししてからは、

この辺りでは一切聞いて無いし、見てもいない。


最後に見たのは市街地の中心部にある某場外馬券売場

の近くだった。


その前は何時だったか分からないがこの家に引っ越しをする前だから10年以上前のはずだ。


7~8年前もそうだが、この家に引っ越してからも、

街中で二回位遭遇した気がする。


ちなみに街中と言っても、市街地の中心も中心の繁華街である。


当然あのおっさんは、

架空競馬実況をしていたのは、言う迄も無い。


今でもあのおっさんは居るだろうか?


もし生きていたらかなりの年のはずだ。


おっさんと言うよりも、おじいちゃんになってるはずである。


とは言え、例えおっさんからおじいちゃんになっていても、 いや、おじいちゃんではしっくりこない。


じじいと呼ぶのがしっくりくる



架空競馬実況のおっさんが じじいになっていても


奴は今でも実況をしているだろう。


頭の中ではとてつもない大レースが繰り広げられており、様々なドラマがあり競馬の歴史に残るような名勝負が今も、あの朗々たる美声で語られているに違いない。


架空競馬実況と言う名の迷勝負が・・・





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