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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

絵空の英雄 【剣士】

作者: 紙源




 少年は英雄に憧れている。

 絵本に描かれている英雄のように成りたくて、街一番の剣士に稽古をつけて貰っていた。

 全身全霊で剣に打ち込む少年にとって英雄は憧れから目標へ変わっていった。


 少年は英雄を探している。

 街一番の剣士に成長した少年は世界に出ていくことにした。

 自身が目標とした英雄にどれ程近づけたのか知りたかったからだ。

 街々を渡り歩き少年は英雄を探し続けた。

 

 とある王都を訪れた際、ある大会が開かれていた。

 国一番の兵士を決める大会だ。

 少年は路銀も少ない事もあり参加することにした。

 そして、優勝した。


 少年は目標を見失った。

 大会で戦った相手の中に、絵本のモデルになった剣士がいたのだ。

 その余りの弱さに落胆し失望した。

 少年はやっと絵本の英雄を見つけ、絶望した。


 少年は強すぎた。

 鍛え上げた剣技は、敵の致命へと吸い込まれるように入っていく。

 鍛え上げた体躯は、無尽蔵と見間違う剣戟を放つ。

 

 少年の心は脆過ぎた。

 只の憧憬で剣士として完成してしまった少年は、志が全くもって足りなかったのだ。

 もし、街一番の剣士が少年より強ければ、少年は憧憬を持ちながら剣の道を収めれたのだろう。

 しかし、少年は強すぎた。

 もし、絵本の英雄が絵空事の如く強ければ、少年は絶望せずに済んだのだろう。


 少年は恐怖している。

 自身の意味の無い強さが只々怖いのだ。

 少年は渇望している。

 自身の余りに常識から逸脱した剣技が何かを成す事を。

 

 月日は過ぎて行く。

 少年は勝ち続けた、自身の剣技に意味を見出すために。

 残虐非道な小鬼の王を一刀の元に切り伏せ、慈愛と悲壮を併せ持つ哀れな大鬼を切り伏せた。

 喧噪と娯楽に満ちた都を破壊し、神罰を下す神を切り落とした。


 剣を振り続けた。

 誰かの為に、自身の為に、敵の為に。

 刃を振り下ろし、振り上げ、薙ぎ、刺し込んだ。


 少年の体には数え切れない裂傷が刻まれている。

 その裂傷は他者を鑑みた末についた傷だ。

 少年の剣技を用いれば傷を負うことなく勝つことも出来るのだから。

 この傷達は少年にとって掛け替えのない誇りなのだ。

 

 少年は英雄に焦がれ、剣鬼となり、果てには英雄と成ったのだ。


 その少年、最高率の剣技を操る必殺の剣士である。

 その剣鬼、無尽蔵の剣戟を放つ事が出来る修羅である。

 その英雄、真に志を得た紛う事なき英雄である。


 彼の活躍は後に絵本となり語り継がれる。

 

 絵本のタイトル、【剣士の英雄】。

 

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