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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
神域の巫女
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残滓(月夜視点)

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

 占を行なった翌日。梅から行った連絡によって、早速桜桃軍から人が派遣されてきた。

 その面子はいつも通りだったけど。


「急な報告になってしまい申し訳ございません」

「いやいや、気にするな。お前さんの立場を考えれば、必要なことだ」


 昨日、突如として占をし、その結果を伝えた上で実体を持っていない穢れを祓うために町に出ると伝えたことで、美奈子さんはできる限りの戦力をこちらに回してくれたようだった。

 ……後半の宴に参加していたはずの人が普通に参加しているけども。

 面子は五郎さん、紗良ちゃん、新ちゃん、そして沙織の四人だったが、戦力的に見るならば、かなり過剰なものだと思う。ここに式も入るわけだし。

 私自身の戦闘能力は低いと言えるし、そもそもが補佐タイプと言えるため、あんまり前線には出られない。誰かの戦闘を援護したりするのは得意だけど。

 よって、毎度護衛役を派遣されているのだ。宴の時でさえ、隠れて居たぐらいです。


「それにしても、町中の実体のない穢れを祓うところ、今まで私は見たことがないんだけど、どんな感じなの?」

「傍から見ればただ歩いているだけですね」


 初めて見る沙織が聞いてくるので、素直に答えたんだけど、これだけでは意味がわからなかったらしく、首を傾げて不思議がられた。

 こればかりは実際に見ないとわからないと思うので、説明はそれ以上せずに、紗良ちゃん達と一緒に町を歩き始めた。

 隣に沙織が、後ろに五郎さん達という感じで歩き始めたんだけど、私ほど見えるわけではない沙織はそれでも私が歩くごとに何かが変わっているのは感じ取れるらしく、困惑した様子で周囲を見回していた。


「ここら辺はよく通るので、そこまでですが、基本的に私が通るだけで穢れの残滓などが祓われるのですよ。それでも無理なものは言霊を使いますが」

「はへぇ……何か明るくなったように感じるから、本当に溜まってたんだ」

「こればかりは見え過ぎる者だけにしかわかりませんからね……。気づけるのも、よく神域に来るからでしょう。他の人はもしかしたら気づかない可能性もありますね」

「やのに、溜まり過ぎると穢れが力を増す原因になるんやから、結構メンドイんよ」

「こればかりは、本職が居てくれぬと難しい部分じゃな」


 私の説明に、紗良ちゃんと新ちゃんもそれぞれに意見を言ってきた。長いこと穢れと戦ってきたからこそ、彼らはそういったことも強く感じ取ることができるのだろう。

 まあ、桜桃軍に所属する人達は、あの本部の清浄な空気との差で慣れているからわかりそうだけど。

 そんな風に時々言霊を使いつつも、穢れの残滓とも言うべきものを祓い続けながら歩いていった。

 結構早い時間から始めたというのに、終わって神社のある山に戻ってきたのは昼を少し過ぎたかぐらいで、思ったよりも時間がかかってさすがに少しだけ疲れを滲ませた息を吐き出した。

 場合によっては穢れも襲撃してくる可能性があるので、余計に気を緩ませられなかったというのもある。それは沙織達も同じではあるけど、私よりもずっと穢れと接する機会が多い彼らはその緊張感も慣れたものであるため、そこまで疲れた様子はなかった。

 だからって、戦闘を積極的にするわけにもいかないのだけども。


「いっそ、町中を一気に清浄にできる術でも作りましょうか……」

「主ならばできるだろうが、その場合でも事前連絡は必要だと思うぞ」

「やはりですか……。一応、実体のある穢れならば遠くからでも祓えるのですがねぇ……」


 だが、実体のない穢れともなってくると、やはりどうしても加減が難しくなってしまう。結果としてこうして実際に町中を歩いて祓う以外の方法がなくなってしまうのだ。

 毎度護衛役を派遣してもらうのも申し訳ないので、術を開発してどうにしかしたいところである。

 ただ私の発言に沙織は顔を引き攣らせて私を見てきた。


「え゛、月夜って実体のある穢れなら遠くからでも祓えるの?」

「できますよ? 神社に居ても、町中に穢れが現れれば寝ていても気づいて起きてしまう程度には敏感ですから、気配を掴むのも早いのですよ」


 前々からそれによって祓っていましたよ、と続けると、沙織は一切気づいていなかったらしく、絶句していた。紗良ちゃん達はさすがに気づいていたようで驚きを見せることはなかったが。

 ただし、微妙に呆れたような感じの眼差しは向けられた。


「あれほどの威力で穢れを祓うなど、『騰蛇』以外で居るならば、お主ぐらいじゃ。じゃから、チートだと言われるのじゃぞ」

「普通に考えても、気配だけであそこまで的確な攻撃なんてできへんもんやしなぁ……」

「まったくだ」

「あはは……」


 それぞれがそれぞれの感想を言ってくることに対し、困ったように笑った私の姿を見ながら、沙織は先ほどよりも顔を引き攣らせ、若干距離を置きながら口を開いた。


「本当に、月夜って規格外だわ」

「私はできることをしているだけですよ」

「それが規格外だって言ってるのよ! 普通の人は本拠地から動かずに穢れを祓うなんてできないから! そこまでの霊力も持ってないし、技術もないの!」

「基本的に式や柊などが出ていますから、毎回そうというわけではありませんよ」

「できること自体がおかしいって言ってるのよぉ!!」


 周囲への迷惑を一切考えない大声で訴えた沙織に、私は苦笑で返し、紗良ちゃん達は何を言ったて無駄だとばかりに肩を竦めるだけだった。

 その反応こそが、十二天将の皆様の総意なのだろう。海斗さんあたりは違った感じだろうけど。

 凛お姉様達も気づいた上で、呆れたように言っていたぐらいだったから、十二天将の中では最年少の海斗さんならば沙織と同じ反応をしそうではある。

 もしかしたら、普段から規格外の人達と接しているので、慣れているかもしれないけど。

 沙織は……十二天将の皆様と接する機会が出てきたとはいえ、まだまだ普通の所属者達と同じ感覚は残っているはず。そう考えると確かに私の行動はかなり突っ込み所がある。

 だからって変えるつもりもないけど。

 それが普通ですし。それに沙織も普通じゃないしね。本人に言ったら絶対に全力で否定するだろうけど、スイーツに対する反応は絶対に一般的ではない。

 それを知らない人からは常識人枠と認識されているらしいが。その実態がスイーツを渡されれば何も言わなくなる人だとは思うまい。

 超人は変人しか集まらないのか、と言いたくなるほどに、それぞれが特殊な面を持っていたりするので、常識人を求めるのは諦めた方が良いと思う。海斗さんも結構変な部分があるしさ。

 でなければ研究馬鹿とも言うべき春樹お兄様と付き合えないだろう。誰だってあの熱量で研究について語られたらついていけない上に、引く。

 そこを引かずに普通に受け入れて聞いているのだから、大分とおかしい。

 海斗さんの場合、ロボットが動いて戦闘がする感じのアニメとか大好きだしな……。好きすぎて、いつか戦闘に使うのではないか、と危惧されているほどに。

 現状、穢れとの戦闘に機械は効果がないことがわかっているので、非常に使い勝手が悪そうだけど……海斗さんはやりそうだ。誰も否定しなかったところから考えてもやりそう。

 是非とも止めていただきたいところではある。霊力で動かすにしてもそれだけで消費量は格段に増えるだろうし、攻撃なんて更に消費が増える要素でしかないので、デメリットだらけだ。

 だから、機械で穢れを祓うのは諦めている研究者が殆どだしね……。ほぼ対抗できるのが霊力だけという状態です。


「とりあえず、これで作業が終わったのだろう? 早く戻ると良い。あまり長いこと離れていられないのだろう?」

「あ、そうですね。それでは」


 五郎さんに指摘されて、私は四人に頭を下げて今日同行してくれたことのお礼を伝えた後、式と一緒に山の中に入ったのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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