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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
神域の巫女
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宴後(月夜視点)

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

 宴の前半が終わり、私は同行を申し出てくれた五郎さん達と一緒に神社へと戻っていた。

『信仰会』の者達に誘拐されてからというもの、私の生活は平和そのものになったが、それでもまだ完全に組織が潰れたわけではないので、同行してもらえるのはありがたい。

 とはいえ、特に何もなく、神社に着いたけれど。


「姫様」

「楓、わざわざありがとう」


 神社の敷地内に入れば、留守番をしてくれていた一人である楓が出迎えてくれた。

 お礼を言えば、気にするなとばかりに首を横に振られたけど。

 道中は特に話すこともなく、お互いに少しだけ近況を話すだけでそれ以上の会話はなかったこともあって、割と静かな帰宅になってしまったが、穢れが出た際には即座に対処できるようにはしていたので問題はないし、そもそも誰もが会話が続かなくても気まずく思わないタイプだったので良かった。

 あそこに沙織が居たならまだ話は違ったんだろうけど、私の住まいが神楽家から神社に移ったことで、住む場所が離れてしまい、一緒に帰るということはなくなった。

 それでも毎日の登校の時には一緒に行くために来てくれるし、休みの日も来ているので、そこまで寂しいとは思ったことはないけれど。

 というか、寧ろ来すぎなぐらいだ。夜は普通に穢れ狩りとして動いているというのだから、体は大丈夫なのかと心配になってくる。

 穢れの出現率が減ったとはいえ、完全に消えているわけではないから、休みの日以外は毎日穢れを狩っているというのだから、相当な疲労が蓄積しているはずなんだけどな……。

 などと色々と考えつつもここまで同行してくれた五郎さん達にお礼を言って、見送り、私と式は室内に入った。

 すぐさま楓と梅が服を脱がせてくれて、湯浴みを済ませ、寝巻き用の和服に着替えてから中央に位置する桜の大木が植えられている場所に行った。

 本当だったら、帰ってきてすぐに行くべきなんだろうけど、穢れを神々の所に持ち込むことは許されないので、いつも湯浴みの方が先に来る。


「待っている」

「うん、お願いします」


 式が一言告げて、私以外の者でもギリギリ入ることができる所で止まった。

 そこから更に先に進み、神々に帰宅の挨拶をした上で、いつも通り夜の祈りをする。

 傍から見れば、ただ手を合わせて目を瞑っているだけにしか見えないだろうけど、私にはしっかりと神々の声が聞こえているので、これが他の人には聞こえないと知った時は驚いたものだ。

 生まれて、これを任されるようになる前から普通のことだったしねぇ……。

 あ、そうだ。今日は寝る前に占をしよう。何もないとは思いたいけれど、何となくやっておいた方が良さそうな気がする。

 神々も全てを知っているわけではない。神々にとっての些細と、人間にとっての些細が違うので、そこは仕方がないと思う。神々の言う、些細は人間にとっては大事だったりすること、多いし。

 夜の祈りを終わらせ、下がる。


「主、どこに?」

「占をしに行こうと思って」

「なるほど」


 いつも通り、そのまま寝るのかと思えば、違う場所へと向かい始めた私に式が聞いてきたけれど、返答で納得できたらしく、それ以上は聞いてこなかった。

 梅と楓も控えていたけど、私の返答を聞いてすぐさま私の前に立って歩き始めた。

 神社内で危険なんて本当に滅多なことでもない限りはないと思うんだけど……どうしてか、彼らは私の護衛を神社内であっても絶対に怠らない。

 それで彼らが安心するなら構わないので、何も言うつもりはないけども、寝ている間も護衛を継続していることを知っているため、何とも言えない気持ちになってしまうのだ。


 そうこうしている内に盤が置かれている部屋に辿り着き、灯りのなかった室内に私が足を踏み入れると同時に明るくなった。

 相変わらず、灯りとなりそうないここで、よくここまで明るくなるものだ。それが精霊によるものだと知っているだけに余計に。


「ありがとう、楓」

「この程度、お安い御用にございます、我が君」


 それを行なった人物にお礼を言えば、そう返された。

 彼女の特性は、本来はこんなことでは使わないと思うんだけど、本人がそれで満足しているので、良いのか?

 楓は、生まれつき精霊が見え、そして彼らと対話ができる。私もできるけど、基本的に神々との対話が主となる私とは少々方向性が違うので、対話はできても、力を与えることで何かを行なってもらう、ということは難しい。というか、向こうが拒否する。

 この地を守ることに使われる力だからこそ、精霊達からしてみれば、恐れ多いという感じだそうだ。私も向こうが嫌がっているのに、行なう気はなく、精霊と契約を結ぶということもしていない。

 しかし、楓の場合は、私とは違うので、精霊達と契約を結び、彼らに力を与えることで、色々と行なってもらっている。

 だから灯りのないこの神社内で、問題なく過ごせるんだけども。


「相変わらず、楓の力は素晴らしいですわね。私には精霊が見えませんけども、姫様と楓が見ている世界が時折見たくなりますわ」

「慣れないとかなり辛いと思いますよ。我が君はそのお力が原因でそれほど近寄りませんけども、私は彼らが傍に居続けますもの」

「私は見え過ぎますからね……。同じく慣れるのはかなり難しいかもしれませんよ?」


 純粋に羨ましいと言った梅に、揃ってそう返せば、向こうもそれはわかっていたようで、残念そうな顔をしながらも首を横に振った。

 まあ、彼女が羨ましがる理由もわからなくはないけども、こればかりは、どうしようもないので、諦めてもらうしかない。突如見えるようになった方がかなり負担がかかるしさ。

 確かに、私や楓の見え方ができるようにすることはできるけど、それをしてしまうと、体が『見えていた』という事実に引っ張られるように見えるようにしていこうとするので、しない方が良い。

 そうでなくとも、彼女はかなり特殊な見え方をしているのだから。


「私も穢れの姿は見えたら良いのですのに……」

「梅はそういったものが見えない代わりに、術が見えるではありませんか。私としては、そちらの方が羨ましいですよ?」

「術の回路などが見えても、私には無理矢理破壊すること以外は何もできませんもの。力もありませんから、穢れが見えるようになっても、対抗手段がありませんし」


 溜息を吐いて、残念そうに言う梅だけど、それも十分過ぎるほどに一般の人からしたら、凄いことだと思うんだよね……。

 普通は、術は発動すれば炎や水などでしか見えないけれど、梅には確かに回路として見えている。よって、的確に術の破壊を行なうことができるんだけども。

 梅も楓もどちらもかなり特殊な類なので、色々とあってここに居る。本人達はそのことを気にしていないみたいだけど、私としては心配になってしまうんだよね。

 そう思いつつも盤の前に座れば、先ほどまで話していた二人が黙った。

 カラカラと盤を動かしていく。何度も行なわれたことであるためか、結果はすぐに出てきた。

 その内容は特別緊急性のあるものではなく、けれども私にとっては無視できないことであるため、少しだけ息を吐いた。

 これは明日も外に出ることになりそうだ、と思ってしまって。

 別に外出が嫌いなわけではないけども、そう何度も外出するのも立場を思えば宜しいことでもない。そこらへんの塩梅が難しいんだよね。


「どうやら町の方の穢れが溜まっているようです。明日にでも全体を見る必要がありそうですね」

「でしたら、桜桃軍の方にもお伝えしておきますわ。明日は朝がお早くなりそうですので、姫様はお休みくださいませ」

「そうします。後はお願いしても?」

「お任せくださいませ。楓、後は宜しくって?」

「良いですよ。根回し、お願いします」


 お互いに必要なことを話し終えて、私と楓は寝るために、梅は桜桃軍の方に明日の私の行動を伝えるために、それぞれ別れた。

 明日も沙織達に会うことになりそうだな、と思いつつも、私は先に準備されていた布団に入り、眠りについたのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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