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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
神域の巫女
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宴開始(月夜視点)

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

 美奈子さんの「宴の始まりよぉ~」という言葉で始まった宴は私が想像していたよりも無礼講感が強かった。

 勿論、階級によるあれそれはあるみたいだけど、それは十二天将の皆様と一般所属者との壁しかなく、中には普通に会話に入っているという所もあるので、階級をそれほど感じずに会話が進んでいるように私は感じた。

 私も以前から付き合いのあった人達がそれぞれに挨拶に来ていたけれど、部外者であることと、初めての参加ということもあり、そこまで長時間会話が成されることなく、楽しむようにだけ言われて終わっているので、殆どの会話の相手が沙織だ。

 他は海斗さんや始まるまでには来た凛お姉様達だけで、一般所属者さん達は一言二言ぐらいで終わって、彼らも別の場所へと移動している。

 無礼講とはいえ、私は現代では稀少どころの話ではない神職に就いている人物なので、対応が難しいというのもあると思う。

 そうでなくとも神々と非常に近い距離感で居るのだ。そんな存在が身近ではない彼らからしてみれば対応に困って当然のこと。私の方も何かを言うことはない。

 普段は部外者として滅多なことでは本部に来ないしねぇ……。


「月夜よ。楽しんでおるか?」

「紗良ちゃん。はい、楽しんでいますよ」


 まだ酒が入っていないはずなのに、すでに酒でも入っているのだろうかと聞きたくなるようなコップの持ち方をして聞いてきた紗良ちゃんに答えれば、満足そうに何度も頷いていた。

 私の参加を提案したのは紗良ちゃんや新ちゃんだという話はすでに聞いていたので、提案した者として気になったのだろう。奔放そうな言動とは裏腹にそういう細かいところまで気にする人だからね。

 そういう意味では新ちゃんもそうなので、自由人であっても責任ある立場に居るという事実は大きいのではないかと感じている。

 ただまあ、何となく年齢が上の方になるにつれて飄々として掴みどころがない感じがするけど。年の功がそうさせるのか、割と紗良ちゃんと五郎さんはそんな感じだ。

 本人達はまだ若いとか言っているけど。確かに見た目は十代前半と四十代にギリギリ入っているかな? という感じだけども。

 見た目がそうなだけで、肉体的に見るならば二十代らしい。本当にどういう構造をしているのだろうか。美奈子さん達でさえ謎らしいので、永遠に解明されることはないのかもしれない。

 年齢的には六十代である二人は誰よりも新しいことを取り入れることに積極的なので、先代十二天将とは折り合いがそれほど良くなかった、なんて話もあるほどらしい。

 新ちゃん情報なので、どこまで正しいのかはわからないけども、美奈子さん達も否定も肯定もしなかったので、新ちゃんの言葉を信じるべきか。

 そもそもが先代までまともに関係性が構築される機会がなかったとのことなので、紗良ちゃんと五郎さんに聞いても何も返ってこない気がする。

 何せ、二人が初めて十二天将に入ったの二代前らしいからね……。そこから一度も誰かに譲っていないのだから相当だ。


「ふふふ、ならば良い。楽しめぬ宴など宴ではないからのぅ」

「なるほど」

「とはいえ、本当の無礼講になる後半には参加させられんがの。酒が入ると途端に暴走する者が多い上に、勧められたなどあっては二度と開けぬことになってしまう」


 紗良ちゃんの言葉に納得を返したものの、続いた言葉には苦笑で返しておく。

 確かに未成年に酒を勧めたなど、犯罪だから許されることではない。ただまあ、酒に呑まれた者にそんな常識が通用するかどうかはわからない。

 普段はある理性の箍が外れているようなものなので、常識とか色々と考えずに勧めて、無理矢理飲ませる者が出ても不思議はないのだ。

 そうなれば宴自体が禁止になる可能性が非常に高い。うん、そりゃ前半と後半を分けて参加させないという対応を取るわな。実際に居たのかは聞かないでおこう。


「ああ、そうじゃった。お主が持って来た鯛。美味じゃった。酒の方も上物じゃから、きっと美味いじゃろうな」

「そうなのですか? 生憎と私にはどのぐらいのものなのかわからないのですが……」

「まあ、そうじゃろうな。とはいえ、神々に捧げておった物じゃ。お主の配下達が生半可な物を用意するとは思えん」

「それもそうですね」


 鯛は何となくわかっても、さすがにお酒のあれそれはわからない。正直にそう言えば、頷きつつも配下達のことを指摘したので私も頷いた。

 彼らが神々に対しどのように感じているのかはわからないまでも、私に恥を掻かせないためにも相応しい物を選ぶと断言できる。それぐらいには彼らの忠誠心は重いのだ。

 何せ、揃って私が最優先であり、神々が関わって来てもそれは変わらないと言い切る者達だ。あの感じを幼少期から見続けていればさすがに疑えない。

 最初はお父様とお母様への恩義とかからだと思ってたのにね……。

 十何年しか一緒に過ごしていないはずなのに、どうしてこうなったのか。未だに謎である。


「それにしても……参加するからって、鯛と酒を持ってくる月夜も凄いわよね。確かに最終的に処分されるよりはいいんだろうけど」

「神々からの許可も得ていますから、大丈夫ですよ。そもそも、元は場を清めるために酒を多用してきたというのが最もな理由ですので、今回のも別に本来の用途から外れているとは言い切れませんよ」

「それもそうか。確かに穢れに長時間接することになる私達は穢れている可能性が高いものねぇ」

「高いどころか、十中八九そうだと思いますよ。とはいえ、祓う力がありますので、普段は体を洗うことが禊になって多少なりとも緩和されていると思いますが」


 沙織にそう返せば、納得顔で何度も頷いていた。

 簡易的な禊になっているとはいえ、完璧ではないことは確実なので、今回で溜め込んでいた穢れが一気に祓われるだろう。だから未成年でも食べて大丈夫な鯛を持って来たわけだけど。

 もしかしたら一気に祓われたことで逆に気分が悪くなる可能性もあったけど……さすがは力を有する者達と言うべきなのか、今の所、そんな人はいない。

 記憶を取り戻してから定期的に本部を祓っているのも理由の一つかもしれない。一応、本部も聖域に該当する場所なので、ある程度の清らかさは求められるので。

 そんな本部に出入りしているのだから、そりゃあ、祓われた後の清涼過ぎる状況にも慣れる。結果として身の内に入れても大丈夫なぐらいにはなっているようなので、良かったと言うべきだ。


「私達にもできる禊ってあるの?」

「清めた塩を湯を張った湯船に入れて逆上せない程度に浸かることでいつも以上に身を清めることはできますよ。気になるのでしたら渡しましょうか?」


 常に持っている清めた塩を出せば、沙織は少し気になっていたようで、欲しがった。

 なので分けられているのを渡して色々と方法を伝える。簡易的な禊であることに変わりはないので、完全に祓うことはできないという注意も言っておいたけど。

 本当の禊でお湯はまず使われないしね……。しかも一時間以上浸かり続けることになるし。そういうのを考えると簡易的なものでも良いかな、という気持ちになる。

 本職が何を言っているんだ、という感じではあるかもしれないけどさ。

 注意事項を色々と言ったところで、前半の宴が終了し、私と沙織は同時に立ち上がった。

 他にも五郎さんや三吾さんとかも立ち上がっている。それぞれ研究やら明日も道場があるといった理由による退席みたいだけど。


「時間も時間だ。送ろう」

「式が居ますよ?」

「それでも戦力は多い方が良いだろう?」


 襲撃されたことがあるので、そう言った五郎さん達の申し出に私は断ることができず、本部で沙織と別れて、私は式に五郎さん達を伴って本部から出たのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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