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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
神域の巫女
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宴会場到着(月夜視点)

暇潰しにでも読んでいただけると嬉しいです。

 沙織と時間を潰しつつ、過ごしているとあっという間に時間になり、私と沙織は宴会場に向かった。

 向かった先ではすでに結構な人数が集まっており、各々が好きに座っている感じだった。


「どこに座るのが正しいのでしょうか……?」

「わかんない。私達も適当に座る?」


 揃って、座る場所がわからないため、困っていると、後ろから声をかけられた。


「なんや、月夜ちゃんと沙織ちゃんやないか。そないな所で固まってどないしたん?」

「あ、新ちゃん」

「座る場所がわからなくって……」


 後ろから声をかけてきた新ちゃんに事情を話せば、居た理由がわかったようで、頷き、一つの場所を指差した。

 そこは上座周辺のぽっかりと空いている場所で、私は首を傾げたけど、沙織は意味がわかったようで顔を引き攣らせた。


「月夜ちゃんと沙織ちゃんはあそこ。ほれ、行くで~」

「? わかりました」

「ちょ、月夜。駄目駄目。あそこは十二天将の人達が座ってる場所!」


 普通の感じで案内しようとする新ちゃんに付いて行こうとしたところで、沙織から思わぬ言葉が飛び出し、歩みが止まった。

 しかし、新ちゃんは揃って止まったことが不思議らしく、こちらを首を傾げて見てきた。

 こっちはそれどころじゃないけど。


「……本当に?」

「本当に」

「……本当に私達が座る場所として合っているのですか」


 一度確認を取った後に、新ちゃんに聞くが、新ちゃんははっきりと頷いてくるだけだった。

 どうやら、本当に今回の席はあそこらしい。会話が聞こえている人達も指差して『早く行ってやってくれ!』とばかりに拝んでお願いしてきている。

 上座周辺は明らかに特等席のような感じでわかりやすく他と違うので、最初から除外していた場所なんだけど……私が思った以上に特別な場所だったようだ。

 沙織と揃って顔を見合わせ、これは行く以外の選択肢はないと判断した私達は大人しく新ちゃんの後ろを付いて歩き、上座に行った。

 おかしいな……私は一応、扱い的には部外者になるんだけど……。沙織も中将だしね……。

 揃っておかしい場所に座っている私達に誰も突っ込む様子も見せないし、寧ろ、それが普通だとばかりだ。どうしてこうなった。

 上座周辺にある席の一つに座りつつ、困った顔をした私と沙織に、新しい声がかかった。


「二人とも大丈夫か?」

「海斗さん」

「俺も『玄武』だけど、毎回、ここに座るのは緊張するから、二人はどうかと思ったんだけど……俺と同じか」

「あはは……」

「まあ……」


 揃って曖昧に笑って明言を避けた私達に海斗さんも気持ちはわかるのか、それ以上は何も言ってこなかった。ただし、向かいに座ってくれたので、気を使ってくれているが。

 神楽家は十二天将が三人もいるので、個々に来るらしい。私は初めての参加なので、知らなかったけど、沙織は一度だけ参加したことがあるとのこと。

 私の護衛役を担っていたので、参加を見送り続けていたらしい。参加したのは初めて所属した年だけらしい。そりゃ、どこに座るか困るよね。ご家族で座ったそうだし。

 そうこうしている内に朱里お姉様と春樹お兄様も来て、上座の近くに座った。

 上座周辺の幾つかは明らかに他とは違う感じになっているんだけど、私がその席に座り、沙織はその横にある他と同じ席に座っている状態だったんだけど、春樹お兄様と朱里お姉様もそうだった。

 春樹お兄様が海斗さんの隣に座り、朱里お姉様は春樹お兄様の隣だ。


「元気そうだな、月夜」

「はい。春樹お兄様と朱里お姉様もお元気そうで」

「俺達は研究と部活の助っ人でなかなか行けてなかったしな……」

「月夜の巫女服、着慣れてる感じがあって良いね!」

「本職なんだから、着慣れてて当然だろ……」


 さすがに宴だからなのか、あまり大きな声では突っ込まなかった春樹お兄様に、朱里お姉様はキョトンとした顔で首を傾げていた。

 普通に褒めただけなのに、どうして突っ込まれたのか、わからなかったらしい。私も朱里お姉様は普通に褒めただけであることはわかっていたので、微笑むだけで何も言わなかったけど。

 自分が言った言葉の意味を理解していない朱里お姉様に、春樹お兄様が溜息を吐きながら教えた。


「さっきの言い方だと、人によっちゃ、神社に本当に居たのか疑ってたという風に受け取るぞ」

「え!? そんなつもりで言ったわけじゃないよ!?」

「悪意があろうが、なかろうか、言っていい言葉ってものがあるだろ。相手が月夜だったから、普通に褒め言葉として受け取ってくれただけだ。他の奴が聞いたら侮辱にしか聞こえないぞ」

「うう~……。ご、ごめんね? 月夜」

「気にしていませんから……」


 本気で謝ってくる朱里お姉様に苦笑でそう返すも、春樹お兄様は首を横に振った。


「月夜は甘い。こういう時は本気で叱らないとこいつは覚えないぞ」

「そう言われましても……。私が記憶喪失だった頃が長いのですから、想像できずとも不思議はありませんよ?」

「それでも言っていいことと悪いことがあるだろ。本職に向かって、あの言い草はヤバ過ぎる」

「それは……まあ……」


 さすがにフォローできず、苦笑いを浮かべた私に、春樹お兄様も無言で朱里お姉様の頭を叩いた。その勢いがいつものようではなく、軽いものではあったけど。

 一応、朱里お姉様がそのように言った理由はわかっている。普段の私は祈りを捧げる以外では動かないこともあって、平安の女性貴族のような装いをしているから、あまり巫女服を着ている感覚に朱里お姉様はならなかったのだろう。

 あれが正装なので、今回はかなり略式の装いになった感じだけど、堅苦しい儀式とかではないので、他の人達も普段通りの装いと事前に聞いていたから、これで良かったと思う。

 神楽家や本部で過ごしていた時の服は残っているけど、記憶を取り戻したことで、着慣れた服装で行動することが殆どになってしまっているのが現状だ。

 まあ、今着ている服装も正しい巫女服かと聞かれると否を返せるけど。


「そういえば……俺はあまり神社に行っていないんだが、いつもはどんな生活をしているんだ?」


 話題を変えるためか、海斗さんが会話に入ってきて、聞いてきたので、首を傾げる。

 この質問だけでは、いまいちどう答えれば良いのかがわからなかったからだ。

 それは向こうもわかったようで、より詳細に質問してくれたけど。


「ああ、平日は学校があるから、生活が休日と平日で変わるのか。できればどっちも答えてくれるとありがたい」

「そういう意味でしたか……。平日は学校から帰ってきてすぐに湯浴みなどをした後に寝る時間になるまで祈りを捧げています。休日は基本は祈りを捧げますが、桜桃軍に渡すお札などの作成も行ないますので、それらを作成し終わってからお札なども捧げて神々に祈ります」


 詳細に答えれば、一日の過ごし方がわかったようで、海斗さんは納得したように何度も頷くと、また別の疑問が湧いて来たようで、聞いてきた。


「じゃあ、殆ど外で遊んでないのか?」

「いえ? 沙織と日曜は遊びに行っていますよ。神々もずっと神社に居続けるのはあまりにも勿体ないという風に考えていらっしゃいますし、そもそも、外を歩くことも仕事と言えば仕事ですから……」

「ああ、気が悪くなっている場所を知るためか」

「はい」


 桜桃軍の人達には何となくでしかわからない上に、どうすることもできない、気が悪くなっている場所を、私は何とかできるので、それを改善するのが役目の一つです。

 これを知っているから、海斗さんも納得の表情で頷いている。

 そんな風に話している間に、殆どの者達が集まり、座っていたけれどね。

 もうそろそろ宴が始まる、ということで、私と沙織は美奈子さんが出てくる場所の方を見たのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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