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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
68/82

待機(式視点)

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

  ――式視点――


 主の記憶にこちらが術を破壊するごとに干渉している、という報告を柊から受け、伝えたことで私達は行動を止めていた。

 あちらから何とかしてこちらに位置を伝える以外では方法がなくなってしまったのだ。

 生憎と私は戦闘関連の知識しか有していない。こういう時に役立たずというのは非常に悔しいのだが……分けた理由が主にあるのならば、私は主の判断を支持する。


「こないなってくると、ほんまにできることが限られてくるわ」

「仕方がないわぁ。もしも月夜お嬢さんが暴走すれば、私達も困るものぉ」


 新ちゃんの発言に即座に美奈子が返すが、そこに焦りはない。主に何かあれば私が即座に伝えられるからだがな。

 しかし、主の記憶を封じる術に少しでも干渉してしまった影響は出ているようで、主は少しずつ記憶を取り戻してきているらしい。

 現状はまだ暴走状態に陥るほどのことは思い出していないが……万が一でも暴走すれば大勢の死傷者が出るだろうな。

 正直に言えば、主以外はどうでもいいんだが、主が気にするのはわかっているので、できることならば死傷者は出ないことを願っている。

 柊の方も主に命じられて、早急に動き出したようだが……主の影を使った捜査の方が早かったようだ。

 あの男はそういったことが得意だったと記憶しているんだがな。さすが主と言ったところだろうか。


「主が影で干渉し、術の要を見つけたようだ。さすがに破壊なんぞすれば大事になるので、僅かな綻びから式を放ち、私達を案内できないか検討しているとのころだ」

「思ったよりも早かったわね」

「結界に干渉していることはどうやら、気付かれていないようだからな。大方、張った張本人が寝ているせいで気付けないのだろう。まともに対抗できる存在は居ないらしいからな」

「……捨て駒、というわけね」


 即座にどういうことなのか悟ったらしい凜の言葉に頷く。おそらくはそうだろう、と私も主も柊も考えていたからな。

 あれほどに大暴れしていた紗良ちゃんでさえ、その可能性には眉を寄せている。

 まあ、それほどあっさりと捨てることができるほどに人が居たのだとしても、許せることではないからな。


「主が言うには、主の指摘で正気に戻っているようだからな。術で洗脳していたのはほぼ確実だ」

「となると、その場所には幹部らしき者はいないのかな?」

「いや、二人ほど幹部が居るそうだ。とはいえ、幹部の中でも末端の者達だそうだが」


 柊と主の報告を伝えれば、全員が難しい顔をした。洗脳をされているならば、本当に術を解く方法がわからないのが困るからな。

 あと、末端とはいえ幹部が二人も居ると聞いて、一部が凶悪な笑みを浮かべたが。

 捨て駒になるほど中枢にいないのだとしても、多少は情報を握っているだろうから、情報を吐かせることを今から狙っているのだろう。

 美奈子でさえ普段の表情はどこに行ったと聞きたいと思うほど凶悪な笑みを浮かべている。主の前では完璧に被っている猫が逃げ出しているようだ。

 とは言っても、私も主を誘拐したという事実に怒りを覚えていたので、ドン引きなどはしないが。大した情報を握っていなくとも、構わないしな。


「……主が式を放ったそうだ。どれほどの時間がかかるかわからないが、これで確実に着くことができるだろうな。それまで力を温存しておくことを勧める」

「言われずともそうしておるわい」


 ……一番暴れていたお前が言うのか、という言葉は何とか飲み込めた。誰だって、こいつにだけは言われたくないと思うんだがな……。

 何せ、ずっと暴れていてからな。力の温存と言われても全員が首を傾げたかったと思うぞ。

 見ろ、春樹と沙織が揃って顔を逸らして何も言うまいとばかりに黙り込んでいるじゃないか。ああ、里見や美香も同じ行動を取っているな。

 逆に、桜桃軍の中で最強である『騰蛇』の地位に居る五郎は紗良ちゃんの発言に何も疑問に感じてないようで、寧ろ納得しているようだった。


「ああ、だから五割も出していなかったのか。あまりにも力を出さなさ過ぎて何を考えているのやらと思っていたんだがな」

「……あれで五割じゃないのか」

「ああ。あれの本気を見る機会なんぞ、殆どおらんからわからんかったか。そもそも、こやつは興が乗らぬ限りは本気を出そうとはせんからな……」


 呆れたように言う五郎だが、それを聞いていた全員が顔を引き攣らせているんだが。平然としているのは当人である紗良ちゃんだけだ。


「いきなり本気を出す奴がどこにおるのじゃ? そんなことを言うたら、お主とて妾に任せるばかりで、自分では動こうとはせんではなかったか。桜桃軍最強が何の動きも見せん方が恐ろしいじゃろうに」

「私が動く必要がどこにある? 結界を壊すのに、私の方が向いているのはわかっているのだろう?」

「じゃから、文句は言わんかったじゃろう。妾とて理由がなければ動きもせん、お主に苦言を呈しておったわ」


 お互いに普通のことのように話しているが、普通ではない。さすが、最強と二番手と言ったところだろうか。是非とも本気を出さずに済んでもらうと有難いんだが……無理か。

 できれば主のトラウマとなるようなことは避けてほしいのだがな。他のトラウマになろうが、私は知ったことではないが、主だけは話が別だ。


「主の前ではその『本気』とやらを見せんでくれ。トラウマになってもらっては困る」

「相変わらず、主至上主義じゃのぅ」

「それが私だからな。私を生み出した存在を大事にするのは当然のことだ」


 勿論だから忠誠心もある。主のためならば、私は消えても問題ないほどに。……まあ、心優しく情の深い主は私を消すことに躊躇いを見せるだろうが。

 庇ったとしても、同じように悲しんでくれることだろう。まさか、そこまで式に対して想うことができる要素が私にそこまでの決断をさせているとは予想もしていないはずだ。

 捨て駒にできる冷酷さも時には必要だと私も思うが、主のような一人一人を大事にすることも時として必要だ。

 容易く捨て駒にしていたのでは、いつか絶対にその冷酷さが自身に跳ね返ってくる。その冷酷さがあるからこそ、信用されない場合とて多々出てくることとてあるだろう。

 そうなった時、たった一人で全てを解決できるほどの力があるならば構わないが、そうではないのならば、下の者を大切にする心も重要になってくる。

 だからと言って、主が自力で対処できないとは思っていないが。今の主にその対抗できる手段となる知識や技術がないだけで、記憶を失う前の主はきちんとあったと柊から聞いている。

 寧ろ、配下を守るために己の身を簡単に投げ出そうとするほどだったそうだ。それはそれで主と忠誠を誓った者達の肝が冷えるので、止めていただきたいものだな。

 柊も何度も主のそういう姿を見てきたことで、主が前線に出ることを嫌っている。聞いている限り、他の配下達も同じ考えをしていると思われる。

 今は一切姿を見せない他の配下達。主の声がなければ絶対に現れないと、あの柊でさえ言うほどの者達がまだ居ると思うと、非常に怖いな。

 主の危険には絶対に駆けつけるそうなので、今はまだ危険ではない、ということなのだろう。誘拐された際に出てこいとは思うが。

 そうは思っても、私や柊の声では絶対に反応しないからな……主の声が唯一とは何とも使い勝手の悪い存在なのやら。


「……何もないと良いのだがな」


 思わず漏れた声に、紗良ちゃんと五郎以外の全員が即座に頷いたのは言うまでもない。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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