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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
64/82

密かな協力者

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。


2000PVを達成しました。ありがとうございます。

 誘拐されて、目覚めた翌日、すぐに行動に移されるかと思ったが、意外にも何もされずに過ごせている。

 レティや式達が来る気配もないので、ここは相当隠された場所のようだ。誘拐されてから実に四日ほどが経過しているのに、『信仰会』の人達が慌てた様子がない。

 位置を特定できる刻印を刻まれているはずなのに、それでも辿り着けないということは解除されているのだろうか?

 現状でわかることを考えていると、静かな室内にノックが響いた。

 私が目覚めてから、この部屋に来る人は揃ってこうして私からの許可を貰ってから入ってくる。本気で自分を神聖視でもしているようで、かなり居心地が悪い。

 そう思いながらも、返事をしない。お互いに仲間意識なんてないし、寧ろこっちは敵としか思えないのだから、わざわざ許可を出そうなんて思わない。

 食事以外ではまず許可を出さなければ誰も入ってこないのだが、その時だけは違った。


「……起きていらっしゃるのでしたら、返事をしてください、姫」

「貴方は……」


 誘拐されてから一度も姿を見せたことがない男性が現れて、私はより警戒心を強めた。

 そのことに向こうは咎めないどころか、それが合っているとばかりの反応をして、跪いてきたけど。

 この部屋にはかなり厳重の監視などがあると思っていたんだけど、そうじゃないのだろうか?


「姫のお考えになられている通り、監視は大勢居ますよ」

「なら、どうやって……」

「少々、術を」


 簡潔に答えられた内容に微妙な顔をするしかない。『少々』で終わる感じじゃないと思うんだよね、おそらくだけど。

 私が確認できているだけでも十人以上は監視をしている者が居るんだから、その全員の監視の目を潜り抜けてここに来るというのは難しいはずだ。

 私が覚えていない術だったら可能なのかもしれないが。

 それにしてもそんな危険を冒してまでどうして来たんだろう? 今までの会話からしてもどうも潜入をしている、という感じだったのに。

 潜入調査? というものならば、確実に『信仰会』に気づかれるのは避けたいはず。なのに来るって何かあったのだろうか?

 ジッとその男性を見れば、男性は苦笑しながらも教えてくれた。


「大丈夫ですよ。姫が心配なさっているようなことは起こりませんので」

「どうして来たのか、お聞きしても?」

「勿論です」


 一応で聞いてみれば、即答された。もう少し隠す素振りでも見せてくれた方が良いんだけど……それは言わないでおこう。


「『桜桃軍』の十二天将や貴女様の式、夜の貴族達が動きました。しかし、ここに辿り着くことはかなり難しいでしょう」

「どういう……」

「貴女様に刻まれた位置を特定するための刻印の位置をずらされているのですよ」


 男性の言葉に私は目を眇めた。やはり気づかれた上でどうやってか位置をずらして来られないようにしていたらしい。そりゃあ、四日もここに居て何の進展もないわけだ。

 納得できる理由に頷いていると、男性が更に現状を説明してくれた。

 位置をずらされているとはいえ、ずらす場所がそう多いわけでもない上に、それに早々に気づいたレティの協力者から情報が渡り、紗良ちゃんとレティが片っ端から潰していっているそう。

 ずらす媒介となっている物を潰さばまた別の場所に位置が動くから、それを利用してどんどんこちらに近づいてきているけど、『信仰会』はまだそのことに気づいていないのだとか。

 やはり、術でそういった者達が軒並み倒れているのは痛手だったようで、ここを見つけられたらちょっと困るらしい。ちょっとで済むということは、相当所属者が多いのだろう。

 記憶を操っているのか、どうなのかは知らないけども。


「位置をずらしているだけで、元々の刻印は解除ができていませんから、いずれはここに辿り着きます」

「それがいつ頃かわからないから、来た、と?」

「さすがは、姫」


 褒められているのかよくわからない褒められ方をした私は微妙な顔になる。

 そんな方法で来ている以上、確かにいつ頃来るのかわからないし、その間に何もないとは言い切れないのもわかるんだけど、この男性の褒め方はとてもじゃないけど褒められた気がしない。

 どちらかと言えば馬鹿にされているようにも感じるんだよね。だとしたら私にこんなことを教えたりはしないだろうけどさ。

 何とも言えない感情になりつつも、男性を見れば、男性が苦笑してきた。


「馬鹿にしているつもりはございませんよ。それよりも一つお聞きしたいことが」


 そう言って、先ほどまでの気安い態度が一変し、主従を明確に示すかのような雰囲気や態度に変わった男性に私は言葉を待った。


「姫はご自身の記憶をどうなさりたいですか?」

「え?」

「現状、あの式と同じく、私は貴女様に思い出していただくのは得策ではないと考えております。ですが、そう長い間、お役目を放棄するような行動もできない。神々が許していたとしても」


 それは私も同じことを思っていた。記憶を思い出せば今まで以上に狙われる確率は増える。しかし、思い出さなければ本来の役目は果たせない。

 男性の言っていることが本当ならば、神々は思い出さずとも許してくれているらしい。もしかしたらこちらの事情に理解を示しているのかもしれないね。

 とはいえ、急に言われても困る。ずっと悩んでいたけど、答えが出なかった考えなのだから。


「……思い出すべき、なのではないか、と思ったことはあります」

「ええ、姫ならばそう思われることでしょうね」

「でも現状が思い出さないことを推奨される状況であることも事実。なので、はっきり言えば悩んでいます」


 情けないことを言った自覚はあるが、嘘を吐く必要性はないはずだと思い、正直に言えば、男性は咎めることもなく、同意するように頷いている。

 本当に彼は何者なんだろうか。『桜桃軍』の状況を知っているのに、『信仰会』に所属できているということに疑問を感じずにはいられない。

 だって、今の『信仰会』は『桜桃軍』が片っ端から潰しているなんて知らないらしいし。

 知っているのに報告せず、私には伝えてくるあたり、彼は『信仰会』の仲間で居る感覚はないのだろう。あったならば、言っているだろうし。

 彼から伝えられた情報しか知らないから断定はできないけども、今までの感じを見るに嘘は吐いていないのだろう。私の勘も何も伝えてくることはない。


「やはり、姫もそう思われていましたか……でしたら、私に少し任せてくださいませんか?」

「任せる、とは?」

「『信仰会』は貴女様の記憶を思い出せようとしています。そのための人材が全て眠ったまま起きないので、事は進んでおりませんが」


 ……水速さんのファインプレーと言うべきなんだろうか、これ。

 四日も平穏が保たれていたのはそのせいでしたか……どれだけ眠らせたんだか。


「しかし、今は追い詰められた状況。何をしてでも思い出せようとする輩が出るやもしれません」

「ありえるでしょうね」

「はい。ですので、彼らの意識を貴女様の記憶を思い出せることから逸らします。それも長くは持ちませんので、その間に『桜桃軍』が来なければ相当厳しい状況に立つことになりましょう」


 確かに常に術を行使し続けるなんて長く持つとは思えない。だけど、今はそうしなければいけないほど危険なのだろう。はっきりとは言わなかったが、そうする可能性のある者でも居るのかもしれない。

 私が逃げ出すように仕向けることはさすがに難しいのだろう。どこまで可能なのかわからないが、おそらくは私に関する意識ごと逸らさなければならないので、一部を逸らすだけで良い時よりも霊力の消耗が激しくなると思われる。

 そんな感じで少し考えた私は、無言で頷き許可を出す。来なかった時はほぼ確実に私が記憶を思い出すように行動を『信仰会』が起こす。

 その覚悟もしなければならなくなったけど、何もしていないよりは平穏が保障される期間が長くなるのならば、その方が良いと考えた。

 私が頷き許可をすれば、男性は少しだけ安堵した目になった。私が拒否する可能性もあったもんね。

 この人に負担をかける形になっちゃうもん。そこが心苦しくないと言えば嘘だけども。


「では、そのように」

「お願いします」


 お互いに短い言葉を最後に交わし、男性は部屋を去って行った。

 その後、昼食だと運んできたいつもの女性から食事を貰い、今までどおりに過ごす姿を見せたのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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