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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
63/82

怒り

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。


今回は短いです。すみません。

  ――レティシア視点――


 その日もいつも通りの日常を送り、月夜が眠りについたのを見届けた。

 でも、ほんの少し、少しだけ意識を月夜から離したその一瞬で月夜は姿を消した。

 あまりにも唐突でいきなりの事態に真っ先に気づいた私と紗良は揃って眠っていた者達を起こし、月夜の行方を聞いたけども、誰もが月夜が消えたことに気づいていなかったわ。

 すぐさま護衛についていた者達や他の十二天将達が集まり、緊急会議となった。


「月夜さんが姿を消した? レティシアさんと『勾陳』が居ても、気づかないとは……」

「事前に仕掛けられていたのだとしても、私の施した刻印で弾かれるはず。一体どういうことか」

「神隠しでも起きたのか?」


 集まった者達が口々に言うも、これと言えるものは一切なく、焦燥感だけが募っていっているのがわかったわ。まあ、あれだけ護衛が居る中で誘拐されちゃね……。

 何より、起きて月夜の側にいた者達さえも眠っていたんだもの。確実に眠らされたのでしょうけど……だとすれば、内部に敵が入り込んでいたとしか思えない。

 動いた様子はなかったはずなのに、一体どうやって……。


「はいはい。そこまでよ」


 手を叩く音が聞こえ、全員の視線が美奈子に向く。美奈子も焦燥感を感じていないわけではないみたいで、少しだけいつもよりも震えた声をしているが、それでも平常を装っているところは凄いと言えるわね。

 内心そう思いつつも、自身の心を落ち着かせる。今はまだ危険な状態には陥っていないでしょうから、落ち着いておかなければ。そうでなければ必要な情報も見逃してしまう。

 言い聞かせるようにしながら目を閉じ、一度深く息を吐き出してから目を開く。自分を落ち着かせる時の行動だけど、効果はあったようだ。


「憶測はいくらでも言えるけども、現状は変わらないわ。十二天将や夜の貴族の目を盗んで奪うなんてそう容易なことではないというのは事実。でも、誘拐されたのはほぼ確実。……これは『桜桃軍』への宣戦布告とも言えるわ」


 酷く冷たい笑みを浮かべて今から殺戮でも行なうのかと言わんばかりの表情の美奈子に私達は怯えることはなかった。

 月夜の前では猫を被っているのか、普段の演技を絶対に忘れない彼女は、中々に気が強く、また懐に入れた者達に手を出されることをこの上なく嫌う。

 運営のトップに立っているというのは伊達ではないのでしょうね。

 そんな彼女が明らかに激怒している。予想通りではあれど、怯える必要などない。私達も彼女と似たような面があるのだから。

 本当に宣戦布告なのだ。『信仰会』も馬鹿なことをしたと思うわよ。まさか『まだ』自分達の居る場所が知られていないとでも思っていたのかしら。

 それとも、絶対に見つからない場所だと思っているのか。どちらにせよ、愚かでしかないとは思うけどねぇ。


「おお、怖っ。月夜ちゃんに見せたら絶対に泣くで、その顔」

「あらあら。貴方こそ普段の詐欺師みたいな顔が剥がれかかっているわよぉ?」


 わざとらしく普段の演技をした美奈子に、新次郎も肩を竦めるだけ。普段は飄々とした雰囲気を纏う彼でさえ激怒しているらしい。こういうところから考えても、月夜を誘拐したのは悪手と言えるわね。

 まあ、だからって退けないのでしょうけど。月夜が唯一の希望とも言えるもの。

 慧にも接触はあったけども、そのせいで場所まで把握されている状態になったのよねぇ。ついでに『信仰会』に所属していて戦力となっている者達には動けないようにさせてもらっていたけども。

 それでも仕掛けてくれたというのだから、何かしらあるのでしょうね。


「久しぶりに血が滾るような思いじゃのぅ。ふふ、妾を楽しませてくれる輩どもは要るのか、楽しみじゃ」

「あら、じゃあ、向こうの倒れた戦力を起こしておいた方が良いかしら?」

「それも一興じゃのぅ」

「いや、月夜ちゃんに辿り着く時間が遅くなるやろうから、止めてや」


 実は戦闘好きな紗良の言葉に反応し、そう言えば、即座に新次郎に止められたわ。まあ、他の人達も同意見のようで、誰も紗良の方の味方をしなかったけど。

 わからなくもないわ。紗良の戦い方は中々にあれだもの。どうして鞭でグロイ死体が出来上がるのか謎だわ。


「……月夜に居場所がわかる刻印をしていて良かったな」


 今にも現状わかっている『信仰会』が隠れた場所を片っ端から行きそうな紗良の様子に五郎が遠い目をして呟いていた。もしや、戦闘のことになるといつもこうなのかしら。

 私はあまり関わってこなかったので、詳しく知らないのだけど、さすが『勾陳』って感じはするわね……。

 微妙な顔で紗良を見ながらとあることに気づき、私は五郎の方を見た。


「刻印は解除されていないの?」

「できる者がいないのか、されていないな。もしかすると、しなくとも大丈夫な場所に居るのかもしれんが」

「人払いか、人迷いの結界が張ってある可能性があるということね」

「まあ、そうだな」


 五郎だけに刻印による位置情報が伝わるわけではないので、他の十二天将が声を上げなかった時点で本当に刻印が解除されていないみたい。

 それもそれで不自然さを感じないわけではないけども、今は無視で大丈夫でしょう。


「……早く取り戻せるならば、取り戻した方がいい」


 今まで黙っていた式が口を開くと同時に、何やら不穏なことを言ったので、全員の視線が式に向いた。ただし、訝しげな顔に皆がなっているけども。


「どういうことじゃ?」

「現在、神々の介入が遠退いているという状況だが、だからこそ、主はあの神社を守る立場に居なければならない。今は記憶喪失のため、その役目は一時的に免除されているが、主があまりにあそこから離れているのは宜しくない」


 いつも以上に饒舌な式に目を瞬くけども、同時に月夜の役目がどれほど重要なのかがわかり、表情を厳しいものに変えた。

 本部に居る状態が続いても何も言わなかったのに、月夜がそこから離れた瞬間、言い出したということは……。


「もうわかると思うが、ここ本部も主の存在が必要だ。私はあくまでも記憶を失う前の主から少し聞いただけではあるため、これ以上詳しいことは知らないが、あまり長く離れているのは宜しくないと言っていた。この町内であったならば問題はないそうだが……そうではないだろう?」

「そうじゃの」

「しかも、向こうは主の記憶を思い出させようとするはず。……今の主に記憶を取り戻させるのは危険だ。思い出した内容によっては、霊力が暴走する」


 最大の問題点を挙げた式に全員が顔を強張らせた。そう、月夜の霊力量を忘れていたのよ、私達は。

 あまりにも使われる機会が少ない上に、本人があの性格なので、その事実を忘れてしまっていた。だけど、式の言う通り、本当に暴走したならば……その被害は読めないわ。

 本当に早急な対処が必要そうね。徐々に思い出していくならば問題なかったとしても、急に大量の情報を思い出すのは、脳に負荷がかかるでしょうし。


「ふぅむ。これは戦闘を楽しむ余裕すらないやもしれんのぅ」

「最初から楽しむなや。とりあえず、行動に移すべきやな」

「そうねぇ。式さん、月夜お嬢さんはまだ大丈夫そうなのかしら?」

「警戒心を抱いている状態なのは伝わってくる。霊力の波はそれ以上掴めないが、まだ危険ではないと思われる」


 美奈子の確認に即座にそう返した式。それならばまだ大丈夫そうでしょうけど、まだ安心はできないわね。

 そう、他の者達も思ったのか、お互いに顔を見合わせて頷き合う。


「では、特攻を妾とレティシアで行なおう。良いかの?」

「構わないわ。寧ろ人迷いなんかの結界が張ってあったら、壊せないでしょう?」

「まあの」


 攻撃に極振りしているも同然らしい紗良の即答に呆れつつも、表には出さない。今はそれどころではないもの。他の者達は思いっきり呆れているけども。

 月夜には「守りも必要じゃぞぅ」とか言いながら、自分は一切防御とかを考えない脳筋だものね。

 ここは私が紗良の援護を務めた方が良さそうだわ。他について来れそうなのが、これまた攻撃に霊力の波動が極振りされてしまっている五郎しかないし。

 そう思い、美奈子に視線を向ければ、無言で頭を下げてきた。同じ結論に達したようね。

 すでに憂鬱に思いつつも、私は溜息を飲み込み、紗良の後に続いて会議室を出た。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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