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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
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嫌な予感

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

 また会うだろう、とは思っていた。思っていたけど……いくら何でもタイミングが良過ぎやしないか、これは。

 そう内心思ってしまうのは、目の前の男性を見てだ。きっと表情にも出ていることだろう。

 何が楽しいのかわからないが、ずっと笑みを浮かべて私の前で跪いている。……ええ、跪いているんですよ。どういうことだよ。

 あのどういう原理で呼ばれたのかわからない出来事が再びです。この男性にしか見えてないみたいだしね……本当にどうなっているんだか。


「お久しぶりですね、我が姫」

『……』

「ふふ、ここでは声を出していただいて大丈夫ですよ。誰も来ませんから」


 そうは言われても容易に口など開けるはずもなく、私は無言のまま男性を見た。記憶を失う前の私の知り合い……なのかもしれないけども、今の私はそのことさえ忘れているので、申し訳なさもある。

 そもそも、私のことを『我が姫』と呼ぶ理由もよくわからないしさ。


「ああ、お気になさらずとも構いません。今の貴女様が私を知らないというのも勿論わかっております」

『えっと……』


 記憶喪失ということを把握しながら気にしなくていいと言った男性に困惑する。しかも私の声はどうも相手の脳内に直接届くような感じになっている気がする。

 私の声なはずなのに、私の耳から聞こえていない、という感じなんだよね。とすると相手も一緒だろう。益々今の状態がどういうことなのか謎だ。

 いまいち現状を飲み込めていない私に男性の方もわかっているようで、現状の説明をしてくれた。


 ここはやはり私の予想通り『信仰会』の活動場所の一つだそうだ。幹部はあの男女二人だけだが、幹部としては下っ端の方。とはいえ、幹部であることに変わりはないので、ここは隠れた場所とのこと。

 また私が誰にも言わなかったことは正解だと言われた。どうやらこちらの動きは大体把握されているらしい。私が見えていないだけで、周囲は見えているもんね……。

 で、見えない理由は神々がそうしているから。何を思ってそんなことをしているのかについては教えてくれなかった。まだ知らない方がいいということなんだろう。

 ちなみに、今の状態は、ちょっと複雑な状態だそう。何でも仮初の体に私の魂を一時的に宿らせ、『信仰会』の人達には存在すら感じさせないようにしているそうだ。


 ……明らかにこれ、普通の術じゃないよね。聞いてもはぐらかされたけど。


「そういうわけですので、長時間の行使は無理なのです」

『なるほど……』


 確かに完全にとはいかないまでも、普通に考えれば幽体離脱とはまた違う状態な上に、どう考えても本体と言える私の体が危険だ。

 魂が欠けた体は死を意味するのだから。幽体離脱も危険性の伴う行為だというのも聞いたことがある。

 あんなにも霊力に敏感な人達に気づかれず私を呼べるものだ、と感心してしまう。しちゃいけない部分なのかもしれないけどさ。


『……それで、私を呼びだした理由は?』

「我が姫にお気をつけいただきたく。『信仰会』が本格的に動き始めました。貴女様の近くに穢れ狩り達が大量に控えているのを見て二の足を踏んでいるようですが、もはや彼らには余裕がありません」

『それはどういう……』


 以前は穢れ狩りが大量に護衛として控えてくれていた時でさえ狙っていたというのに、今回はそれができないと言わんばかりの発言に訝しげな顔になってしまう。

 少なくとも私は何もしていないし、誰も何もできないと思うんだけど……。


「逃れ者がこちらに攻撃をしてきているのですよ」

『……』


 それ、水速さん、という名前だったりしないか。

 咄嗟にそう問いかけた私は悪くないと思う。だってあんだけ凶悪な笑みを浮かべていたような人が攻撃を仕掛けていたとか考えられないことではないもの。


「ああ、姫の思われている通り、その人物です。お蔭で有能な体質を持つ者などが次々に倒れているのですよ。死んではいませんが」

『……何故、嬉しそうなのかお聞きしても?』


 結構ヤバイことを言っているはずなのに、嬉しそうに笑みを深めている男性に私は顔を引き攣らせながら聞く。

 そんな私の反応を気にすることなく、男性は言い切った。


「貴女様の敵になったのです。許せるはずがありません」

『……そうですか……』

「はい。……と、そろそろ戻らなければ危険ですね。もしかしたら、次は実体での再会になるやもしれませんので、その時は初対面の振りをお願いします」

『あ、はい』


 言い切られた内容に死んだ目になった私に構わず、時間を確認した男性がそう言うと、気づいた時には私はベッドの上だった。周囲を見渡すが、誰も気づいた様子はない。

 まあ、とりあえず言えることは……水速さんはやっぱり怖かった、ということだろう。レティも知っていながら黙認するあたり、どうかと思う。

 優しい雰囲気と口調で、研究が好きそうな感じで、そして敵には容赦がない、ということが今回のことでわかった。まさかすでに動いているとは……。

 呪っているわけではないんだろうけど……無理矢理動かすことができない程度の状態だというのはわかる。でなければ無理矢理にでも『信仰会』の人達は動かすだろう。

 倒れている、という話だから、もしかしたら強制的に術者が解かない限りは眠り続ける術とかを使っているのかもしれない。あくまでも予想なので可能かどうかは知らないが。

 それならば、何をしても起きないから、動かせない、という状態に陥らせることができる。何せ術者を探し出して、術を解いてもらわない限り、どうしようもない気がする。

 水速さんのことだから、きっと術を解ける人を真っ先に狙っただろうし。どうやって見つけたのかは考えない方向で行こうと思う。絶対に普通じゃない。

 ……一応、水速さんに聞いて……いや、あの男性が黙っていた方が良い的なことを言われたから、聞けないか……勘ということにするにはあまりにも突拍子がないし。

 こんな感じでずっと考えていると、私が起きていることに気づいたようで、レティがこちらに寄ってきた。彼女は夜の貴族と言われる通り、本来夜行性だそう。

 何だったら人とも違う感じなのだそうで、睡眠は一週間取らずとも普通に動けるんだと言っていた。


「月夜、何かあった?」

「何もないよ。ただちょっと目が覚めちゃって……」

「なるほど。でもまだ深夜だから寝なさい。『信仰会』のことがあるから、気を張っているのよ」


 レティも気づいていないようで、そう言ってきた。まあ、確かにそういうところはあるけども。

 常に狙われているという状態だと嫌でもわかるからね……。

 でもまあ……ちょっと勘が嫌な方向に発動してはいるんだけど。

 あの男性と話したことで余計に強まったと言うべきだろうか? それほどに私は占で結果が出てから嫌な予感がしている。

 おそらく、私はほぼ確実に『信仰会』の所に行くのだろう。その方法まではわからずとも、きっと行くことになる。

 これだけ護衛が傍に居て、その予感を持っているというのも恐ろしい話ではある。


「それじゃ、おやすみ」

「うん、おやすみなさい」


 お互いにそう言い、私は再び横になって目を閉じた。できることならばこの予感が当たらないことを願いながら。さすがに当たって欲しくはない。

 それでも当たってしまうのだろうとも考える。こういう時の予感は今まで外れたことがないから。

 是非とも未遂になって欲しいけど……彼らに拉致されることで、一部でも私の記憶が戻る気もするんだよね……。正確には『戻させられる』かもしれないけど。

 だって、知らないままでは誰も方法を知らない以上、困るもん。少なくとも私だったら、思い出させようとする。

 その方法が外道と言われるものである可能性は高いだろう。何とも嫌な話である。

 とはいえ、私にできることは何もないんだけどね……。

 そう思いながら私は再び眠りにつくのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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