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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
57/82

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。


今日の23時にも小説が出ます。今後はそちらの時間で投稿しますので、宜しくお願いします。

 今日も一日が何事もなく過ぎ、夜になって私は眠っていた……はずだ。

 しかし気づいたら何故か見知らぬ場所に居た。

 咄嗟に周囲を見回すが、傍に居るのが当たり前となっている式の姿が見えず、動揺する。

 連れ去られたのだとしたら、私はずっと眠っていたことになるし、何より式や本部に居る人達が戦闘していたならば、その音で普通は起きる。

 そうでなくても霊力が高まったら霊力の高い私は体が反応して自然と起きる。それがないということは……誰にも気づかれずに攫ったか……。

 そこまで考えて私は自分の手の甲を抓った。本来ならば痛みを感じるほど抓っているのに痛覚を感じないことでここが夢の中であることを悟ったけど。


「それでも安心できないんだけどさ……」


 攫われたわけではない、ということがわかり、少しだけ安堵はできたものの、この夢が何の意図もないとは思えず、警戒は続けたままだった。

 何もない野原とかであればまだ良かったのかもしれないけど、残念ながら居るのは人の気配がしない村と思しき場所だ。

 時間は夜なため、余計に恐怖心を煽ってくるが、ずっと立ち止まっていることもできず、ゆっくりと歩き出した。足音さえしないからもしかしたら夢じゃないのかも……。

 何となく喋ってはいけない気がして、ゆっくりと歩き続けていると、一ヶ所だけ光が灯っている場所があることに気付いた。

 そちらへ足を向けると同時に嫌な寒気を感じ、思わず足を止める。完全に一人で行動しているせいか、いつも以上に慎重に行動しなければならないと思うと途端に足が竦んでしまったのだ。

 でも行かないといけない気もして、私は意を決して足を進めた。何となく誰かが傍に居て守ってくれてる感覚もしていたからだろうが。


 そうして行きついた先に居たのは、達磨のお面を被った人達。全員が黒い装束を着ている。形は……平安貴族の狩衣に近い。上はそのままだけど下は袴だ。

 しかし、私はその人達を見た瞬間、悲鳴を上げそうになった。何とか悲鳴を飲み込むことができたけど。

 達磨のお面は私が神楽家で襲撃された時や夢の中で見た人達と全く同じデザインだったから、咄嗟にあの時のことを思い出してしまった。

 幸いにも私の姿は彼らには見えていないようで、私はなるべく場所を動かないようにした。下手に動けば見えないとはいえ居ることがバレてしまいかねない。

 幽霊……いや、幽体離脱? というやつかな、とも思ったけど、穢れが見えるであろう彼らが見えていない様子なので違うのかもしれない。幽体離脱して魂だけが飛んでいたならば気づかれるはずだし。


「現人神様はまだ見つからないのか!?」

「申し訳ございません……必死に探しているのですが、どうしてか同じ場に居るはずだというのに我々には視認ができず……」

「言い訳はどうでもいいのです。どうせ忌々しい神々どもが隠しているだけでしょう。今までになかったとはいえ、視認できなくなった程度で捕まえられんとは何と情けない……」

「……申し訳ございません」


 怒りを露にする三十代後半ぐらいの男性と、失望と蔑みを向ける二十代後半ぐらいの女性に報告を行なっていた男性が謝罪だけを返した。

 彼らが長なのだろうか? と思ったけど、違うと直感的に否定する。彼らはきっと幹部ではあるんだろうけど、幹部としての地位が高いようには感じられなかった。

 というか……神を降ろさせて願いを叶えてもらおうとしている人達の言動なのか、あれが。

 神は通常、願いを聞き叶える存在ではなく、見守ってくれる存在だという。つまり、「こういう目標を立てているので、見守っていてください」というお願いの仕方が正解というわけだ。

 そうでなくとも相手は人の常識など通じない存在。何が不敬に当たって縁のある人達に影響を与えるかわからないので、神と接する機会があったならば、丁重に扱わなければいけないと言われている。

 私は神降ろしが可能みたいなので余計にそういうのは気を付けようと思っている。沙織は私だけはどんな不敬を働いても許されそう、とか言っていたけど。

 でまあ、そんな常識から考えるとあの人達の言動は少々眉を顰めてしまう。本気で神に願いを叶えて欲しい者の態度ではないだろう。

 一人眉を顰めて不快感を感じていると、一人の男性が恭しく男女に近づいた。


「そう激高なさらないでください。寧ろ喜ばれるべきでは?」

「何だと?」

「その少女は神々に殊更干渉されているということは逆に言えば、それだけ我らの願いを叶える存在に適任だ、ということではありませんか。神々が彼女を大事にすればするほど価値が上がるのです」

「……なるほど。確かにそうだな」

「ええ……確かに貴方の言う通りだわ、柊。とはいえ、未だ我らの手中に収まってはいない状況……宗主様も念願の存在が現れたことで喜ばれていることも事実」

「しかし、現状は中々手出しが難しいでしょう。夢などに干渉しようとしましたが、神々の妨害があります。また少女自身はあの穢れ狩りどもの本部から出てこない」

「あの本部ですか……忌々しい限りです。あそこは特殊体質を持つ者達も干渉できないのですもの」


 そう言って女性は手に持っていた扇子を力一杯握り締めた。それを恭しい態度を崩さない男性がそっと手の力を緩めながら扇子を離させ、手を撫でた。

 女性はよほどその男性を気に入っているのか、媚びるような姿を見せた男性にうっとりとした眼差しを向けている。達磨のお面をしているせいで顔が見えないけど、目はかなり感情的だ。

 もしかしたら媚びている? 男性の方は顔が良いのかもしれない。容姿の良い男性を侍らせることに優越感を感じる女性も居るのだと、沙織や凛姉さんがいつか言っていた。その時は金持ちの家の令嬢が湊兄さんを気に入ったとかで、大学にも無理矢理編入してずっと付き纏っていた……という感じだったはずだ。

 最終的には湊兄さんと話をしていた時に私を押し退けて話しかけてたんだけど、女性に押された勢いで私が突き落とされた状態になり、歩道橋の一番上から落ちかけたんだよね。

 場所が階段を下りる瞬間だったから、余計に踏ん張りが効かず、湊兄さんが助けてくれなかったら下手をすれば死んでいたところだ。

 ただそれがあった翌日からその女性は姿を見せなくなり、大学も退学させられたらしい。理由は私だけではなく他の女性が湊兄さんと一緒に居る姿を目撃した瞬間、無理矢理押し退けて話しかけていたそうなんだけど、その際に何度も押し退けられた女性が怪我をしたりしていたから。

 中には慰謝料が発生しても不思議じゃないような大怪我を負った人もいたらしいんだけど、そんな人達が訴えないように、女性を溺愛している父親が金で黙らせていたんだとか。

 凛姉さんは学園には通っていなかったし、基本的に家に居る人だったから被害はなかったんだけど、私はちょくちょく湊兄さんと時間が被って一緒に帰ることがあった。

 朱里姉さんは春樹兄さんと一緒に帰る場合が殆どだし、部活の助っ人もしたりしているらしいので、帰りが遅いのはよくあることで、時間が合わないんだけどね……。

 要するに家族にまで手を出された湊兄さんが堪忍袋の緒が切れた結果、というわけだそうだ。何をしたんだろうね。

 というかさ……。


 こんな誰の助けも入らない、しかもバレたらまずい場所で何を思い出しているんだ、私は……。


 ま、まあ、そんな過去に出会った女性に似ていること? をしている女性に私は何とも言えない顔をしていたと思う。霊力が高いせいなのかわからないけど、媚びている男性が女性に対し何も感じてないことも感じ取っているせいだと思うが。

 寧ろ……面倒だ、みたいな感情を感じている。媚びているのは本意ではなく、適度に良い顔をしておかないと更に面倒なことになるからそうしているだけ……みたいな感じだ。

 何と言うか……本当に神に願いを聞き届けて欲しいのだろうか。どう見ても欲丸出しじゃない?

 確か神に仕える者は身を綺麗にしなければいけない、みたいなのがなかったっけ? 神は穢れを嫌うっていう話だから、そこらへんに引っ掛かって嫌われているんじゃ……。

 誰にも見えていないことを良いことに結構失礼なことを考えていると、その場はお開きになったようで男女が居なくなり、次々に跪いていた人達が部屋から出て行った。

 しかし、一人だけ。誰も居なくなった部屋から去ることをせず、真っ直ぐに私の前に来た。

 他でもない先ほど女性に媚びていた男性だ。

 彼には見えていたのか、と恐怖から体が震えたが、それでも逃げることも声を発することもしなかった。というかできなかった。

 しかしそのまま私の微妙に横を通り過ぎようとしたことで見えていないのだと少しだけ安堵した直後、正確に手に触れ、いきなり手の甲に口付けされた。


『!?』

「声を出さず、この部屋に入ってから動かなかったことを称賛いたします、私のお姫様」


 やはり見えていたのか……と思うと同時に何となく目の前の男性が呼んだのではないだろうか、とも思った。誰も居ないとはいえ話して大丈夫なのだろうか、この人。


「ああ、そのまま話さずにいてください。大丈夫、今日はすぐに帰しますよ。じゃないと激怒されてしまいますから」


 さようなら、私のお姫様。そんな一言を最後に私は気付けば本部の自室のベッドの上に居た。やはり精神か魂だけが飛んでいたらしい。

 にしてもあの人は誰だったんだろう? 考えたって無駄なことは何となく予想がつくけど。

 もしや、記憶喪失なことも知っていたりするんだろうか。知ってそうな感じはしたし、知った上で呼んだということになる。

 ……考えても無駄だと思ったけど、本当に無駄だったな。あれ以上の情報がないんだから仕方がないけどさ。

 はぁ……ここのところ平穏だと思っていたけど、急に平穏じゃなくなったよ……元からだったけど。

 そう思いつつも私は時間を確認した後に二度寝を決行するのだった。今度は夢を見ずに済んだからすっきりと目覚められたけどね!


最後まで読んでいただきありがとうございます。


誤字がありましたらお手数ですがご報告ください。


今回、男性が出たので少しだけ伏線? が回収できました。正体はまだ秘密ですが。

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