表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
56/82

疲労

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。


今回は短いです。

  ――月夜視点――


 九十九先生による勉強会(紗良ちゃん付き)が終わり、まだまだ説教し足りない、という感じの紗良ちゃんがにこやかな笑顔のまま先生を引き摺って連れて行き、私と式はここ最近の重要なお仕事である札作成に精を出していた。

 製作者が一人しか居ないので、どうしても消費の方が上回ってしまう傾向にあるのだ。それでも大分と本当に初期の頃に比べたらその差は埋まりつつはあるけど。

 普段の任務でも使用されることは多いが、いずれは訓練でも使えるようにしたい、という風には美奈子さん達に言われている。そこまでのレベルに達していないので、現状は無理だが。


「大分と作っているはずなのだが……やはり穢れとの戦闘に惜しむなどということはできないか」

「多分ね。とはいえ、個人個人に渡される枚数は決まっているから、不足分だけ今は渡すで済んでいるみたいだけど」

「それでも緊急時にはすぐなくなるだろうな」


 式の言葉に頷く。そこが誰もが考える懸念点だから、私も頑張って作り続けているのだ。勉強時間などを多少なりとも削っても問題ない状況であるため、そうされているぐらいだしね。

 宿題もないし、訓練も一時中断されて、完全に札作成に時間を費やすことを最優先にされている。それほどに誰もが懸念している、ということなんだけどさ。

 他にも神楽家に襲撃してきてから、一度も襲撃する様子がない上に、手を出す様子さえもない現状に毎日、五郎さんや紗良ちゃんなど十二天将の人が数回に分けて私の様子を確認しに来るようになった。

 そんだけ動きがない、ということなんだけど……それが異様さを感じるのは私だけではないだろう。

 嵐の前の静けさ、というか、虫の知らせというか……とにかく言葉に表せない焦燥感と緊張感がずっとあるのは自覚しておりますとも。

 あれから本当に記憶を思い出すこともないしねぇ。何となく思い出さない方がいい気がするから良いのかもしれないが。


「ふぅ……」


 さすがに毎日数十時間も机に向かってひたすらに札を作り続けている状態なので、少し疲れを感じて息を吐き出して、作業を中断する。

 肩や首にだるさを感じるのは、長時間の作業のせいだろう。こればかりは仕方がないと思うしかないのかもしれないけど、かなり凝っているのか、ここのところ鈍い痛みまで感じるようになった。

 ずっと頭痛がするんだよね……鈍いからまだ耐えられるけど、これ以上になったら辛い。

 などと考えていると、ドアのノック音が室内に響き、続いて声が外から発された。


『入ってもいいかしら』

「美香さん? ……どうぞ」


 名前と声で誰かわかった私は一度式に視線を向けた後に入室の許可を出した。すれば、入ってきたのは予想通り美香さんだった。

 いやまあ、偽物がここに入って来るのは不可能に近いらしいけどさ……。


「……お仕事中だった?」

「いえ、ちょうど少し休憩に入ったところです」

「それなら良かった」


 机の上に大量の札があるのを見て、申し訳なさそうな顔をして聞いてきた美香さんに首を横に振って否定を返せば、安堵の顔をされた。邪魔をしてしまったかもしれないと思ったらしい。

 まあ、組織としても重要と言える代物だもんね……。

 それにしても何か用でもあったのだろうか? と思い、美香さんを見れば、美香さんが苦笑しながら手に持っていた物を床に置いた。


「お菓子?」

「そう。練り切りよ。とっても美味しそうだったから、買ってきたの。ここ最近、ずっと机仕事をし続けているから月夜さんと一緒に食べようと思ってね」


 開かれた箱の中には花などをモチーフにしている練り切りと呼ばれる和菓子が入っていた。ただ……何故か箱が数個あったけど。

 困惑した様子で数個ある箱を見れば、美香さんは二箱私に渡してきた。


「えっと……?」

「式や沙織さんと一緒に食べて。沙織さんはかなりの甘党でしかも量も食べるんでしょう? 一つでは足りないわ」

「ああ、そういう……」

「本当は沙織さんに三つかな、と思ったのだけど、さすがにそれはね……」


 すっかり十二天将の皆さんの間で知られている情報になってしまっているらしい沙織に関することを言われて、私と式は納得した。確かにそう考えると二箱になる理由もわかる。他の箱はきっと運営組とか紗良ちゃんに渡すんだろう。

 どうやらこの後、沙織が来ることも知っているみたいで、ちょうど良かった、と言っていた。

 最近では私が作る余裕さえもない状態になっていたからね……確かに良かったと言うべきかも。買いに行くこともできてなかったしさ。


「ところで、ずっと机仕事で首や肩は大丈夫?」

「あはは……結構来てると思います」

「やっぱり? ちょっと失礼しても良いかしら?」


 確認のように聞いてきた美香さんに頷く。で、美香さんが後ろに回り、肩に手を置いて揉みだした。結構な力で押されているんだろうけど、痛さとか感じないどころか、気持ちよさも感じていない私の様子を見て、美香さんが呆れた顔をしてきた。


「これ、相当よ? 本当に他に異常は出てなかったの?」

「鈍く頭痛なら出てましたが……」

「それかなりの重症じゃない。これは定期的に医療班を派遣した方が良さそうね」

「そこまで……?」


 医療班は体のメンテナンスとして、そういったこともできるらしくって、美香さんが結構真剣な顔でそう言ってきたので、困った顔をする。あの人達にしてもらうほどの感じじゃないと思うんだけどな……とは思ったんだけど、美香さんに押し切られ、すぐさま医療班の一人が派遣されてきた。

 触る場所が場所なので、女性の方がいいだろうという感じで女性の医療班の人が派遣されてきたんだけど、やはり肩を触った時点でかなり凝っている、と言われた。


「これは定期的に行わないと凝りは取れませんよ」

「そうなんですか」

「はい。『太陰』様の言葉が正しいと私も判断しました」


 そこまで言われてしまっては、私の方も拒めるはずもなく。急遽、背中などもされることになった。

 これがまた腰なども酷かったらしくって、ツボに入っているのはわかったんだけど、ツボに入る度に「ゴリゴリ」という音が聞こえそうなレベル。

 わかりやすく凝っている状態だったわけですね……完全にわかってなかったけど。

 急激に凝っているわけではないから、徐々に起こる体の変化に体の方も対応してしまい、どれほど凝っているのかわからなくなってしまう場合が多いんだって。

 そうでなくとも私は集中していることが多いからね……肩がだるく感じる程度ではまず中断しないわけで……そりゃ悪化するわ。

 肩の方とか、バキバキ音が鳴ったりしてました。ちょっと音が怖かったのは言うまでもない。

 明日から毎日行う、と言われてその分の時間も作られることになった。さすがに美奈子さん達もそれは危惧していたらしく、医療班の決定に従ったそう。

 沙織は肩を揉んで納得していたけど。


「確かにこれならそう判断されるわね……本当に何とも感じないの?」

「寧ろ、一気に凝りが表に出て来たみたいな感じで歯茎が痛く感じる……」

「それ、相当じゃない」

「ですよね……」


 触らなくてもわかるほどに肩が盛り上がっていたらしいしね……私にはまったくわからなかったけど、そっち方面の知識がある人から見たらわかることだったみたいだ。

 仕事の関係上、こればかりは仕方がないとはいえ、放置し過ぎたようだ。医療班の方々には申し訳ないです……。

 まあ、やってもらったことで、大分と体は軽く感じるようになったけど。それも定期的にしなければ戻るだけだと言われて終わったりもしている。

 揉み返しとかが発生しては問題なので、ある程度のところで終わったよ。その代わり毎日やることが決定されたってだけで。

 それもあんまりしない方がいいんじゃ? とは思ったけど……まあ、揉み返しがないようにはしてくれるのだろう。素人が口に出すべきではないしね。


「あ、そうだ。ついさっき美香さんから和菓子を貰ったの。食べる?」

「食べるわ」


 即答で返してきた沙織に式が一箱渡した。私と式は一つの箱を分け合って食べます。

 ……それでも途中で私と式がギブアップして、食べてもらったけど。本当にどういう体の作りをしているのか謎だ……。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


誤字がありましたら申し訳ありませんが報告お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ