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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
47/82

邂逅

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。


500ユニーク行きました。ありがとうございます。

小話を後書きに書いてみました。

 本拠地と思われる場所の調査を終わらせ、山の外まで出てきた私達だけど、意外にも襲撃には遭わなかった。それは良いことなんだけども、何だか嵐の前の静けさのように感じる。

 紗良ちゃん達も警戒の色が強く、全く安心できない状況であることが窺えた。残念ながら私には他者の気配を読むなんて芸当はできないので、周囲の反応を見るしかありません。


「……おかしいですね」

「そうだな」


 里美さんが口を開けば、三吾さんが同意した。何がおかしいんだろう? と首を傾げていると、気配を読むことができないと思い出したのか、里見さんが説明をしてくれた。

 山から出てきたのは良いけど、何故か入る前に感じていた複数の気配が消えているみたい。今回は隠れた護衛がいないので、どう考えても敵だろうと警戒していたのに、と。

 誰かが排除した可能性もあるけど、それが誰なのかさっぱりです。……本当にどうしてだろ。

 なんて考えつつも、本部に戻ることが最優先なので、私達は歩き続けた。下手に立ち止まって襲撃、というのも嫌だからね。


「本当に何も感じないわねぇ」

「ですが、我々以外に誰か動く者がいましたか?」

「さて……一体何があって離れるしかなくなったのじゃろうな」


 難しい顔をしている水速さん達も異様さしか感じない現状に警戒を強めているようだ。

 ここで穢れの『公爵』とかが出てきたら大変対処に困る。戦闘ができない私がいるので、どうしても動きに制限が掛かってしまう。

 里美さんと速水さんが私の両脇にいる状態からして警戒しているよね……。


「……ん?」


 真っ先に気づいたのは、気配の読めない私だった。

 本部まであと半分、というぐらいの時に何となく気配を感じて咄嗟に後ろを振り返った。

 真後ろに立っていたのが、狐面の穢れ狩りと言われる人物だったことに驚いたけど。

 一応、見た目については教えてもらっていたので、瞬時に誰なのかわかりましたとも。


「え……」


 真っ先に反応し、真後ろに人が立っていることに気づき呆然とした私に他の人達も狐面に気づいたようで、驚いていた。

 全く気配がしなかったらしい。それもそれで凄いことだけど……。

 呆然と見ていることしかできない私に狐面の穢れ狩りはただ立っているだけだった。異様な光景が展開されている状態です。


「……事情が変わった。お前はまだ思い出さない方がいい。『信仰会』が危険過ぎる」

「えっと……貴女は誰ですか?」


 体型から女性であることはわかるので、聞けば、狐面の穢れ狩りは少しだけ肩を竦め、狐のお面に手を持って行き、お面を取った。


「ごめん。お前は覚えてないんだったね。私はお前が記憶を有している時に離れさせた戦闘の知識と記憶だけを持った存在だ。いずれお前に帰る存在でもある」


 お面の下から私と全く同じ顔を持ちながらも無表情で立つ私が居た。

 あまりの状況に絶句する私に、少女は至近距離まで来ると、抱き締めてきた。


「お前は優し過ぎる。だから、今思い出せば確実に心が壊れる。私はそこまで覚えていないから問題ないが、お前はそうじゃない。部分的に思い出すだけにまだ留めておいてくれ」

「……月夜の記憶の一部を持つ者、という扱いでいいのかしら」


 黙っていることしかできない私に代わってという感じではないものの、レティが少女に聞けば、少女は頷いた。


「ただ、申し訳ないけど、私は本当に極一部の記憶しか有していない。……この子が戦うことができなくなったことは知っているが」

「戦うことができなくなった? どういうこと?」

「さあ? でもまあ……親が関係しているというのは朧気にわかっているかな。どうしてそうなったかまでは覚えてないんだ」

「なるほど。本当に一部しか覚えていないのね。どうやって分かれているのかしら」

「私は式。この子の髪を使って作られているから、この子の霊力を介して術を使うことができる」


 すんなりと答えた少女にレティは目を細めてから納得するように頷いた。


「なるほど。式だったから、桜桃軍に入ることをしなかったのね」

「うん。でも今は主が危ない」

「どういうこと?」

「この調子で記憶を思い出せば、『信仰会』に攫われた時にこの子が暴走する」


 はっきりと告げられて私は思考が停止した。断言できるほどということに驚いたのだ。どこかでそうはならないかもしれないと思っていたというのもある。

 楽観視していたのだろう。式だという彼女に言われて初めてきちんと記憶を思い出すことが現状でどれほど危険かを認識できたとも言う。

 危機感を抱くのが遅過ぎると自身でも思うけど、『信仰会』に対しては危機感を抱いていた。単純に自身の記憶に対する危機感がなかった。

 どこかで別事情だと思ってたんだと思う。普通は繋がっているとは思わないかもしれないが。


「どういうことですか」

「私もそこはわからないけど、ただ何となくそうなると思うんだ。確証とか証拠がなくて申し訳ないけど」


 申し訳なさそうに言う少女だが、表情は相変わらず無表情だ。ただ、水速さん曰く、ここまで流暢に喋ることができる式は相当の実力がないとできないらしい。


「髪には特別力が宿るとされているから、効果は特に強く発動させることができるけど、その代わりとして制御が難しいんだ。ここまで力が籠もっていながら、破綻が一切ないのは凄いよ」

「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいよ」


 褒め言葉を口にした水速さんに式(本人からそう呼ぶように言われた)は本当に嬉しそうな声音で言った。表情こそ変わらないものの、声の感情は結構豊かだ。

 今も主が褒められて嬉しかったのだとわかる声音だったし。


「主が好きなんだね」

「うん。好きだからこそ、私は主が傷付くことを望まない」


 恥ずかしがることなく言い切った式に微妙な顔になる。残念ながら今の私は記憶を失っている状態なので、ここまで式が自慢の主、という感じで語るのがよくわからない。

 というか、ずっと式に抱きしめられているんだけど。どうすればいいんだろう……。

 ちょっと困ってはいるものの、特別迷惑というわけでもないので大人しくはしておく。拒む理由もないしね。

 その間も幼子のように私を自慢する式に紗良ちゃん達は苦笑していました。ここまで感情豊かな式もなかなか居なかろう。多分。


  ――――――――――


「すまないね。主のことを語るなんて今までできなかったからつい暴走してしまったよ」


 十分ほど私について語りながら歩いた式に全員が苦笑で返した。確かに今まで個人で行動するしかなかったのだから、仕方がないのかもしれないけどさ……。

 それにしたって主に対する褒め言葉を良くぞあそこまで出すことができたよね、と言いたくなるほど続けられるとどう反応すれば良いのかわからないよ。

 式は結構素直に紗良ちゃん達の「桜桃軍に来て欲しい」というお願いを聞いた。ただし、主が傍に居る以上は主の護衛が最優先になるので、任務はできないと先に告げられてしまっていたけど。

 そこは美奈子さんが決めることらしいから、滞在できるかどうかは美奈子さん次第とのこと。ただまあ、事情が事情なので、滞在は許してもらえるだろうと里見さんは言っていた。


「貴女が……本当に精巧ねぇ」

「私の主だからね」

「本当に主が好きねぇ。……月夜お嬢さんの護衛が最優先になってしまうのは式として当たり前のことだというのは何となくわかるから、構わないわぁ」


 美奈子さんのいる部屋に行き、美奈子さんは式と相対したんだけど、結構あっさりと許可が下りた。拒否する理由がないし、常に私の傍にいることができる人物? だという点が許可が出た理由らしい。

 確かに沙織でさえ常に、というのは無理だ。沙織は沙織で任務があるし、十二天将の皆さんだって同じく。そういう意味では何があっても私の護衛を最優先にする式は良いのかもしれない。

 こうしてずっと謎だった狐面の穢れ狩りがあっさりと正体を明かして、私の護衛として桜桃軍内で認識されることとなりました。ちゃんと式という存在なのだという説明もされたらしい。


「この子がねぇ……本当に月夜そっくりじゃない」

「記憶を失う前の私がしたことみたいだから、私にはあまり実感がないんだけどね……」

「でしょうね。あ、私は沙織。月夜とは友人関係よ」

「私のことは式と呼んでもらえると有難い。主はどうしても立場上友人が出来なかったから、出来たというのなら嬉しいよ」

「……口調が違和感凄いわね」

「でも一緒だと本当に見分けが表情しかなくなるだろう?」

「確かに」


 式に正論で返されて、沙織は神妙な顔で頷いた。そっくりであるからこその弊害です。本当にお揃いの服とか着ていると、表情でしか判別がつかなくなってしまうんですよ。

 おかげで知り合いの桜桃軍所属者さん達に何度か確認された。

 一応は式は霊力によって肉体を作り出しているとも言えるので、ちゃんと探りさえすれば、式が霊力しかないというのはわかるらしい。ただまあ一般所属者は常に式に集中していないといけない状態になるので、無理な話です。

 体調が悪そうだったのは、私が記憶を思い出す切っ掛けを得た影響により、感情の波が彼女にまで届いていたせいだそう。物凄く納得した。

 私の方が安定していないと、式も結構影響を受けてしまうんだって。髪を媒介にしているからこそ起きる問題だと水速さんは言っていた。

 ちなみに、水速さんはあれから沙織と仲良くなった。水速さんも沙織に負けず劣らずの甘党だったんだよ。……十二天将の皆さんが来た日のジャンボパフェをまさか二つも作らされるとは思わなかった。

 式も手伝ってくれたけど、やり慣れていないから、あんまり戦力になれず、「早急に覚えるよ」と嘆いていた。生クリームを作るのだけ上手くなったよ。

 かなり苦労して作ったジャンボパフェが消えていく様は恐ろしかったな……。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


 ~小話~

『過剰戦力襲来』からジャンボパフェが再び登場したのでそのことを少し書こうと思います。


 あれ、月夜は沙織以外の甘党を知らないから「生クリーム作るのが大変だった……」程度で終わっていますが、実際は甘党でもドン引きするかもしれない代物です。

 何せ本来であれば甘さを軽減させるとか色々な理由があるであろう中間にあるコーンフレークがありません。生クリームで階層を分けています。

 一番下がイチゴジャム、次がオレンジジャム、その次が胃もたれしないようにという配慮でヨーグルト(ただし、沙織の希望により砂糖を大量に入れられている)で、一番上は蜂蜜です。蜂蜜の上にもたっぷりと生クリームを乗せてあり、飾りはマカロン、申し訳程度のバニラアイスとリンゴ。しかもその上にチョコレートが大量に掛けられています。


 これを想像しながら書いたのですが、物凄く吐き気がしました。現実で食べることが出来る人、いるんですかね。

 量も甘さも振り切り過ぎて味が絶対に合わないだろう組み合わせになっているパフェなわけですが、月夜は甘党の人はこれが普通だと思っています。

 一応の弁解としては、月夜は甘党の人に対する認識が狂っているだけで、そうでない人には普通のを出します。逆に言えば彼女の前で「私、甘党なんだよね。だから甘さ増し増しで!」なんて発言をしたらもれなくほぼ全てが砂糖増量のお菓子が出てきます。

 沙織に関しては、料理でも甘さを求めます。彼女はパスタに砂糖と蜂蜜を掛け、カレーに練乳をかけるような少女です。辛いのも苦いのも全般が駄目なのです。

 なのに見た目は大人びた少女であるがゆえに外ではあまり甘い物が好きだとは言えません。こちらは自身がどれほど狂った甘党であるのか自覚していますからね。

 周囲の認識に合わせようとカレーも辛口を選ぶぐらいです。ただし、月夜が甘口を選んでこっそり沙織と交換するということが大半です。それでも沙織にとっては辛いのですが。

 十二天将に関しても、書いてはいませんが、パフェを見た時点でドン引きしてます。用意したのが月夜で、しかも沙織が二分以内に完食したので、一部が現実逃避しました。

『天空』と『貴人』は何とか持ち直すことができたのですが、後の面子は内心、「あれを食べ切った……?」「え、糖尿病まっしぐらの見た目のパフェを二分……?」「というか、月夜はなんであれを用意して普通にしてるんだ? 常にああなのか?」という感じで混乱してました。

『太裳』が話題を変えたのも、あれ以上パフェのことを思い出したくなかったのと、月夜の体調を確認したかったという感じです。現実逃避と心配ですね。


 さて、こんな感じの裏事情があった『過剰戦力襲来』ですが、皆様はどのようなパフェを想像していていましたか? 一応、コーンフレークについて触れなかったのも理由はあったのですよ。本当はフルーツも触れないつもりでした。

 まさか、小話を書こうと思っていたところで500ユニークを達成するとは思わず、混乱していますが、今後も『穢れ狩り』を宜しくお願いします。

 それでは、小話と言いながら長くなってしまいましたが、これで終わらせていただきます。最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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