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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
46/82

再び

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

 レティより提案された、私が見つけた神社に行くという話は結構早くに実現した。どのタイミングで行ったとしても『信仰会』と鉢合わせる可能性が高いだろうから、と。

 完全に戦闘する気満々です。もう少し紗良ちゃん達は殺気を収めてほしい。

 だが、意外にも一番殺気を放っている人物は別だった。


「……あの方が?」

「そうよ。水速慧(みはやさとし)という名前で、昔で言うところの陰陽師ね」

「陰陽師? それって呪文を使う方でしたよね……?」

「ええ。でも彼は陰陽師とは名ばかりの人物で、どちらかと言えば神に祈りを捧げる者、という感じよ」


 レティの紹介で私は首を傾げた。ならなんで陰陽師を名乗っているんだろう、と思ったからだ。

 陰陽道を使う人、という認識しか現在はされていない(これも相当凄いことで、一般的には陰陽師と言われてもわからない)し、神に祈りを捧げるような人は巫女などが多いという印象だ。

 そう思っているのがわかったのか、紹介された男性は苦笑しながら教えてくれた。どうやら殺気は私達に向けたものではなかったらしい。


「最初は陰陽道を習っていたんだが、私はどうも札などに力を籠めるのは得意でも、呪文の方は不得意でね……神に祈りを捧げる者としての方が素養があったんだよ」

「適性のようなものがあるのですね」

「ああ。とは言っても、私のように極端に出る者は滅多にいないけどね。普通は海外の術をこの国の術を習っている者は苦手とする、程度のものだ」

「はへぇ……」


 いまいちよくはわかっていないけど、一応は納得すれば、現在どれだけそういった知識が失われているのか知っている水速さんは苦笑しながら頭を撫でてきた。

 理解出来なくともおかしくない、と言いたかったみたい。


「こいつは言霊が強過ぎるのよ。だから、わざわざ呪文を言う必要性がない。月夜と同じでね」

「私と?」

「貴女が危険を感じた時に咄嗟に『来るな』とか言ったら確実に相手は来れないわ。神と接するようなことが多い者はそういうことが多いらしいわ」


 誰からか聞いたらしい話をされて私は納得した。言霊によって呪文を省略できてしまうところは凄いと思うのだが、水速さんはそう思わなかったみたい。

 昔から伝わってきた術を自身で改変することが物凄く申し訳なくて、最初は陰陽術は殆ど使ってなかったらしい。精々が札を作る程度だったとか。

 でも仲間から「昔から伝わってきたものが一番いい、なんてことはないからな」と言われて、水速さんはようやく省略した呪文で術を行使するようになったんだって。


「今の時代の術者は全員が自身に合った使い方をしている。私達がいた時代ではあんな穢れは出没したことがあまりなくてね……」

「え、そうなのですか?」

「うん。妖が出てきたとしても、攻撃はあまりしてこなかったし、基本的に穢れは人に憑くものだったからね……私達はそれを祓うだけで良かった」

「つまり、明確に形を持っていなかった?」

「そういうことだね」


 明確に形を持っているだけで、それはかなり強い霊という認識だったそう。なんだか、本当に妖達の怒りを買った、みたいな感じだなぁ……。

 それは水速さんも同意見だったみたいで、無言で頷いていた。

 こんな感じで話をしているけど、そろそろ行かないと困る、ということで、私達は移動を開始した。


「へぇ、見事だね」

「見事?」


 山の麓に着き、山に入る前に水速さんがそう言ってきたので首を傾げる。私はこの山の中に入ると安心できるけど、他の人達は緊張すると言っていたから、それが関係しているのかも?


「自動的に入ることが出来る者を選別する術が山全体に掛けられている。しかも……これは人が張ったものじゃないね。だから『信仰会』という者達も改変できなかったんだろう」

「つまり、神々にとってもここは重要ということよね?」

「そうだろうね。……急いで行こうか」


 気配を感じたらしい水速さんに促されて一歩山の中に入る。それだけで結界の中に入ったみたいで、空気が変わったのが肌で感じることができた。

 ただ……以前に来た時とは違ってかなりピリピリとした空気は感じる。私が入ったことで更にそれが増したような?

 そう思っていると、水速さんが頷いた。


「ここの主である君が入ってきたことで、より警戒度を上げたんだろう。君が害されることをここは許さないだろうからね」

「なるほど……?」


 完全に何かしらの意思が働いているという風な言い方をした水速さんに頷きつつも足を進める。万が一襲撃された場合、即座に反応しなければならないので、紗良ちゃん達も緊張した面持ちだ。

 まだ本拠地に着いていないんだから警戒してて当たり前か……。

 そうこうしている内に、目的地に着き、私は足を踏み入れた。何とか道中は何もなく行けて良かった……帰りがあるから怖いけど。


「立派ですね……」

「長年人がいなかった可能性すらあるのに綺麗ね」


 初めて見るレティ、水速さん、里見さん、三吾さんが目を見開いて辺りを見回している。確かにやたらと神聖さを感じる場所ではあるかも?

 まだ建物内を入ったことはないけど、中も綺麗なのかもしれない。


「ですが、ここはあまり詳しく見て回らない方がいいですね。基本的に主以外は認めない感じがします」

「そうね。月夜だけが特別そう感じてないところからしても、本来は主以外が出入りするのは良くないことなのかもしれないわ」


 里美さんが以前来た紗良ちゃん達と同じことを言い、レティが同意した。それほどに警戒されている気配を感じるみたい。私には全くわからないので、首を傾げることしかできないんだけども。

 以前と同じく綺麗に咲いている桜の木があった。季節は秋だというのに咲いているから、驚きではある……かな?

 ここが不思議な場所であることはわかっているので、別段咲いていても不思議はないかもと思ってしまっているけど、普通はおかしいんだよね……。

 造りは桜の大木を囲むような形で建物がある、という感じだ。なので、割とすぐに桜の木に行くことができる。建物は……どこが入口なのかまだ把握していないのでわからないけど。


「まるで時間が止まっているようだ。かなりの力がここに籠もっている可能性が高いね」


 興味津々で辺りを見回し、観察している水速さんに、私は内心、『この人、研究者気質の人だ』と思った。周囲の反応を見ている感じ、かなりの威圧感を感じているはずなのに、調査を止めようとしないんだもん。むしろ凄い。

 微妙な顔で水速さんを見ていると、レティが溜息を吐きながら首を横に振った。ああなったら本当に周囲の声は聞こえていないし、状況だって気にしないみたい。

 戦力にならなさそう、という感じはしないけど、ちょっと色々と思うところは出てくる人だなぁ。

 ただ、向かった時間がちょっと遅めだったこともあり、そろそろ帰らないといけない時刻になり始めています。

 それはレティもわかっているので、無言で水速さんの下に行き……


「そこまでよ」

「ガッ」


 ……鳩尾に拳を入れた。かなりヤバイ音と共に水速さんの口からも凄い声が聞こえた気がする。


「い、生きてるよね……?」

「ええ、生きているわ。さすがに殺しまではしないわよ」


 いえ、殺す勢いのあれでしたよね? 現在進行形で悶絶どころか、瀕死の重傷になって倒れている気がするのですが、それも気のせいで通すつもりなのでしょうか?

 顔を引き攣らせて水速さんを見れば、レティが無理矢理立たせていた。本当に扱いが酷い。さすがに可哀想だ。


「ほ、本当に大丈夫なのですよね?」

「なんとか……」


 あ、本当に生きてた。でも自力で立てない様子なので、割と本気で鳩尾に入れられたみたいだ。それほどの威力でなければ戻ってこないと悪びれもなく言うレティに微妙な顔になる。

 そうしないと戻ってこないほど集中する水速さんに突っ込めばいいのか、それを知っているとはいえ、だからって容赦なく行ったレティに突っ込めばいいのかわからない……。

 確実に言えることは、どちらも普通ではない、ということですね。咄嗟にでも守ってなかったら死んでる威力だったのに、生きてるんだもん。

 当たる前に咄嗟に防御でもしたんだろうか? それとも元々から多少の結界とかはしてた、とか?

 本当に生身で受け止めた可能性もなくはない。それはそれで怖いけど。


「とりあえず。出る前に気合いを入れなさい。ほぼ確実に襲ってくるでしょうからね」

「容赦なく鳩尾に入れるのは貴女ぐらいですよ……レティシア」

「煩いわよ。あれでも気づかない時があるくせに」

「うっ……」


 言葉を詰まらせた水速さんにこちらは沈黙した。……あの威力で鳩尾に入れられて無反応って怖いんですが。え、本当に生身で受け止めてる?

 昔に存在したそっち系の人って体もかなり鍛えて鋼のようにでもなっているのだろうか……ただただ怖いだけなんだけども……。

 若干私が怯えていると、水速さんは何を勘違いしたのか苦笑した。


「大丈夫ですよ。あの程度では死にません。さすがに術も併用で使われたら死にますが」

「あの威力で殴られて生身の状態で生きている方が怖いです……」


 思わず本音を言えば、水速さんもレティも首を傾げて顔を見合わせていた。どうやらどうして怖いのかわからなかったらしい。思わず紗良ちゃん達を見れば、無言で首を横に振られた。

 さすがに紗良ちゃん達もそこまでの領域には達していないのだろう。できれば一生到達してほしくはない。すでに現状でも人間を辞めているような気がしてならないのにさ。

 内心戦々恐々してながらも、私は本拠地から出た。だってあれ以上突っ込んだたらもっとヤバそうな話が飛び出しそうだったんだもん。それなら話題を切り上げた方がいい。

 そう思いながらも、襲撃が確実に起こるとわかっていても、山の外に向かうしかない現状に溜息を吐くのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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