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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
43/82

勉強

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

 夏休みが終わって、本来ならば私は学校に行かなければいけないんだけど、現在桜桃軍本部にいます。

 というのも、また少し『信仰会』の方に動きがあったらしい。そのため、定期的にあの誰も居ない神社? に行く以外での外出が全面的に禁止になったのだ。

 本部と学園は繋がっているので、学校では登校扱いにはなっているものの、実際は本部で生活しながら勉強を教えてもらっている。

 担任が元なのか現なのかわからないけど、桜桃軍に所属している関係で教えてくれている。

 忙しくないのだろうか? と思ったんだが、どうやら元々担任の先生はこういう風に何か事情を抱えている生徒に勉強を教えるのを担当しているらしい。

 ここ数十年はそんなこともなかったから担任を担当していただけで、私が狙われていることが判明した時点で調整が入ったらしい。

 まあ、あの学校は事情を知っている人が殆どだから、何ら不思議はない、か……クラスの人達も説明されれば納得するだろうし。

 実際あっさりとして、実質担当が変わったにもかかわらず、普通に過ごせているみたい。副担任になっただけだもんねぇ……。


「そうそう。そのとおりよ。月夜さんは覚えるのが早いわねぇ~」

「あ、ありがとうございます……」


 一対一で教えてもらっている私だけど、大体の勉強は入学する前にしていた影響なのか、あまり教えてもらわずとも大体のことは出来た。

 そりゃ、時々は躓くけど、それも時々なんだよねぇ……これも新ちゃんが教員免許を持っていたからなんだけども。

 物凄く教えるのが上手だった。わからないところが出たらわかるまで教えてくれたし。

 改めて考えるととんでもない先生が教えてくれてたよね……絶対に忙しかっただろうに。


「じゃあ、今日はここまでね」

「はい。あの、遅れてるとかないですか……?」

「ふふ、むしろ逆にこちらの方が早いくらいよ。今後はもう少し速度を落としましょうか。『天空』が教えたんでしょう?」

「え? あ、はい」

「あの子が中学で習う範囲を全て一旦教えたって言っていたから、何もおかしいとは思ってないけれど、もう少し手加減してあげればよかったでしょうにね」


 苦笑しながら言われて、首を傾げる。知り合いだったのだろうか? 確かに同じ教員免許を持つ者だけど……。

 困惑していると担任の先生が笑みを浮かべて頭を撫でてきた。

 そういや、先生の苗字は『九十九(つくも)』だったっけ? なかなかに珍しい名前だったから初めて見た時すでに印象的だったのを未だに覚えている。


「九十九先生?」

「あの子とは親戚なのよ。だから教員免許を取る時に私が教えてあげたの」


 そう説明されて納得する。なるほど、それなら親交があるのも納得できる。にしても親戚だったのか……珍しい、とまではいかないけど、少々興味はある。

 恐らくは桜桃軍で一族を成した者達の出なんだろうけど。


「考えていることが顔に出やすいって本当だったのねぇ……あの子とは親子のように接してきたの」

「はへぇ……世間って狭いですねぇ」

「そうねぇ。でも桜桃軍なんてそんなのよくあることじゃない」


 確かにそうだ。すっかり馴染んで? しまっているのであまり感じたことはないけど、一人の所属者と親しくなったらその人と友人関係とかの人が結構出たりするとかよくある。

 その繋がりで更に多くの人と仲良くなるということも多いどころか毎回そうなので、自然と私もそれを当たり前としてしまっていたけど、一般的にはそれはなかなかない光景だろう。

 なんて考えていると、久しぶりにレティが現れた。普段通りの幼女の姿に安堵を覚えるのは前回のことがあるからなんだろうなぁ。


「レティ」

「久しぶり、月夜。……貴女は?」

「この子の所属しているクラスの担任をしている九十九です」


 改まった態度で挨拶をした先生にレティは納得顔で私を見てきた。どうやら遊びに来ただけらしい。それを感じ取った先生も「また明日も来るわね」と言って退室した。

 室内には私とレティの二人だけになり、私は立ち上がってお茶の用意をしようとしたら、影が動いて用意してくれた。相変わらず謎の多い能力だ……。


「ん? 月夜、影を個として認識しているの?」

「え?」


 何とも言えない顔で影を見ていると、レティがそんなことを言い出してきたので、首を傾げる。何だ『個として認識している』って。

 首を傾げたら、無意識だとわかったレティが苦笑を浮かべていた。


「こういった能力というのは所有者が個として見ていた場合、自主性を身に付けることがある。月夜の霊力も相まってその速度が速かったんじゃないかしら」

「それっていけないことなの?」

「いいえ? 貴女が親という形になるから、影は貴女に絶対服従を当たり前としているみたいだし、問題はないわ。むしろ他に渡す時は個を持っていた方が簡単だもの」


 そうなのか……と納得はするが、なかなか凄いことを聞いた気分だ。でもそういう背景があるなら自主的に動く理由にも納得がいく。私の認識と霊力が原因だったのね……。

 霊力は自然の力に近いこともあって、無機物などに命を吹き込むことに向いている力らしい。レティも持っているのは魔力らしいので、霊力持ちから聞いた話なんだと言った。

 まあ、持ってない力をきっちり理解できるはずもないよね……持ってても謎なんだし。


「ふむ……以前よりも綻びが出来ているわね。まあ、準備が出来たからなんでしょうけど」

「桜桃軍本部に来た時点で一度思い出したからかな……」

「それも切っ掛けなんでしょうね。まだ術として効力を持っているから、思い出す切っ掛けは先になりそうだけども」


 レティの言葉に頷く。何となくそれは察していたから特別何かを感じることはない。あれから全くなんの進展もなかったらそりゃ察しが付くよね。

 次はどんな切っ掛けで思い出すかわからないけど、できれば前回の時みたいな思い出し方は嫌だなぁ、と思ってしまう。

 切羽詰まった状況の方が記憶が刺激されるのはわかるんだけどさ……。

 あの後、すぐに倒れちゃったらしいしね。対象が助かったから良かったけど、いくらなんでも事前の報告なしでの術行使は咎められても仕方がない。

 お優しい人達が集まっていて良かったと思ったよねぇ、目覚めた後。


「まだ術を壊さない方が良いってことだよね?」

「そうね。下手に壊すと逆に記憶の喪失に繋がる可能性があるわ。記憶を操る術は全て繊細な操作が必要になってくるから」


 やっぱりそうなのか……と思う。記憶が封じられているとレティが言った際に十二天将が揃って驚いてたもん。どう考えても普通に出来ることじゃないでしょ。

 今では一部の隠れている者達にしか伝えられていない、とかありそう。洗脳とかも可能になりかねないわけだし。

 ……そういえば、『信仰会』の人達は本当に全員が同じ思想で居るんだろうか。酷い話ではあるけど洗脳して、とか偽りの記憶を植え付けて、とかあり得そうじゃない?

 ふと思いついた考えに私は素直に目の前にいる自身よりも長生きの幼女を見た。


「ねぇ、レティ」

「何?」

「信仰会の人達は本当に全員が同じ思想なの?」

「はい?」

「だって、レティでさえ知らない特殊体質持ちが襲撃者の中に居たんでしょ? だったら記憶の操作とかできる人が一人ぐらい居てもおかしくないと思うんだけど……」


 確証がないので、自信なさげに言えば、レティが固まった。ど、どうしたんだろ?

 不安げな表情に思わずなってしまった私に気付いたのか、レティが慌てて戻ってきた。


「……最悪だわ」

「え?」

「誰も月夜と同じことを考えた者はいないのよ。よくよく考えてみればそのとおりね……可能性はあるわ」


 はっきりと言い切られて私は無言になった。もしも本当だった場合……かなり面倒なことになりかねない。

 今の世の中で記憶の操作を解除できる者を探すってかなり無理があるよね? しかも全員が信仰会に所属している可能性すらあるんだし。

 聞いてみたら、レティでも記憶の操作は至難の業らしい。精神操作はできるらしいけど。どう違うのかが私にはわかりません……。


「記憶を操作する術は本当にその通りに記憶を操る術だから、一つでも間違うと今までの記憶を失う可能性すらあるのよ。逆に精神操作はあくまでも記憶は保持したまま、精神を変えるだけだから、記憶を操るよりもそこまで繊細なことはしなくて大丈夫なの」

「そうなると精神操作の方が破りやすいってこと?」

「そうね。本人の元々の考えが生きている状態だから他者からの切っ掛けで簡単に壊れるとか普通にあるわ」


 なるほどー。でも信仰会ほどの過激な思想にしようと思ったら精神操作では無理らしい。それこそ数十年ずっと術を掛けてゆっくりとでなければ無理だと言い切られた。

 そりゃ、レティが愕然とするよね……本当だった場合、残った一族がやっている可能性すらあるんだから。何を思ってやっているのかがまだ判明していない以上は憶測でしかないけど。

 明らかに過去の排除から逃れた一族の出である私が記憶を封じる術を自身にかけた可能性があるんだから、そりゃあ、昔から続く一族の人が在籍している可能性が高いと思う。


「すぐにでも美奈子さん達に伝えるべきだよね」

「ええ。今日は誰か本部にいるというのは知っているのかしら? すぐに誰か来るとかある?」

「今日は十二天将上位三名と運営をしている美奈子さんと里見さんの五人だよ。この後……五郎さんが研究関連の話であと五分後ぐらいに来る予定」

「ならその予定は変えさせてもらっていいかしら」


 聞いてきたレティに一も二もなく頷く。本当にそのとおりだったら大問題なんだから、そりゃ拒否はありませんとも。

 そう考えて私とレティは揃って五郎さんが来るのを待つのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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