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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
42/82

図書館

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

「え、図書館に?」


 沙織がスイーツ関連のことになると常識を忘れちゃう困ったちゃんであることが紗良ちゃんにバレた翌日。

 私の訓練担当から外された五郎さんと刺繍関連で親しくなった美香さんの二人が来た。

 付き合いが短いので何とも言えないけど、この二人が揃って顔を見せるというのも珍しい……と思っていたら、五郎さんから「図書館に行く許可を貰っておいた」と言われた。

 美香さんは刺繍糸の在庫を確認してくれてます。消費が早いから定期的に見に来てくれてるんだけど、ちょうどタイミングが五郎さんと被ったようだ。

 一応、私が刺繍をすることに関して、お金は紗良ちゃんとかが出してくれている。研究に使うことの方が増えていることもあって、五郎さんが特に出してくれているよ。

 研究班の経費で出せる額ではあるみたいだけど、五郎さんが特に気になっていることもあって、個人的に出してくれている。他の研究にもお金は必要だしね。

 だから遠慮せず大量に使え、と紗良ちゃんや美香さんからは言われたけど、さすがに申し訳ないので研究の方が入ってからは趣味での刺繍はあまりしていない。

 これを見兼ねて紗良ちゃんとかが出してくれるようになったんだけどね……本当に申し訳ないです……。


「うむ。正式に所属しているわけではないが、個人として調べて知ることも必要だと言われてな」

「ああ……」


 五郎さんの言葉に微妙な顔になった私に確認を終えた美香さんが肩に手を置いてきた。同情してくれているらしい。

 美奈子さん達は物凄く危惧したんだろう。……私が十二天将の常識で教えられ続けられていることに。

 紗良ちゃんも五郎さんも一般的な訓練ではなかったから、それならいっそ、知識だけでも、と考えたんだろうなぁ……。

 後は霊力の制御が以前よりも出来るようになったことで許された、とか理由があるみたいだけど。

 制御が甘いと無意識に術として発動させてしまう可能性もあるんだって。とはいえ、特殊体質としてそういうのを持っていなければ、まずそんなことにはならないそう。

 ……私は刺繍に術を籠めるという点から一旦保留にされてたな。

 美香さんも五郎さんも一言もそういうことを言わないけど、絶対にそうだ。特殊体質だろうと言われていることもあって、余計に保留一択だったんだろう。


「もしも気になる術などあれば刺繍してみると良い。お前さんの知らない術も多いだろうしな」


 そう言われて、私は早速図書館に行くことにした。研究班のある場所とかに近いどころか隣だったので、場所は迷わずに今後も行けそうだ、と考えながら入る。

 棟一つ丸ごとが図書館になっていて、蔵書数も中々のものなんだそう。沙織が任務に出ている関係で暇だという紗良ちゃんが一緒に居るからそういうことも教えてもらってます。

 紗良ちゃん、五郎さん、三吾さんの三人は桜桃軍の中でも上位三位に入る実力者なので、緊急事態に即座に対応できるようにするために本部で待機が殆どなんだって。

 三吾さんは『青龍』で、第三位だから、三人の中では任務で出ることの多い人らしいけど。

 普段は道場で剣術を教えているということもあり、桜桃軍でも師範的な感じで教官をしているんだって。それは『白虎』の竜馬さんと一緒だなぁ。

 あの人も確か普段は武闘家だったはず。大きな体躯と厳つい見た目からは想像もできないほどの朗らかな器の大きい人なんだけどねぇ……見た目で大泣きされることも多いとは言ってたが。

 成人男性でも肝が冷えると称するような厳つい見た目をしているだけに、幼子は確実に泣き出してしまうんだと、前に苦笑しながら言われた。私も最初は怯えたので人のこと言えないけどさ。


「あそこら辺が術に関する図鑑などがある場所じゃ。刺繍にするならば、図鑑などの絵があるものの方が良かろう?」

「そうですね……」


 案内してもらいながら図書館内を軽く回った後に最後に図鑑が集まる場所に来た。

 普通の図書館とは違い、通常の分け方に加えて術に関することも細かく分けられているそうで、図書館は見た目には棟一つに見えたけど、中は完全に二つの棟という感じだった。

 一つが通常の図書館と同じ分け方がされている方で、もう片方が術関連のことばかりが収められている図書館、という風に分けているらしい。じゃないと探す時に不便なんだって。

 確かに術関連の書物が置かれた方もかなりの本が置かれていた。そう考えると通常の図書館だとほぼ一纏めにして置くしかないので、探すのが困難になる。

 棟の大きさが同じなんだから、ほぼ確実に探すことを諦めるほどの状態になっているだろう。

 納得の分け方に頷きつつも紗良ちゃんに案内された術に関することが書かれている図鑑を見て回る。直感的に気になった本を抜き取っては中を見て借りようと思ったものは戻さずに持っておく。


「利用者は結構いるんですか?」

「まあ、毎日百人は利用する程度にはいるのぅ。隣に研究班があるじゃろう? あそこが特に利用するのじゃ。一般の本でも役に立つことは多いからの」

「なるほど」


 確かにそれなら研究班の棟の近くに建てられているのもわかる。利用者が最も多いところの近くにあった方が行き来は楽だもんね。

 なんだったら図書館と研究班の棟は通路で繋がっているらしい。私が知らなかったのは一直線に実験室に行っていたからだろう。端っこにあるらしいし。

 ちなみに図書館は重要度の高い物ほど下に置かれており、地下は許可されなければ入ることができず、許可なしで入ることができるのは十二天将や図書館の経営を担当している所属者だけとなっているとのこと。

 物によってはそれこそかなり貴重な物もあるらしいから、制限が掛かっているのも当然のことだよね、と思ったけど。

 こんな感じで紗良ちゃんの案内と図書館についての説明を聞きながら図鑑のところを見て回り、大体五冊ぐらい私の手元に残った。

 他のところも見て回りたいけど、冊数的にもこれ以上は無理だ。借りられるのは一人五十冊まで、とのことだったけど、さすがにそんなに私は持てない。

 ここも普通の図書館とは違うけど、隣に研究班があることもあって、研究に使う場合は冊数が増えることからこうなっているんだって。一々返して新しいのを借りるというのも手間だしね。

 貸出期間も半年ぐらいと長くって、本当に研究班の人達基本で考えられているのだな、と思った。

 図書館の経営を担当している所属者さん達はみんな、司書の資格を取っていて、機密を言わないように術で制約を行っているらしい。地下のことがあるので、みんな納得してやっているそうだよ。


「ふむ……結構、気になる本があったようじゃな」

「こうして見て回る、というのもあまりありませんでしたからね……」


 神楽家にいる時でさえ学校に行く時以外は事前報告必須だった上に沙織や神楽家の人達が傍に居ないと外出禁止状態だったため、図書館にもそれほど多くは行けていない。

 読書は好きなので、学校の図書館ならば何度も足を運んだことがあるけど、その時でさえ沙織同伴だ。学校内でも完全に安全とは言い難いので、どうしてもそうなってしまう。

 沙織も読書は好きな方なので問題なかったけど、これが嫌いとかだったら申し訳なかったな……と常々思っていたのだ。

 まあ、沙織は菓子本を読みたいだけなんだけどね。……どこまでもブレないのが沙織です。

 私は絵本とか図鑑とか読んでいると思ったら、突然分厚い本とか読み始めたりするという、不思議な子です。単純に興味が湧いた本を読んでいるだけなんだけどさ。


「ああ……月夜は護衛同伴でなければそもそも外には出られんかったからのぅ……今もじゃが」

「神楽家で過ごしていた時が当たり前となってしまいましたからね……今はもっと一人では出歩けない状態になりましたけど」

「そうじゃのぅ……桜桃軍本部内でさえ護衛なしは怖いと言われておるぐらいじゃ。窮屈な生活ですまんの」


 謝罪してきた紗良ちゃんに首を横に振る。何もなければそれで良いのだが、現状はそうも言えない。護衛が傍にいることでみんなが安心して過ごせるのならばそれでいいと思う。

 今までの生活が当たり前となってしまっているので、本当に私も窮屈だ、なんて思ってないしね。そりゃ保護された最初は過保護過ぎる、とか窮屈だ、とかは感じてたけども。

 護衛という感じがないわけではない。ただ単純にその護衛をしてくれている人達と親しくなった結果、窮屈にあまり感じなくなってしまった、というだけだろう。

 これが全く知らない人に護衛をされていたら、初期と同じく窮屈に感じるだろうし、何より居心地が悪い。

 特殊体質の関係なのか、周囲の感情に敏感なのだ、私は。霊力などを敏感に感じるからこそ、感情にも敏感になっている……のかもしれない。

 こればっかりは霊力の制御次第でどうなるということはないため、慣れるしかないとのこと。生まれた時から無意識に付き合い続けてきた体質なので、もう慣れているとは思うけどね……。


「現状を思えば護衛なしで歩いて周囲の不安を煽るようなことはしたくないですよ」

「まあ……そうじゃな」


 明確に狙われているというのがわかっているのに、護衛なしで歩かせる奴がいるわけがない。私でも理解できるんだから、そりゃあ周囲はもっと護衛の重要性を感じていることだろう。

 形だけでも居てくれた方が安心できるなら私は構わないかな。知り合いが護衛をしてくれているしね。


「さてと、それではその本を借りるとするかの。まだ月夜のは作っておらんから私ので借りることになるがの」

「お願いします」


 まだ部外者、という扱いなので、そう簡単には作れないということで、常に護衛がいることもあって、その護衛の人が借りてくれることに決まっているのでお願いする。

 地上にあるのでも貴重な本とかがあるので、そういう感じになったんだよね。

 貸出カウンターに行くと、何人かが居て、私と紗良ちゃんを見て、微笑んできた。

 どうやら先に私のことを聞かされていたらしい。偶々、入ってきた時は誰も居なかったので、素通りすることになったけど。


「この子が月夜じゃ。覚えておいてやってほしい。まあ、護衛なしでは来ないじゃろうがの」

「わかりました、『勾陳』様。月夜さん、初めまして」

「初めまして。神楽月夜です」


 こんな感じで挨拶を交わしてから紗良ちゃんが本を借り、私達は図書館を出た。どの人も優しくって、帰り際には「また来てね」と言ってくれました。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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