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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
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始まり

暇潰しにお読みいただけると幸いです。

 いつからか、穢れという存在が出始めるようになった。

 穢れというのは、人に仇なす妖などの総称で、一説では、人がその存在を忘れたが故に存在証明をするため、強くなって現れるようになってしまったのではないだろうかと言われているが、真相は誰にも分からない。

 問題は、穢れが只人にも視えるようになってしまったことだ。

 只人にも視えるようになったと言っても、人によってはまったく視えないということもある。

 どういうことかと言うと、千人に一人が視える程度だったのが、十人に一人が視えるという風に、数が急激に増えた。

 そうなるとどうなるかというと当たり前だが、人の生活に影響を及ぼすようになった。

 一度、穢れに憑りつかれてしまえば、もはや人として存在することはできなくなってしまうのだから、影響が出て当然だ。

 その人たちは表向きは神隠しとして、行方不明になってしまう。

 そんな形で家族を失ったりした者は、穢れを狩ろうとするようになった。

 それが、穢れ狩りの始まりで、表舞台には出てこないが、その数は多い。

 穢れ狩りの組織もあるが、全ての穢れ狩りが所属しているわけではないというのもまた事実だった。

 ある事情から組織に属することができない場合もある。

 その事情は人によって様々だが、その事情を知ることができるのは話を聞いた場合のみ。

 中には姿は見せども、話すことはない者もいる。

 とは言っても、現在ではほとんどの穢れ狩りがその組織に所属し、活動している。

 その方が安全を保障されるからという理由もあるが、個人個人の確認がしやすいのだ。

 しかし、世の中にはそれでも所属せずに穢れ狩りをしている者もいる――――







「こんなの…聞いてない…」


 愕然とした顔で見る先には確かに先程までは()()()()()()の穢れだ。

 急に絶叫を上げたと思ったら、次の瞬間には、穢れになった。

 その強さは一番下の『二等兵』では倒せない程度だった。

 強さは『子爵』相当だろう。

 一番下の『男爵』でも、一番下の『二等兵』は普通は太刀打ちできないことから、後処理を任されるほどなのに、『子爵』なんかに遭ったら、すぐに殺されてしまう。

 そんな絶望に思考が埋め尽くされてしまい、穢れの攻撃も避けることができず、咄嗟に目を瞑ることしかできなかった。


「ぎ、ぎぃぃぃあぁぁぁぁ!!」


 何かが燃える音と、穢れの絶叫に何が起こったのかと慌てて目を開けると、穢れが燃えていた。

 灰も残らずに燃えた穢れに全員が顔を見合わせた。

 そこでふと、誰かが立っていることに気付いた。

 全員が戦闘態勢になるが、狐面をつけたその人物は、彼らの事を一瞥しただけで、どこかに去ってしまった。

 呆然とする彼らだったが、すぐに本部に狐面(きつねめん)の穢れ狩りが現れたことを伝えるために、駆けていった。







「狐面の穢れ狩り?」


 長兄が話してくれたことに私は目を瞬いた。

 今年で中学二年生になったんだけど、神楽(かぐら)家では珍しく、穢れ狩りをしていない私は、長兄たちからこうして、話を聞く以外に手段がない。


「そ、狐のお面をしてて、巫女風の服装に、フード付きの羽織で体を隠してるんだってさ!」


 そう言いながら興奮しているのを微塵も隠しもしないのは、長兄の(れん)兄さん。

 蓮兄さんは、好奇心が強くって、大きい子どもみたいなんだよね。

 けど、実力はあって、穢れ狩りの組織である桜桃軍(おうとうぐん)の十二天将の一人。

 桜桃軍には、階級があって、十二天将は階級『大将』の中から選ばれた、桜桃軍最高戦力。

 十二天将の中にも強さの序列が存在するけど、最下位でも『大将』の人たちを圧倒するほどの実力を持っている。

 それぐらい凄い存在ではあるんだけど、神楽家にはそんな存在が現在、三名もいる。

朱雀(すざく)』、『天后(てんこう)』、『六合(りくごう)』の三人で、『朱雀』が、今、目の前で目を輝かせながら話をしてくれている蓮兄さん。

 実力は確かなんだけど、性格が少年って感じだから、あんまり凄さが伝わってこないとは常々思ってる。


「蓮、月夜(つきよ)が困ってるから、あまり近寄らない」

「え~? (りん)は気にならないのかよ!」

「そりゃあ、十二天将と同等の実力者が、桜桃軍に所属せずに、活動している理由は知りたいとは思うけど…」

「だろ!?」


 凜姉さんが蓮兄さんを止めようとしてくれたけど、今回は蓮兄さんが勝ちそうだ。

 いつも、叱られている蓮兄さんだけど、こういう時の兄さんが止まらないことは知っているから、凜姉さんも少し諦めたような顔をしながら、会話に参加してくれた。


「けど、実際、気にはなるよね」


 そこにずっと静かにしていた(みなと)兄さんも加わって、四人での会話になった。


「だよなぁ…。そんだけの実力者なら、桜桃軍ですぐに戦力として動けそうなのにな」

「桜桃軍のことを知らないわけじゃなさそうだって話だし…」

「今のところ、悪い人ではなさそうだけど」

「そこの判断はまだできないわね。湊の言う通り、悪い人物ではなさそうだけど、良い人物だという証拠もないわ」


 そんな言葉に、湊兄さんも頷いた。

 結局、その場では、会ったら、すぐに話すようにと言われて、終わったけど。





 後に穢れ狩りを巻き込んだ大事件に発展するとは、この時の私は微塵も考えていなかった。

 これはある少女を中心に歯車が動いていく、穢れと穢れ狩りとの戦いを描いた物語である――――


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