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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
22/82

三人目

暇潰しに読んでいただけると嬉しいです。

  ――月夜視点――


『大公爵』到来を占で当ててから数日が経ち、私は再び見知らぬ人と相対していた。

 いい加減慣れてきたけども、頻度が高過ぎる気がする。数日おきに来ていないだろうか。


「貴女が例の子ね?」

「例……」

「私達の間では有名なのよ。きちんと継承できる子じゃなければ難しかっただけにね」


 そう微笑んで言ってくる優しげなお姉さんに困惑で返す。そう言われても私には何を基準にしているのかが判らないからどう反応すれば良いのかが判らないんだよね。

 こればっかりは仕方がないのかもしれないけど……。

 昔に比べて圧倒的に技術も知識もないのが今なのだから、そりゃあ、昔を生きた人達の言っている意味が全て理解できるわけがない。

 どれほど研究したところで失われた知識や技術が戻ってくることはないからね。

 今を生きる者達の殆どが昔の政府を恨んでいるというのも頷ける話だ。損失がどれほどになっているかを考えれば当然のこととも言える。


「私は影使いの愛香。狭間に生きることを決めた者達の中でも一番の若輩者よ」

「影……使い?」


 影を扱う術なんて昔にはあったのか、と驚く私に愛香さんは頷いた。

 というかこの人が一番若いって……他はどれほどの年齢なのだろうか。

 内心戦慄していると、愛香さんは口を開いて説明をしてくれた。

 曰く、影使いとは、そのまま影を操る者達のことを指し、昔でも特殊と言われる術者達なんだそう。

 基本的に一族の血によって継承されてきた一族特有の力なんだそうだけど、実際はそうではなく、自分達の持つ力を他者に譲ることで継承していくことが可能だったらしい。

 しかし途中で一族内で独占しようと考える者達が現れ、それによってだんだんと一族だけの力になっていった。他の者達に継承していれば滅亡は避けられたと悔しげに言っているので、後悔しているみたいだ。

 なんでも他者に継承すれば、必然的にその者の子供は影使いの素質を持って生まれるんだって。どうしてなのかは未だに判らないのだとか。

 で、完全な滅亡を避けるために愛香さんが当時生き残っていた全ての一族から影を継承され、こうして時代を移動しながら継承できる人物を探していた、と。


「影使いの力は強力だから、それで欲しいと思い近づく者達も居たとはいえ、独占すべきではなかったのよ。年々人が少なくなっていたんだから」

「特別な力だからこそ独占したくなった……という感じですか?」

「そうよ。まったく馬鹿馬鹿しい。それで滅亡したら目も当てられないじゃない」


 忌々しそうに言う愛香さんに何とも言えない顔になりつつも納得する。うん、確かに同じ一族としては滅亡だけはどうしても避けたいと感じるよね。

 色々と昔も大変なことが多かったんだなぁ。


「それで、愛香さんはどうして私に会いに来たのですか?」

「私の影を貴女に継承して欲しいの」


 本題を聞けば、はっきりと言われて、何となく察してはいたとはいえ、微妙な顔になった。

 私にそれが扱いきれるのだろうか。影をどれほど使いこなせるかは本人の想像力にかかっていると言われただけに物凄く不安だ。

 内心そんなことを考えていると、少し不安そうな顔になっていたのか、愛香さんに頭を撫でられた。


「心配しないで。私も最初は不安で仕方がなかったし」

「え?」

「いくら生まれつきとはいえ、影を操ることができるかどうかは私達も想像力次第なのよ。本当困った能力でしょう? これ」


 自分の影を動かしながら指差して言う愛香さんに頷く。確かにあまりにも使い勝手が悪く感じる能力だ。想像が全てなんて。

 そうなった理由が何かしらあるとしても、あまりにも依存し過ぎじゃなかろうか。


「私も最初は『影が動くってどういうこと!?』って思ったわ。だけど、実際に動かしてみて判った。……これは『そういうもの』なんだって」

「直感で理解した、と」

「そうよ。理論的には解明できないでしょうねぇ。そういうものなんだから」


 だから心配するな、と言う愛香さんに微妙な顔をしつつも頷く。上手く説明ができないからそう言うしかなかったというのは判るんだけど、それにしても曖昧過ぎる。

 そんなことを言い出したら霊力によって行使される術も曖昧なので、これが普通なのかもしれない。

 魔法とかも結局最後に物を言うのは想像力だ、と言われているらしいしね……。

 超常的な力だからこそ、想像で補わなければいけない状態となっているのかも?


「……判りました」

「ありがとうね。正直どうしようかと思ったわぁ。私は他の人達みたく寿命がないとか長いとかないんだもの。見つからずに死亡なんて笑えないから見つかって良かった」


 朗らかに笑う愛香さんに苦笑しつつも右手を出して欲しいと言われたので素直に出す。

 一瞬だけ冷たく大きな何かが動くような感覚がして、直感的に私に移ったのだと理解した。

 愛香さんが動かしていたみたいに想像すれば、自然と影が動き、愛香さんの言っていたことが判った。

 ああ、うん。これは上手く言葉にできないわ。気づいたら動いてるって感じだもん、これ。

 自身の思考回路と影が繋がっていると言うべきなのかな?

 と愛香さんに言ったら、「ああ、確かにそんな感じね」と同意してくれたので、同じ感覚を持っていたみたい。

 完全に自分の想像力に依存しているというのも理解できる状態です。


「うん、完全に移ったみたいね」

「何だか不思議な感覚ですね……」

「でしょー?」


 笑いながら同意している愛香さんに苦笑で返す。こんなことまでできるってやっぱり昔の人達って凄いよね……。

 なんか次々に昔の技術や知識を詰め込まれているから、最終的に自分がどうなるのかが怖いや。

 とりあえず、当面は影で何ができるのか試すことからかな。


「じゃあ、私はそろそろ帰るわ。頑張ってね、月夜ちゃん」

「あ、はい」


 手を振って去った愛香さんにこちらも手を振って見送った。

 きっとまだ寿命ではないのだろう。だから『帰る』。近々亡くなるのならばきっとまた来る的な発言はしないだろうから。

 愛香さんの台詞で何となく察した私は少しだけ嬉しく思いつつも、元の場所に戻っているのを確認してもう一度影を動かしてみた。

 うん、ちゃんと動く。


「宜しくね」


 影に挨拶をして返事が返ってくるとは思わなかったけれど、挨拶をする。案の定無反応でちょっと悲しくなったのは内緒だ。

 この後、色々とやっていくうちに本当に色々とできてしまって顔を引き攣らせる私が居たことは言うまでもない。想像って怖いものだったんだね……。


  ――――――――――


 愛香さんから力を継承し、ある程度したところで私は再び占をするために盤の前に座った。

 特に何か理由があるわけではないけれど、『大公爵』が占で出たあの日から私は毎日穢れに関しての占を行なっている。

 一応で毎日三回しているので、出る時と出ない時は存在するけどね。

 お爺さん曰く、私が使っている盤は、元々の物から変化した物だそうで、本来の方は一日に一回しか占を行なえないという制限があるのだとか。聞いた時はさすがに驚愕した。

 一日に一回しか占えないとか、使い所を間違えたら終わりだと思う。相当な力量のある者じゃないと扱いこなせなかったんじゃないだろうか?

 さすがに私にそこまでの力量があるわけがないので、回数に制限が特にない物で良かったとつくづく思っていたり。


「あら、占の途中だった?」

「凛姉さん。ううん、ちょうど結果が出たところ」


 占をしている最中は私の集中を乱さないためにも入らないということで決まったからか、申し訳なさそうな顔で入ってきた凛姉さんに首を横に振る。

 何を占っていたかは時間を見れば判ったようで、結果の出た盤を見て首を傾げていた。

 この盤、どれだけ知識として学んでも認めた人物以外には読み取れない何らかの術が掛かってるらしくって、私以外には何の変哲もない箱のような物に見えているそう。

 生憎と私は最初から普通に不思議な文字などが書かれている盤として見えていたから、周囲のような見え方が判らないんだけどね……。


「どう?」

「特には出てないよ」


 首を横に振って言えば、凛姉さんも少しだけ安堵した様子で頷いた。

 あれから二度ほど結果として出て報告しているんだけど、二回とも的中したために、桜桃軍としても無視できないものになっているらしい。

 沙織もさすがにこれには微妙な顔をして見てきたけど。

 まあ、ここまで当てられたら怖いよねぇ……私も若干怖く感じてはいるものの、だからと言って占をするのを止めるわけにもいかず、習慣として続けている状態だ。

 蓮兄さん達も凜姉さんのように、占の結果が出たところで部屋に入った場合はその場で聞いてくるしね。結果として出ていればすぐさま知らせるつもりというのがよく判る。


「嫌な結果が出なくって良かったわ」

「うん。……あ、何か用だった?」

「ああ、そう」


 私が何かあったのかと思って本題を促せば、凛姉さんも思い出したように頷いて私を見てきた。

 どうやら本当に何かあったらしい。


「『貴人』が、占ってほしいことがあるって言ってるの」

「美奈子さんが?」

「ええ。最近、桜桃軍所属の穢れ狩りが消息を絶つ事件が起こっていてね。その原因を知りたいんですって」


 凛姉さんの言った内容に納得する。ああ、確かにそんな話があった。

 占でも出てきたので、報告したんだけど……どうやら本当に消息不明になった者達が出てきたらしい。

 あの後のことは一切聞いていなかったから、初めて知ったけど、言えなかったのは、気づくのが遅れたからなんだろうな。

 最近、下の方の階級の穢れ狩りの下にその者達では対処できない階級の穢れが突如現れる状況が出てき始めていたそうで、ゆえに最近は死亡者の数も多く、誰がどうなのかきちんと把握し切るのに時間がかかってしまったそう。

 まあ、万年人手不足であるがゆえの弊害、なんだろう。後は任務に出ている最中は生死と居場所が判る程度になってしまうというのもあるか。


「行方不明者は全員が桜桃軍の穢れ狩りであることもあって、生死が判る機械を身に着けているから、生きていることは判っているのよ」

「でも居場所が判る機械の方が上手く作動していないんだよね」


 新たに入ってきた声に私と凛姉さんが入り口の方に視線を向ける。

 視線の先には予想通り、湊兄さんが居た。


「上手く作動してない?」

「異空間などに引きずり込まれるとそうなってしまうんだよ。だから月夜に占ってもらいたいんだ」


 湊兄さんの説明に納得した。ああ、確かにそんな話を昔に聞いたことがあったな。

 私は身に付けていないから、覚えていなかったけど、それが作動していないなら、自力で見つけ出すのはかなり困難か。

 頭の中で納得し、私はもう一度確認の意味で二人に聞くことにした。

 明確に占うものが決まっている方が正確に結果が出るからだ。


「私は『桜桃軍の行方不明者がどこにいるか』を占えば良いの?」

「ええ、そのとおりよ。ごめんなさいね」


 確認を行なった私に頷きつつも謝罪してきた凛姉さんに首を横に振る。

 少しでも私の占が役に立つのならば、別にそれは構わない。何度も『もっと役に立ちたい』と思ったことがあるからこその想いだ。

 内心そう思いつつも、大きく呼吸をし、盤を見つめて集中した。

 自然と動く手によって盤が動き、次々に私の欲しい情報を教えるために形を変えていく。

 五分ほどして、全ての工程が終わったのを確認し、私は盤に現れた結果を見た。

 その結果を見て、思わず目を見開くこととなったけど。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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