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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
21/82

占の的中と危険の回避

暇潰しに読んでいただけると幸いです。

  ――蓮視点――


「これで最後か」


 最後に残った穢れを倒し、凛と一緒に周囲を見回すが、これといって穢れが現れる気配はなく、一息ようやく吐くことができた。

 凛の方も大丈夫と判断したようで一応の警戒を解いていたけどな。


「やっと終わりかぁ」

「ちょっと。まだ本部に着いてないんだから、完全に気を緩めることだけはしないでよ」

「判ってるって」


 硬いことを言う凜に適当に返しつつも、周囲をもう一度見回していると見知った霊力を感じて凛と顔を見合わせることになった。

 十二天将が……四人? 随分と多いな?


「おお、おった」

「『勾陳』? 何かあったのですか?」

「月夜がの」


『勾陳』の言葉に俺も凜も緊張の走った顔になった。何か月夜の身にあったのかと思ったんだよ。

 だが、続いた言葉はまた別のものだった。


「月夜君が占で『大公爵』が『朱雀』達の所に行くと出たと式で伝えてきたそうです」

「「なっ」」


『玄武』の言葉に驚いた。まさかの『大公爵』到来の予言をしたのかよ、月夜。

 驚く俺達に同意するように四人も頷いていた。やはり信じられない内容だったらしい。


「本当であっても困る。ゆえに我々も来たのだが……どうやら月夜殿の占は合っていたようだな」


 警戒した様子である方向を見る『青龍』に俺達もそちらを見れば、人型をした穢れが一体立っていた。

 ニタニタとした笑い方も気持ち悪いが、謎に煽られる恐怖心に相手が確かに『公爵』だと理解できた。

 穢れは上位の穢れになればなるほど、相対しているだけで恐怖心を煽られる。だからこそ上位の穢れだと判ったんだが……。

 本当に『大公爵』っぽいな、おい。


『おやおや、折角二人だったというのに、増えてしまいましたか』

「貴様、何者じゃ」

『私は公爵の地位を戴く一人。【氷公爵】と呼ばれております。どうぞお見知りおきを』


 あ~、本格的に月夜の占どおりになってるじゃねぇかよ。

『公爵』は何度が出ていることもあって、『大公爵』に位置付けられている存在は粗方知られている。

 その内の一人に『氷公爵』がいるんだよ。本気で当たってると嫌だな、これ。


『ですが……奇襲のつもりでしたのに、どうやって知ったのでしょう?』

「わざわざお主に教える律儀な奴がおると思っておるのか」

『ですよねぇ……ならば、力づくで聞くとしましょう』


 そう言って、突然仕掛けてきた穢れは、見えない何かにぶつかり、俺達の所には来れなかった。

 早速、結界を張ってくれたらしい。


「守りは僕がします。どうぞ、皆さんは攻撃を」

「私は援護に徹するわ」


 即座に役割を決めた二人に頷き、『勾陳』と『青龍』が揃って穢れに向かった。

 片方は鞭、片方は刀を持って戦う姿は異様だが、どっちも怖いんだよなぁ。

 速さも威力も恐ろしいのなんのって……。


「俺と『朱雀』の加勢が必要そうに見えないところが恐ろしいな」

「そうっすね……」


 思わず、同意してしまう俺に『白虎』も顔を引き攣らせながら戦闘を見ていた。

 こんなことを言いながらも、いつでも入れるように準備をしているのだから、やはり実力で十二天将になっただけはあるということなんだろうな。

 俺や凛、『玄武』はまだまだ若輩者で、『白虎』などと比べると十二天将としての経験が乏しい。

 安定感が欲しいと前々から度々言われてはいたんだが……確かにこういった時に『大丈夫だ』と断定して判断を下せるような安定性は俺達にはまだないな。

 だから人が派遣されて来たんだろうが。


「セイッ」


 気合いを入れるための声なのかよく判らない声と共に『勾陳』が最後に残った心臓を破壊し、『氷公爵』は塵となって消え去った。

 穢れを倒すとそうなるんだよ。


「怪我無いか」

「あんたらのおかげでな」

「俺達が必要だったか聞きたくなる程度には何もなかったな」


 もしもこの二人がいなかったら、俺達四人で相手をしていたわけで……まあ、それなりに苦戦するだろうな。

 経験の差ってやっぱりあるもんだよなぁ……。


「怪我人なしは良いことじゃ。ただ見ているだけではなかったのだから、問題はなかろうて」

「己の更なる高みを目指す切っ掛けになるのならば、決して悪いことではあるまい」


 ああ、うん……でも、ちょっと『勾陳』と『青龍』の身のこなしは差があり過ぎて参考にできないわ。

 小柄な見た目からは想像できない力業による破壊と、超絶技巧で刃こぼれさせずに正確に穢れの守りが弱いところを切っていく斬撃は参考にしにくいだろ。

 しいて言うなら、俺と『白虎』は前者寄りだが、それでも『勾陳』ほどの威力を出せる自信は全く無い。

 こう、力業なんだけど、ちゃんと体の動かし方が上手な力業なんだよ。技術のある力業と言えば良いか? 矛盾してるが。

 そういうわけで、どっちも参考にしにくいわけですよ。

 とりあえず……。


「無事を喜んでおこう。事前に判っていなければ、負傷者が出ていた可能性の方が高いのだからな」

「そうですね……」

「はい……」


 凛と『玄武』も微妙な顔をしながら、『白虎』の言葉に頷いていた。

 十二天将上位三名って本当……どこか基準が違うと言うか、規格外だよなぁ……。

 これに月夜がいずれなるかもしれないって怖過ぎるんだが。


  ――――――――――


「お疲れ様。無事なようで良かったわぁ」

「『青龍』と『勾陳』だけで終わってたけどな」

「最初の攻撃を『玄武』が防いだ以外は、碌に参戦できなかったよな」


 無事を喜ぶ『貴人』に微妙な顔をしながら『白虎』と一緒に言うと、『貴人』と『太裳』も容易くその場面が想像できたようで、苦笑していた。

 規格外過ぎて真似もできないもんな……。


「しかし、これで月夜の占が無視できぬものになってしもうたな」

「そうですね。これは近々結界の張り直しも検討に入れなければいけなさそうです」

「『大公爵』が現れたから……ですよね」


 不安げに言う凜に『太裳』ははっきりと頷いて肯定した。


「そうです。彼女の占が知られ、更には正確性が高いとなれば……狙う穢れも出てくる可能性があります。今後はどうなるか判らない以上、今後も当てることがあるならば、先手で守りを強化した方が良いかと」

「朱里お嬢さんの勘といい……神楽家は本当に特殊な子達の集まりになってきたわねぇ」


 しみじみと言ってくる『貴人』に俺と凜は苦笑するしかなかった。いやだって、別に狙って集めてねぇから、どう反応するのが正解か判らないだろ?

 とりあえず、その場は安否確認だけされて、家に帰るように言われた。

 さすがに、俺達も桜桃軍が忙しいことは判っているので反論したんだが……。


「まだ夜ですが……」

「早く帰って月夜お嬢さんを安心させてきなさいな。朱里お嬢さん達にも事情説明をしてあるから、きっとかなり心配しているわよ」


 そう言われてしまった。確かに月夜は特に不安に感じるだろう。直感に従って占を行なった結果、出て来たものらしいし。

 納得しかできない言葉に頷くしかなく、俺と凜は揃って家に帰ることとなった。

 道中で湊とも合流したけどな。


  ――――――――――


  ――月夜視点――

 一応で開けたままの窓から私は祈るように闇に包まれた空を見つめていた。

 大丈夫だと信じていても、不安に感じるのは仕方がないと思う。私はどんな感じなのかを知らないんだもん。

 空を見つめていると、ガチャリ、という玄関の扉が開く音が聞こえて咄嗟に立ち上がり、窓を閉めて一階に下りた。


「月夜! 蓮兄達は……」

「まだ帰ってきてない」

「そっか……」


 事情説明を受けたらしい朱里姉さん達の焦った顔を見て、私も益々不安が掻き立てられた。

 不安のあまり青褪めて泣きそうになっている私に春樹兄さんが気づき、不安そうな顔をしている朱里姉さんの頭を叩いた。


「不安そうな顔をしてやるな。月夜が余計に不安がるだろ」

「あ……ご、ごめん、月夜」

「う、ううん……大丈夫」


 窘めた春樹兄さんの言葉で私の様子に気付いたらしい朱里姉さんがすぐ謝ってくるけど、それよりも不安の方が大きかった。

 万が一があったらどうしよう……と思ってしまったのだ。

 そんな私に春樹兄さんは無言で頭を撫でてきた。


「大丈夫だ。蓮兄達が強いことは月夜だって知ってるだろ」

「うん……」


 靴を脱いで上がった二人に頭を撫でられながら慰められていると、足音が三つ聞こえ、三人新たに家に入ってきた。


「月夜の霊力が漏れてるとは思ったけど……なんかすまんな、随分と心配させたらしい」

「そりゃ、すると思うよ。僕だって聞いた時は肝が冷えた」


 私達の様子に気付いた三人が上がってきて、それぞれに会話をしているのを聞いて安堵した。

 詳しい話を、とリビングに全員が集い、説明を受けたんだけど……。

『勾陳』と『青龍』だけで終わったらしい。蓮兄さんと凛姉さんは「あの人達は本当に規格外」と言っていたから、何かしたみたいだけど。

 それと同時に私の占について話をされた。


「今回は月夜のおかげと言ってもいい。もしも本当に奇襲されていたら、俺と凜は無事じゃ済まなかったわけだからな」

「申し訳ないのだけれども、私も蓮も防御が得意なわけじゃないから……それでも火は退魔の炎に通じるとして問題はないんだけどね」

「でだ、月夜」

「は、はい」


 表情を改めた蓮兄さんに咄嗟に背筋を伸ばして応えれば、笑って頭を撫でられた。

 そんなに変だったのだろうか……。


「今後も直感が働く場合もあるだろう。その時は迷わず占をしてくれ。その結果はどんなものであっても絶対に桜桃軍に今回みたく伝えてほしい」

「当たるか判らないのに?」

「それでも何も言われないよりは良い」

「あと、朱里の勘が働いた時にも余裕があれば占を行なって欲しいの。朱里の勘はアバウト過ぎる時があって、こちらも行動できない場合もあるから」


 凛姉さんの言葉に頷く。確かに朱里姉さんの勘は凄いけど、同時に勘だからこそ、曖昧な感じで終わってしまうこともそれなりにあると以前言われたんだよね。

 私も何度か朱里姉さんが勘を発動させる場面を見てきたけど、言われた内容があまりに曖昧過ぎて判らない場合が結構多かったのをよく覚えている。

 それを解明するのに私の占を使おうということらしい。まあ、それで判るなら桜桃軍としても嬉しい限りだよね。

 ただまあ、同時に危険性も教えられたけど。


「だが、そうして占をする回数が積み重なり、信憑性が上がっていくごとに穢れ側に狙う奴が出る可能性はある」

「近々結界を見直すつもりみたいなのだけれど、それでも完全とは言い難い。だからなるべくで良いから、月夜も気を付けてね」


 蓮兄さんと凛姉さんに言われて、私も頷いた。ちゃんとした術を教えてもらっているわけじゃない私はその中でも結界と治癒の術は詳しく教えられている。

 蓮兄さん達が来るまで持ち堪えられれば万々歳という感じで、最低限の自己防衛として教えられているんだよね。だからこそ、言われているんだけど。

 武器を持とうとすると体が拒絶することから持てない私なりの自己防衛を考えてくれた結果だった。

 それにしても結界を見直すって……それはそれで凄いというか、怖いというか……。

 次はどんな結界になるのか判らないからこその恐怖です。あ、あんまり攻撃性の高い結界になっても怖いと思うの。そうでなくとも、現状も穢れにも人間にも反応する結界なんだしさ。

 完全に不審者対策もされている。……これが新しくなるって考えるととても怖いです。

 できれば人間相手には少しでも良いから優しい結界だと良いなぁ……。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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