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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
14/82

確定した予定

暇潰しに読んでいただけると幸いです。

  ――月夜視点――


 蓮兄さんから十二天将(じゅうにてんしょう)の皆さんが久しぶりに来るという話を聞いた翌日、早速いつ来るのかと、誰が来るのかを聞かされた。

 その中に今まで会ったことのない、『騰蛇』の方も来るということで、驚いたけど、事情を説明されて納得した。

 まさか攻撃的な霊力から私の不安定な精神を攻撃してしまう可能性があったから会うのを禁止されていたとは思わなかったな……何だか、申し訳ないことをしてしまったようにも思う。

 しょんぼりする私に蓮兄さん達は「一応で禁止令を出されていただけだから気にしなくていい」と言ってきた。

 一応であっても禁止令を出されるほどにその人の霊力の波動というのは攻撃的であると同時に、それだけ私の精神が不安定だと判断されていたということ。

 これは否定できない。確かに今の私から見ても不安定過ぎると言いたくなるほどに不安定だったもん。今も完全に、とまでは行かないけど、それでも一般的な範囲には収まっている。

 ただまあ、新しい出会いというのは歓迎すべきことだとも思っているので、素直に喜んでもいる。

 そんな気持ちが雰囲気にも出ていたのか、家に遊びに来た沙織が不思議そうに見てきた。


「何だか、凄く嬉しそうね?」

「十二天将の皆さんが来るんだって。久しぶりだから楽しみなの」


 本気で嬉しそうにする私の言葉に沙織は盛大に顔を引き攣らせていた。

 先ほどとは打って変わって逆に私が不思議そうな顔をすれば、沙織が何とも言えない顔になった。


「身近に十二天将が三人も居たら、そりゃ見慣れるわよね……」

「え?」

「普通、十二天将って他の階級の人達は会わないのよ。任される任務も違いからなんだけど」


 そう言って、沙織は十二天将について、説明をしてくれた。

 曰く、十二天将というのは桜桃軍内でも最強戦力と言っても差し支えない面子のことを指す集団で、元となっているのは、大昔に存在したという安倍晴明(あべのせいめい)という人物が使役した式神から。

 神の名を冠するなど、普通ではないけれど、それほどに規格外な戦力を個人で有しているという意味が込められているんだって。

 そのような理由があるがゆえに、『大将』とですら一線を画す存在となってしまっており、下の階級の者達と一緒に任務というのはまず任されないんだそう。

 霊力の差などから下の階級になるにつれて怯える者も多くなるから、というのも理由の一つだとか。

 事あるごとに会っている私が異常であり、通常は会う、というだけで緊張する者達が大半。

 などなど……懇切丁寧に説明された。

 初めて知ることも多くって普通に驚いていたら、沙織に溜息を吐かれた。


「まあ……月夜の場合、家族として三人も十二天将が居て、しかも後も『大将』と『少将』。これじゃ十二天将がどんな存在なのかいまいち判らないわよねぇ」

「普段の蓮兄さんとかを見ているから……それに気さくな人が多いし」

「基本的に自由人だからね、あの人達」


 十二天将についての話をしていると、いつから話を聞いていたのか判らないけど、湊兄さんが入ってきたので、そちらの方に視線を向ける。

 湊兄さんは苦笑して私達を見ていたよ。


「自由、人……?」

「そう。蓮とかを見て思ったはずだよ。特に『勾陳』とかは蓮と似たり寄ったりだし」

「た、確かに……孫を可愛がるような反応ではあったけど、自由人であることに変わりはなかったかな」


 湊兄さんの指摘に改めて考えてみると確かに、と納得できてしまう部分が大いにあった。

 ……ということは初めて会う『騰蛇』さんも自由人なのかな。

 ふとそんなことを思い一抹の不安を抱えていると、湊兄さんに頭を撫でられた。


「心配しなくても、『騰蛇』はきちんとした人だよ。研究者にしては珍しく理性的な人だし」

「じゃあ、大丈夫だね」

「いや……まず、あの人の霊力量って月夜ほどじゃないにしても、かなりありますよね」

「うん。でも大丈夫だよ。月夜の精神も安定してきたし、そろそろ会うのも良いだろう」


 湊兄さんの言葉に一応は納得することにしたのか、沙織も頷いていた。

 ただまあ、来る面子を教えたら、再び顔を引き攣らせていたけど。

 何かおかしかったのかな? と思いはしたけど、沙織が「何この戦力過多状態……」と言って頭を抱えていたので、やはり戦力的に見るとおかしいみたい。

 元より、十二天将が三人いるというだけで、おかしいという扱いだったから、そこに一時的とはいえ、更に増えると考えると……どこかに戦争に行くんですと言われた方が納得できるかもしれない。

 穢れの大軍勢が来る予定です、とか言われたら素直に信じちゃいそうな戦力だって沙織には言われたけど……そこまで凄い人達だったのか。

 内心、驚いていると、沙織がこちらを向いた。


「月夜、それっていつの話?」

「一週間後だよ」

「なら、その日は私もいるわ。まだ何があるか判らないし、よくいる人は一人でも多い方が良いでしょ?」

「そうだね。君にとっては緊張しかしない面子になるだろうけど、宜しくお願いするよ」

「はい」


 私の意見を聞かずに決まったことに私は驚くでもなく、喜んだ。

 沙織は親友だから、わざわざ来てくれるというのは嬉しい。

 勝手に決められて怒らないのか? いやいや、私はまず何があるか判らない状態だから、何かあった時の対処要員は一人でも多い方が良いって判ってるから、怒りません。

 最初は沙織も監視役だったしね。今じゃ友人関係になっているけどさ。

 必要なことなんだと蓮兄さん達から悲しげな顔をして最初に言われたのを覚えているので、私としては文句はないし、未だに継続しているというのも判っている。

 それでもその中でも絆というのはできるんだと知ったからそれでいいと思っている自分がいるわけですよ。

 そういや、最初からそれを悲しいとは思わなかったな。どこか監視されることに慣れていたというか……。

 もしかしたら私の忘れている記憶が少しだけ表面化したのかもしれない。だとすると監視されるのが当たり前の環境に身を置いていたということになるので、少々気にはなるけども。

 そこの部分も含めて今度、凛姉さん達に言った方が良いかもしれない。ずっと気にしているみたいだしさ。


「あ、じゃあ、沙織」

「うん?」

「一緒にどんなお菓子を作るか考えない? 十二天将の皆さんに出すの」

「うーん……私は作るより食べる方が好きだからなぁ」

「そういえば前にもそう言ってたね」

「月夜の作るお菓子はどれも美味しいから好きよ」

「それじゃ困るんだけど……」


 沙織の言葉に呆れながらも、候補として考えているお菓子のレシピを見せれば、早速お腹が鳴っていた。……沙織って意外と食いしん坊だよね。

 などと言ったら、少し顔を赤くして無言で顔を背けていたので、自覚はあるらしい。

 仕方ないから沙織の作って欲しいお菓子も聞いておいたけど。そしたら即座にジャンボパフェを所望した。……なんでその見た目で甘い物限定で大食いになるんだろうか、沙織は。

 思わず沙織のお腹を見た私にその視線の意味に気付いた沙織が静かにお腹を隠した。


「な、なに?」

「いや……どうして沙織って甘い物限定で大食いになれるんだろうと思って」

「甘い物は正義よ!」

「……どういう理屈?」


 時々出てくる沙織の謎発言に呆れていると、頬を膨らませて睨まれた。ただし、顔を赤くしているので、全くもって怖いと感じない。

 沙織って普段は頼れるお姉さんみたいな雰囲気なんだけど、甘い物に関してのみ、子供みたいになる。彼女のそんな姿が珍しかったのもあって、私はやたらとお菓子が作れるようになったんだよね。

 初めて作ったお菓子は食べた私でも失敗したと思うようなものだったのに、「美味しい」と言って食べたのが沙織だったからという理由もあるのは秘密だ。さすがに恥ずかしい。

 今では「お店のより月夜の作ったお菓子の方が美味しい」と言って、よく強請ってくるようになったし……それを嬉しいと思っているあたり、私も末期かもしれない。


「とりあえず、ジャンボパフェね?」

「作ってくれるんだ」

「言われた以上は作るよ……」


 容器もあるし、と言えば、誰の仕業なのか判っている沙織が視線を泳がせた。

 というか、いつの間にか湊兄さん居なくなってるし……本当にあの人って神出鬼没だなぁ。

 あ、なんでジャンボパフェできる容器があるのかというのに関して言えば、沙織が買ってきたからという言葉で完結する。

 沙織も『中将』なので、お金を持っているわけですよ。……そりゃ、買えるわな。

 結果的に本来ならば用途なんてなさそうな食器だのなんだのが神楽家には溢れています。

 もれなく私の私物である服もそれに当て嵌まる。何でドレスだのメイド服などがあるんだろうね?

 誰が買ったのかも、何の意図で入れたのかも判らないという謎。本当に誰が入れたの?

 内心、少しだけ戦慄していると、感極まった沙織に抱きつかれた。

 どうやら一応であっても作ってくれる、ということに喜んでいるらしい。本当に甘い物が好きだよね。


「ふふ……こうなったら、材料も全部こっちで用意するわ! 何が必要かしら」

「材料に関してはまだ考えなくちゃいけないから、後日言うよ」

「勿論! 楽しみにしているわ!」


 完全にハイテンションになっている沙織に苦笑しながらも、今日のために焼いたケーキを出せば、大喜びで食べ始めた。

 ちなみに言っておくけど、ワンホールだから。しかも沙織一人で食べ切る。

 なんでこれで太らないんだろうか。永遠の謎な気もしてならないけど……本当に美味しそうに食べるので何も言いません。誰だって美味しそうに食べてくれた方が嬉しいに決まっている。

 これは作る側になるようになってから思うことが多くなったことだ。作ってもらう側だった時には判らなかった感覚だけど、今では喜んでもらえるから作っている感じが強い。

 お店でもしたらどうだと言われることがあるけど、そこまでの技術はないと思うし、年齢的にも難しいから、という理由で断っている。

 まだ中学生だもんね。アルバイトとか普通に中学生でもできるけども。

 個人的にはまだ趣味の範囲内だけど刺繍も始めている。色々とやってみるのは良いことだって蓮兄さん達も言っていたので、興味が出たものはやらせてもらっている。

 ……この前、ドレスを作ったら、さすがに驚かれたけど。

 ちょっと前にあったことを思い出して遠い目をする私に構わず、沙織は上機嫌でワンホールのケーキを食べ続けているのだった。

 ……この後、十分程度で食べ切ったことは言うまでもない。沙織って甘い物に関してのみ大食い&早食いになるんだよ。これでも遅かった方です。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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