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穢れ狩り  作者: 氷見田卑弥呼
狐面の穢れ狩り
11/82

報告会前

暇潰しに読んでいただけると幸いです。

  ――湊視点――


「のう、『朱雀』よ、月夜には言ったんじゃろうな?」


 見た目からは想像もできない口調で蓮に話し掛けたのは十二天将『勾陳』。今年で六十歳だったはずだよ。

 ああ、見た目は少女のようだけど。十二天将全員から見た目詐欺と言われてしまっていたほどだ。

 もう一人、見た目が少女のような人がいるけれど、その人よりも年齢が上なのに見た目はこちらの方が下に見えるせいで、その人物は「実は反対なんじゃないの」と言っていたよ。ちなみにその人は幼く見られるのが大嫌いだよ。


「あ? ……ああ、ちゃんとここに来る前に言ってきたぞ。嬉しそうにして楽しみにしてたぞ」

「相変わらず愛い奴じゃのう、月夜は」

「菓子を作ってやれって言ったから楽しみにしておいてやれよ」


 古参である『勾陳』に向かって同じ十二天将とはいえ、敬語を使わずに話す蓮に内心呆れる。昔からそうだけどなんで目上に対して敬語を使わないんだろう。

 基本的に自由人が多い十二天将達だから注意するのは少数だけどさ。


「ほっほっほ。あの子の作る菓子はいつも美味ゆえ好きじゃ」

「そう言ったら喜んでたな。あの純粋さはどうにかならないのかよ」

「しかしそこが可愛いのじゃろう? 実に可愛がっているではないか」

「そういうあんただってそうだろ? じゃなかったらわざわざ会うなんてしないだろ」

「当然じゃ。……正直に言うなら、あの無邪気さが記憶喪失から来ている可能性も高いとは思っておるんじゃよ。でなければいくら中学生とはいえあそこまでの無邪気さは持たんじゃろうて」


 目を伏せて言う『勾陳』にこちらも同意するように頷いた。

 保護したばかりから考えれば幼子のような無邪気さはそれなりに抜けたけど、同世代の子達と比べた時にやはり幼く感じる。

 幸い、同じ学年の子達からは凄く可愛いと言われて可愛がられているようだけど。


「あん子の好きなよう今はさせたりや。記憶が戻ったら辛い思いすんのはあの子やで」

「む、出たの。詐欺師の『天空』」

「やから、俺は漫才師や! まったく……皆して詐欺師、詐欺師言わんといてや。俺は確かに人を欺くことも好きやけど、それ以上に笑わせるのが好きなんや!」

「ほれ、やっぱり好きなんじゃないか。ほんに『天空』の名に恥じぬ奴よのぅ……」

「そう言うあんたかて戦闘になったらその名に恥ずない姿を見せるやろ。月夜ちゃんに見られたらドン引きされ……ぐっ!?」


 あ、鞭が鳩尾に入った。禁句を言ったんだから当然なんだけどさ。

『勾陳』は確かに戦闘が好きなんだよね……。笑いながら暴れるから初めて見た人はドン引きすると同時に『勾陳』の名に恥じない人だと判断する。

 だけど普段は子供好きのおばあ……じゃなかった人だから、その話題を出されると鳩尾に鞭を入れられる。穢れの大部分が吹っ飛ぶほどの威力が出る鞭を鳩尾に入れられるんだ。……いくら体の丈夫な十二天将でも軽く死を覚悟する威力だから、誰も次は言わない。

 だけど、一人だけ『天空』であるこの人だけは何度も言っては鞭を入れられているので、一部からは「実はМなんじゃ……」という疑惑を向けられている。

 何度も言うのは『勾陳』と『天空』が酷く仲が良いからな気もしなくはない。相性が合っているのかよく会話をしている姿を見ている。年齢は『天空』が二十六歳だから誰も恋人関係を疑わないというね……。

 実際彼らは友人関係であって恋人ではないよ?

 ちなみに『天空』は十二天将の中で一番怪力の持ち主で、成人男性を平然と片腕で持ち上げることができる。だからよく『勾陳』が『天空』の腕の上にいるんだけど。

 見た目から考えると別の人が上がるから、初めて十二天将を見た人達は二度見不可避みたいだ。

 更に言うと『天空』は基本的に関西弁で話をするから偶に何を言っているのか判らなくって聞き返されて若干怒りながら関西弁を止める。


「酷いやないか! いきなり鞭を入れるなんて!」

「妾の前で禁句を口にしたのが悪いのじゃよ? ちとは気を付けんか。今のところ一度も避けられておらんぞ?」

「あんたに実力で勝てるわけあらへんやん! 第二位と第七位やで!?」


 文句を言う『天空』に『勾陳』は鼻で笑うだけ。

 二位とか七位というのは十二天将の中での強さで、毎年一年の始まりにする順位戦で決まるんだ。ちなみに上位三位は桜桃軍ができて十二天将が階級として生まれた時から変わってないんだとか。

 目の前にいる『勾陳』がその一人なのは言うまでもない。何気に凄い人なんだ。

 代々、人が変わっているのに上位三名は変わらないんだから、かなりの重圧だと思うんだけど、全員そんな感じは微塵も出さない。

 気さくな人なぐらいだよ。『青龍』は微妙だけどね。真面目な人だから……。


「ところで……。月夜ちゃんは最近倒れたって話やったけど、もう元気なん?」

「一応は。以前のような暗さは消えましたね」

「さよか……」

「何か気になることでも?」

「いや、個人的に気になっての。ふと、あの子の霊力の高さってどないなっとるんやって」


『天空』の言葉に返事をした凜が少しだけ反応した。同じ疑問をつい先日僕達も抱いたばかりだったからね。

 十二天将達もいずれは疑問に思うだろうとは思っていた。……でもここまで早いとは思ってなかったや。そういやこの人は勘も良かったっけ?


「どういうことじゃ?」

「あの子の霊力の高さは十二天将同士やったとしても滅多に産まれんやろ、と思ってんよ」

「確かにのぅ……何かしらの特殊な出自でもない限りはあそこまでにならんじゃろう」

「あんたでも見たことないって以前に言うとったもんな」

「うむ。普通あそこまでの、となると命の危機に常に晒され続けられていた、でもない限り無理なはず……なんじゃが、あの子からは微塵もその様子が見受けられんのじゃよ」


 実に不思議なんじゃ……と続ける『勾陳』に『天空』も難しい顔になっていた。

 それぐらいにおかしいってことなんだけど。月夜が普通に過ごすことができていることからも。


「あの子の両親が十二天将の可能性はあるん?」

「大いにある……どころかほぼ確実じゃろうとは思っておる。思っておるのじゃが……」


 そこで不自然に言葉を切って目を伏せた『勾陳』に僕達は訝しげな顔になった。

 何か僕達は知らないことでもあるのかな?


「思ってるんやけど?」

「生憎と十二天将同士で頻繁に会うようになたのはここ数年の話なんじゃよ。丁度先代が多く入れ替わった時期、だったというのもあっての」

「え、そうなんか?」


 驚く僕達に『勾陳』は無言で頷いた。本当にそういうことが以前はなかったらしい。


「基本的に個人主義の者が多いから、わざわざ会う必要性を特に感じておらんかったんじゃが……最近は穢れも活性化してきておるし、ということで『貴人』が順位付けも含めて提案したのじゃ」

「てっきり順位付けも昔からやと思っとったわ」

「きちんとした順位が決まるようになったのは現在の十二天将になってからじゃな。まあ……上位三名は他の十二天将からすれば圧倒的過ぎて必然的にそうだと思われておったようじゃが」


 思わぬ暴露にただただ驚くしかない僕達に『勾陳』は苦笑していた。だから先代などの話が一切知っているはずの人達から出ないのか……!

 聞いてみれば、姿も年齢もいつから十二天将に就任したのかさえも知らないらしいよ。寧ろよくそれで今までいけていたね、と全員が呆れた。

 本当に個人主義だった、ということなんだろうけど……少しは不便に感じてもいいはずだろうに。


「下手に外部に漏れても困るからの。いくらなんでも秘密主義過ぎるじゃろうとなって『貴人』が言って現在のように頻繁に会うようになった」

「まあ、なるやろな。寧ろ随分と遅ないか?」

「昔はどこから穢れが情報を手に入れておるのか判っておらんかったからの」

「今は判っとる……か」

「うむ。人に対して友好的な穢れが存在するということが判ったからの。昔は穢れはとにかく討伐しておったんじゃが、長い戦い過ぎて人間側も疲弊が凄まじくての」

「いくら憎いとはいえ、何もしとらん奴まで憎んどったら体が持たへんもんなぁ……そうでなくともこっちの数は多ないんやし」

「それでも世界的に見れば多い方じゃよ」


 彼らの言うとおり、穢れには少数だけど友好的な者達が存在するし、桜桃軍にも所属している。

 穢れに対して憎しみを持つ者が多いけれど、今までどれだけの歴史を争ってきたのかも知っているせいで、どれだけ組織として、国として疲弊が凄まじいかも判ってしまうんだ。だから受け入れた。

 結果として半妖、と呼ばれる存在も出来上がったほどだからねぇ……。


「月夜の所の担任が居るじゃろ?」

「んあ? ああ、俺らも担任はあの人だぜ」

「あの者が半妖じゃよ。じゃから見た目も変わらんのだ」

「え、マジで!? 初耳だぞ!?」


 判りやすく驚く蓮に『勾陳』は頷く。あの人、実年齢は『勾陳』に近いらしいよ……は、初めて知ったな……。

 見た目は二十代にギリギリいるかな? ぐらいの感じなのに……あの人も見た目詐欺だったか……。

 いやまあ、半妖が物凄く寿命が長いことぐらい知っているけども。


「どうしても教師がしたいと言い出した時は『何を馬鹿なことを』と思ったんじゃが、よくよく考えてみれば守りには十分過ぎるんじゃよなぁ……」

「月夜が通っている学校は表向きは普通でも中身は穢れ狩り育成機関だもんね……」

「沙織のような子も居るからのぅ……できれば子供らしい人生を送って欲しいとは思うんじゃが」

「難しいやろうなぁ。穢れによる被害は年々増えとる」


『天空』の正論に悲しそうな顔をしながらも同意する『勾陳』は何度も若い子が亡くなる姿を見ているからこそ、どうしてもそう思ってしまうのだろうと思う。

 こればかりはどうしようもないのだろう。桜桃軍はそうして成長していった過去が存在するのだから、止められるはずがない。

 せめて穢れが出てくる頻度が低くなれば良いんだろうけど……現状は逆に増えてきている状態で、今後さらに戦いは激化していくことは想像に難くない。

 個人だけではどうしようもないところまで来ていて甘いことを言えるはずがないよね。

 月夜も同じ感じに記憶が戻ったらなっちゃうのかな……。

 少し不安に思いながらも、そろそろ十二天将の報告会が始まるからと会場に向かうのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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