第八話:GUARD=2
守備練習を始めた涼太。
上達するコツを掴めるのか?
仲間達との奮闘、御覧下さい。
逆側で始まった3対3の練習だが、外から観た涼太は驚いた。
勇斗はパス回しによる左右の移動に合わせて、前後への移動も入れている。
「勇斗の左右を見てごらん。二人の真ん中に位置取りできているだろう。」友希が声を掛けてくれる。
「それもすごいけど、前後の動きも加わってるんだけど…」
「離れていると、逃げられて次に繋がる。相手の選択肢を減らすには近づいて動きを止める。これを意識しないとダメだね。」
「足運びが難しいよ…。」涼太が苦笑を浮かべる。
「さっきのアップが上手に出来れば、対応出来ると思うよ。」
「そうかなぁ、出来そうな自信無いなぁ。」
「まあ今日は出来ないかもしれない。でも明日は少し上手になってるはずだ。そして未来には出来ると思うよ。」
「それだけ練習しないと、やれないんだね。」
「みんなは3年前に教えてもらった。それについていこう!」
「うん、わかった。やってみるよ。」涼太は少し気合いを入れた。
勇斗と交替した涼太は、激しい動きに一生懸命ついていった。
上手に出来たかはわからない。だけど左右の真ん中にはいた感じがする。
「ヨシッ!涼太休憩しよう。」
みんなでコートの外に有る日陰に移動した。
「龍乃助がさっき言ったのわかるなぁ。」竜馬が口を開いた。
涼太はまだ口を聞けないくらい息が上がってる。
「竜馬!どう感じた?」勇斗が聞く。
「簡単に言うと、浩樹の壁が2倍に広がった。」
「悔しいけど、ガタイの大きさは効く。左右に振らないとスキが感じられない。」龍乃助も口を出す。
「これで先輩達が相手でも耐えれるかな。」慎一も感想が出る。
「これは後ろから見た感想、前後がさまになるまでは、1-5の端を守ってもらって、横のやつが内側の比重を高くするのがしっくりくるかもな。」友希は分析した上での作戦を練る。
「じゃあ今度は俺か慎一の位置でやるか。」
「だけど、背の高さは活かしたいよね?」慎一が疑問を出す。
「まあそういう所は先輩達が居る時じゃないとな。俺達は八人だしな。」勇斗がまとめると、浩樹が
「じゃあ涼太、早く俺の横に並んでコンビ組もうぜ。待ってるから。」
息が整い始めた涼太は
「うん。努力するよ。だけどみんな息が上がらないね?」
「まぁ試合は60分、延長含めれば90分動くからね。ここも鍛えないとな。」好伸が涼太に更なる試練を与えた。
ハンドボール談義をしながら休憩する涼太達をよそに
友希がゴールの前で変わった柔軟をしていた。
「じゃあそろそろシュート練習始めるか。」
「じゃあまずはステップシュートだ。見とけよ涼太!」
左右にわかれた仲間達がゴールに向かって走り出す。
対面から投げられたパスを受け取ると体勢を整えてシュートを繰り出す。
スピードに乗ったボールがゴール角を目指して飛んでいく。
構えた友希は素早くボールを取る、はたく、そして足に当てる。
その間にゴールに突き刺さるボールも有る。
涼太の順番がきた。
走る、龍乃助からパスがくる。
両手でキャッチ出来た。右手を後ろに引き、陸上の槍投げをイメージしてボールを放つ。
友希の正面だった。ボールを横に流した友希は、次に備えて両手をあげていた。
また戻ってきた仲間達は籠からボールを出して並ぶ、今度は逆の列を指で指された。
次は右の列だ。ボールをもらう。身体を捻って正面を向いた。
ボールは″ヘロッ″と音がするんじゃないかと思うくらい力が入ってなかった。
人数が少ないから止まった。友希がはたいたボールをみんなで籠に入れる。
涼太も両手にボールを抱えて籠に近づく、龍乃助が声を掛ける。
「反対側は難しかっただろ?逆で球を取るから」
「うん。投げれなかったよ。」
「ハンドはバスケと違う。ボールを取って着地した足は0歩。」
「0歩?」
「それから1、2、3まで歩数が取れる。その間に投げる。」
竜馬も声を掛けた。
「だけど逆足で取る時も有るから、0、1、2で投げる事も有る。」
「そうなんだ…。…」
「友希、勇斗!涼太を龍乃助と対面して同時に投げて良いか?」
「ああっ。」「了解。」
「俺が真ん中に壁で立つよ。好伸、慎一!球出し頼むよ。」
「おうっ」二人が答える。
「じゃあ涼太君、僕のポジションでキャッチして0を覚えよう。」竜馬がボールを渡す。
「うん。」
「反対側で左利きの龍乃助が鏡になるから、気になったら横を見て。」
「わかった。」
「じゃあ勇斗はまたアドバイスで!これを見てよ。好伸!」
ボールを出した竜馬は走り出した。
続いたステップシュートの練習、歩数を頭で数える涼太は右でも左でも打てるようになった。
今度は龍乃助のポジションでみんなが右利きでの打ち方を見せてくれる。
ヘロッとしたボールは出ないが、浩樹が壁になってゴールネットが揺らせない。
友希が取るか、枠を外れるか、どっちかになってしまう。
みんなと何が違うのか涼太は考えた。
みんなはゴールしてる。フォームは同じだし…
勇斗が横投げしてるのに気付いた。
だけどみんなしてない。
順番をずらして勇斗の前にした。何が……!
竜馬は1歩でシュートを撃っていた。待ててないから友希は取れない。
真似した。友希の足を抜けゴールポストに当たった。
次こそは…シュートが決まった。嬉しかった。
だけどみんなが1歩じゃない。慎一や好伸は横投げもしてない。
だけど入るんだよなぁ、待ってる間に勇斗に聞いた。
「コツは?」
「リズムをずらす事。方法は色々と…、少し気付いていたみたいだけど…」
「そうか。ヨシッ、やってみる。」
みんなを見て違うリズムでシュートを放つ、友希を抜ける回数が増えた。
浩樹が正面にくる。右利きの涼太は右からしか打てない。
涼太は陸上の高飛びをしていた。
三歩の向きを変えた。歩幅も次第に広くした。
浩樹の左からゴールが見えた。伸ばした手を躱すように身体を傾けた。
友希も動けないシュートが決まった瞬間だった。
「ヨシッ!」
みんなが見ている前でガッツポーズを取った涼太だった。
シュート練習を始めた涼太達
次はいよいよハンドボールの醍醐味のジャンプシュートを開始します。