第四話:Face to face
涼太と顔を合わした菖原高校ハンド部セブンの面々
これから何をしていくのか…答えを見つける旅の始まりです。
次の日 朝から気持ちがはやりながら通学した涼太は、教室に入ると勇斗を探した。
「まだ来てないか…」少し落ち着きを取り戻した涼太は、クラスメイトとたわいも無い会話を交わして時間を過ごした。
始業の15分前に教室に勇斗はやって来た。
「おっはよ~うっさ~ん!」
手を上げて挨拶を交わして来ながら、席に着く勇斗。
「勇斗、おはよう。」
「涼太、おはよ~。」
「勇斗はこの時間に通学してるの?」
「うんにゃ、朝練してから来たよ。」
「そうなんだ。」
「で、涼太は昨日、親御さんに話したかい?」
「うん。話したよ。入部も出来るよ。」
「そりゃ、良いこったね~」何かご機嫌な勇斗だ。
「それともう1つ報告。」指を立てた涼太。
「うん。何だね~涼太君~。」本当にご機嫌そうだ。
「どうも父さんの弟にあたるオジさんが経験者だったみたいなんだ。」
「おっ、そいっつはおもろい情報やの~。そのオジさんは何歳なんだい?」
「父さんの8つ下だったから、今は32歳になると思うよ。」
「とすると杉田先生と入れ替りで入学した感じの世代だな。」
「そうなの?」涼太には杉田先生の年齢が分からない…
「で、そのオジさんは今はどこに居るんだい?」
「どこだろう?詳しくは知らないけど刈谷市で働いてるのは聞いてる。」
「そうか、そのうち話が聞けると良いね。」勇斗はそう言うと、
「涼太、今日はトレーニングウェア持ってきた?」
「うん。陸上で使ってたやつだけど…」
「まぁ今度の休日に揃えられる物を買いに行こうぜ!」
「そうだね。頼むよ勇斗。」
そして授業が始まって、涼太達の高校生活が始まった。
時間が過ぎ、放課後になった。
二人は教室を出て、部室棟を目指して歩き始めた。
「勇斗、うちのクラスには部活メイトはいないの?」
「えっ、部活メイトって、流行りワード?」
「そっちかよ!クラスメイトの類似ワードと思ってよ~」少しむくれた涼太。
「分かってるに決まってるじゃん!いないんだなぁ~」
「後は6人は普通クラスと隣の特進だね。」
「みんな経験者なんだよね、なんか気後れするんだよね~」
「それは逆!みんなぶっ飛ぶ!まずサーキットなら互角だろ~」
「陸上経験分だけね。」少し投げやりに答える涼太。
「昨日のキャッチボールの基礎能力を上げて、ハンドの理解力つければ、あっという間に戦闘力になるよ。」
「えっ?」
「そこからは個性をつければ、うちの切り札に出来る!」
「勇斗…何を言ってる?…何…考えているの?」
「涼太にハンドを楽しく好きにさせる方法を考えてる…」
どうも勇斗の考えが理解出来ない。
「それは僕が初心者だから…?」涼太の困惑が止まらない。
「まぁ、中学時代の後輩に教えた事を、3ヶ月でマスターさせるだけ」またあの得意げな顔を涼太に見せる勇斗。
涼太はこれから始まる部活動に一抹の不安を感じるのであった。
部室棟に着いた勇斗達は、階段を上がる。
緊張感が増した涼太は動きがぎこちない。
「どうした涼太。」
「先輩達にアイサツ…、どうしよう…」顔も少し青ざめている。
察した勇斗は「先輩達はまだ授業だぜ。」
「えっ、!」
「今居るとしたら同い年の仲間。」
「そう…っ…つ。」
「緊張するなよ、みんな歓迎してくれる。」
そう良いながら、扉に手を掛けた。
「ちぃーす、勇斗でーす!」
「失礼します。新谷です。」
二人が部屋に入ると、すでに二人の生徒が着替えてた。
「おうっ、勇斗。」「よっ…あれっ、そいつは?」
振り返った二人がアイサツしてくる。
「コイツは俺の親友、新谷 涼太。もちろんハンド部だ。」
肩を掴んで勇斗は言った。
「旭中学の新谷 涼太です。初心者になります。よろしくお願いします。」
「俺は小河原 龍乃助。同い年なんだからくだけてよっ。」
「僕は迫田 友希。よろしく、しっかっし勇斗勧誘はェーってっば……」感心した顔して、長ズボンの男が言う。
「言ったろ、俺達人数少ないんだから、試合で何起こるかわかんないんだしよ。」
「でも、お前早すぎ、アダ名を隼 勇斗にしようか?」
「なんだそれは…プロレスラーみたいだし、なげ~よ。そっちだって誘いはかけてるんだろ?」
「お前みたいに連れてこれねぇ~っての!」
と二人が会話してる間に
「涼太君だっけな、ここ使って着替えてよ。」
「ありがとう。」
着替え始めた涼太に龍乃助が訪ねる。
「涼太君、体格が良いけど、運動の経験は?」
「中学は陸上部だったんだけど…。」
「そっか。身体は一応出来てるね。勇斗!先に出るよ。」
友希は龍乃助を連れて部室を出ていった。
「気兼ねしなくて大丈夫だろ、涼太。」
「うん。後の四人も顔合わせしないとね。」
「もうすぐくるんじゃねぇ。準備出来たか?」
「うん。いいよ。」
「後はタオル持って、行くぜ!涼太。」
二人も続いて部室を後にした。
先に居た二人はコートの外でストレッチをしていた。
「涼太、まず陸上でやってたストレッチを始めてよ。見てみたいんだ。」
「わかった。勇斗は?」
「俺はジョギングして身体ほぐすから、それから。」
「うん。始めるよ。」答える前に勇斗は動き出していた。
それから10分はストレッチしていただろうか、ジョギングしながら身体を動かしていた勇斗も、隣に来てストレッチを開始した。
涼太は仕上げに足を広げ、腰を曲げていた。
「おっ、やっわらっけーな。誰だよお前は?」
上から声がする。
顔をあげると、見たことの無い顔が三つ。
「僕は勇斗と同じクラスの、新谷 涼太。よろしく。」
立ち上がってアイサツをする涼太。
「うおっ、よろしくな。デカいなぁ、おいっ勇斗!」
違う声が勇斗を呼ぶ。
「そうだろう、そうだろう。これがドラフト1位の涼太だ。」
肩を組んで笑顔を振り撒く勇斗。
「涼太、紹介するよ。一年生の他のメンバーで好伸、次が浩樹、そんで竜馬。最後に来たアイツが慎一。」勇斗の声が弾んでる。
「みんな改めて、旭中学出身で陸上をやってた。新谷 涼太です。初心者だけど、勇斗に誘われて入部を決めたんだ。色々とよろしく。」
「ようこそ、菖原高校ハンド部へ!」7つの声がそれぞれ涼太を歓迎する。
これが始まり…これからの苦楽を伴にする仲間達との初顔合わせだった。
暑い日が続いています。
試合再開に向け練習やトレーニング中の
部活に励んでいる生徒の皆さん。
熱中症には充分に注意して生活していって下さい。