魔界にて
私の名は『アバンシュタイン・ホロウ』
無数の魔法と召喚獣を操り、不死の命を持ち
魔界では『殺戮のホロウ』と呼ばれていた。
「もう疲れたのだよ…」
最後の戦いが終わり、敗者を見下ろした
「お前にはソレを言う権利があるからな」
敗者にして親友『バニッシュ・カーフィルド』は
寂しそうな微笑みを浮かべた。
「さらばだ」
「あぁ…さらばだ」
唯一無二の友の言葉を背に私はその場を後にした
「ご主人、行くにゃ?」
我唯一の使い魔、純白のケットシーは両手にハンマーを持ち
私を待っていた。
「あぁ……」
ため息混じりの返事が魔界の冷たい空気に漂う
「アタイも一緒にゃ」
「好きにすればいい」
吐き捨てるような言葉だった
ケットシーはやれやれと言わんばかりに微笑むと
両の手のハンマーを背負った
「どこに行くのかにゃ?」
ゆっくりと歩く私の後を早足でついてくる
「さぁな、ただ……」
そこまで言いかけて魔界の風景を見渡した
薄暗い殺意の漂う空気と怨念だけを抱いた不毛な大地
見慣れているはずの殺伐とした風景が今の私には不愉快に映る
「ここでないどこかだ」
あてはない。
魔界ではないどこかならばどこでも良いのだ、殺伐とした風景ではない身も心も安らげる場所ならば……