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ゲスと愉快なおっさんたち  作者: おっさん祭り
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意味はないけど一度は言ってみたいセリフ

 知らない天井だ・・・

 すまない嘘をついた。知らない天井ではなかった、そもそも天井などなかった。


 周りを見渡すと一面の砂漠、人はおろか生物の気配すらない。

 なぜ私はこんなところで寝ていたのか、荷物や装備は間違いなくあるし馬もそこにいる。

 賊の仕業だとしたらそもそも私や馬を放置していくことはないだろうから寝ていたと判断する。

 そこまで考え何故こんなところにいるのかと思いを巡らせた時に気づいた。


 はて、困ったことにどうやら記憶がないようだ。

 はっはっはっは、笑ってる場合ではないが焦っても仕方がないのでとりあえず身の回りの確認をすることにする。


 装備はプレートアーマーにグレートヘルム・・・幸いにも記憶はないが知識自体は失ってないのでわかるのだがなんでこんな高級なものを装備してるのだろうか?

 しかも砂漠のど真ん中で、変態だったのかな記憶を失う前の私は?


 武器は馬上槍とロングソード、そして弓。どうやら馬上で戦うことを前提に選んだもののようだ。

 それも当然か、見るからにこの馬、屈強な体をしている。


 荷物は水と矢筒と携帯用の食糧、それと馬の餌用の飼葉、水がかなり多くあるが馬の分を含めるとかなり心もとない、最寄りの町までどれほどかかるかわからないので節約しながら行くとしよう。

 金銭については金貨が割と邪魔なレベルで袋に入っていた。

 そのおかげでしばらくは金銭について考える必要はないだろう。


 さて、状況確認は終わったが自分がどういった存在なのか余計にわからなくなってしまった。

 鎧はそもそも一人で脱げるようなものでもなかったので仕方なしにこのままいくとして

早めに町につかないと干上がってしまいそうだ。


 周りが一面砂しか見えないので勘を頼りに適当な方向に2時間ほど歩いていた所、何らかの足跡があったのでそれを追っていくことにする、足跡の他に車輪のような跡もあったので旅商人の馬車と推測するが、痕跡がなくなる前に見つけれて幸運だったなと思いつつよく見ると割と新しい足跡のようだ。


 足跡をたどってまたしばらく進んでいくと何やら争っているような音が聞こえてきた。

 どうやら賊が商人の集団を襲っているようだ。

 賊の数は二十人ほど、それに対して商人たちは護衛らしき奴らを入れても十数人というところ。

 賊のほうが人数自体が多いうえに護衛達は荷物と商人を守ることに意識を割かねばならず動きが悪かった。

 砂漠の賊だから砂賊とでもいうのかな、のんびり考えつつどう行動するかを考える。


 助ける場合のメリットはいくらかの謝礼と最寄りの町までの確実にたどり着ける、といったところか。

 逆にデメリットは、、、特にないな、恨みを買おうが買うまいがどうせ賊なんだから襲ってくるだろう。

 助けない場合もこの砂賊が逃がしてくれるかどうかわからないので積極的防衛策として商人側を助けることにしようか。


「やぁそこの旅商人殿、助けはいるかね?いらないならこのまま通り過ぎるが」


 そう声をかけると商人のリーダーであろうガッチリした体格のおっさんが大声で


「おおそりゃありがたい、だがいいのかね?正直こちらは劣勢だぞ?」


「駄目じゃないか、商人ならそんな馬鹿正直に答えては」


「違いない、だが真に大成する商人ってのは信用と信頼を大事にするものだ」


 一理あると思いつつもこのおっさんが気に入ったので問答無用で助けることにする。


「さて、賊の諸君、今ならまだ逃げられるぞ?このまま戦ったところで被害のほうが大きくなると思うがどうするかね?このまま戦うというのなら私はそれでも一向にかまわんのだが」


 そう叫びつつ引いてくれると苦労がなくていい、そもそも自分がどの程度戦えるか現状不明である。

 ただ重装備をさして苦も無く装着して動ける時点で体自体は強いだろうしなによりも私が賊ならこんなプレートアーマー着こんだ騎士っぽい奴を相手にするのなど絶対にごめんだから9割がた大丈夫であろうと考えていた。


「チィ!!退却しろ!!全員命を無駄にするな!!命あっての物種だ!!」


 賊のリーダーとは思えないようなことを叫びつつ迅速に配下をまとめて撤退していったがそれを聞いてそれなら畑でも耕してろよ、と思いつつ賊が引いていくのを見送った。


「いやぁ、助かりましたぞ!ところであなたはなぜこんなところに?」


 こんな砂漠でプレートアーマーを着込んだ騎兵などまずいるはずもないだろうからその疑問は当然だなと考えつつ私は決め顔を作った。


「迷子だ」


 おかしい、砂漠なのになんか寒くなったぞ。

 夜ならわかるが今はまだ日が昇っているからこの時間砂漠で寒く感じるはずなどないのだが何故だ?


「そ、それは大変でしたな。これから私たちは砂漠の都市ザットまでいくのですがご一緒にいかがですかな?もちろん護衛代金はお出ししますので」


 ふむ、金はあるに越したことはないが現状はそれより情報が欲しい、知識はあるといってもそれがあっているのかすら現状では判断できないしなによりもこのおっさんが気に入った。

 言っておくが私はホモではない、大事なことなので2回言うぞホモではない。


「金はいい。ただいろいろ話を聞かせてくれないかね?もちろん言えないことは言わなくていい。見てわかるように私は世間というか庶民の暮らしというものにあまり詳しくなくてね、是非一度そういった話を聞きたかったのだよ。」


 自分自身がどう見ても一般市民に見えないだろうことを利用して世間知らずの体を装ってこの世の常識を学ぶことにしよう。

 現状の私にとって常識とは金貨以上の価値があるだろうしな。

 それに私の心が人と合わせれるというのは何よりも大事な武器になるといっている。

 人と合わすためには何はともあれ常識が必要である。


「かまいませんがそれだけでいいので?普通に騎士様を雇うとなるとそれこそ金貨数枚以上かかるんですがよろしいので?」


「かまわんさ、それに賊が横行する世の中で貴公のような気概を持った人間は珍しいのでね、気に入ったのさ。ああただ馬を含めて食事だけはお願いできないかな?」


 そもそも今の私には金貨1枚がどの程度の価値があって1枚で何ができるのかがそもそもわからない、そういった情報を得るほうが先だ、それに商人からの情報ならば金を稼ぐ方法も詳細は聞けずとも大枠は聞けるはずだ。

 あと念のためにもう一度言っておく、私はホモではない。


「では食事はこちらで提供いたしましょう。護衛についてですが私の馬車は中央にありますのでそちらに並走する形で護衛をお願いします」


「了解した、ところで護衛中についてなのだが無言でやったほうがいいのかな?私としてはこのような開けている場所では奇襲をかけようにも隠れる場所もなく成立するはずがないし警戒に集中するよりは移動の時間を使っていろいろ聞きたいのだが」


 正直街に着くまでにある程度話を聞いておきたい、このままでは適正価格がわからんのであらゆる場所でぼったくられる可能性が出てくる、金銭的には大金を持っているので問題はないのだが精神的にまずい、ぼったくられるのは非常に私の精神衛生上よろしくない。


「いえ、まだ街までは数日ありますし賊も貴方様のような方をわざわざ襲わないでしょう。ですのでまずないと思いますが襲撃されない限りは楽にしててくださって結構です。ところで今更なのですが名前を聞いてもよろしいでしょうか?ちなみに私はイフリと申します。」


 そう言われて名を名乗っていないことに気づいた。

 記憶がないのだから当然名前もないのだがこれでは困るので仕方ないので適当に考えるとしよう。

 ふーむ、名前ね、、、名前名前、、、


「あの、問題あるようでしたら別に無理に教えていただかなくても大丈夫ですよ?」


 考え込んで答えれなかったので変に気を使わせてしまったようだ。

 ハッ!ピンときた、名前はこれにしよう!!


「ああ失礼、別にそういうわけではなく他の事を考えていただけだ、名前はヴァーモと言う、好きに呼んでくれたまえ」


 しかし騎士らしさをアピールするためとはいえこの口調は我ながら違和感がひどい、絶対に私は騎士道とは程遠い性格をしてたのだろうなと嫌な確信がある。


「ではヴァーモ殿とお呼びさせていただいても?」


 呼ばれ方に問題はないが完璧に偽名なので呼ばれてちゃんと反応するよう気を付けなければ。


「かまわないさ、短い間かもしれぬがよろしくなイフリ殿」


 そう言って私は商人と握手をした。

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