インフレ
ダンジョンを後にした僕はすぐに家に帰り、レイダと共にダンジョンに帰ることにした。
みんな元気にしてるかな。
街を出て死隷作りで荒れ地だった場所には僅かに草が生え始め、そこには豚らしき魔獣が暮らしていた。全身鉄の鎧で固められたような……。
名付けるならアイアンメイルピッグ。こいつらは、ダンジョンの力で生み出された魔獣のようでこちらには襲ってこない。
ここに暮らしているのは草原にいそうな生物がほとんどだったが、大体が鉄鎧の様な表皮をした生物ばかりだった。
どういう運営をしたんだ……。ベルゼ。
草原を抜け、湿地のあるジャングルに入ると、足元の沼地には以前は生物はほとんど暮らしていなかったけど、灰色で擬態した蛇やワニなど高さが低い生物たちが身を潜めていた。コイツらもダンジョンのモンスターのようだ。
ここは擬態しているモンスターが多く、感知スキルでもないとまともに抜けられないだろうなと思いつつ、歩いていく。
歩いていっている理由は視察みたいなものだ。
そこから先には、驚愕の光景が広がっていた。なんと、平均ランクがS以上であろうモンスター達が闊歩していたのだ。
しかも、全ての大きさが尋常ではない。木は天を貫き、草は失敗した人間化状態の俺の背丈より高い。ただの虫だと思っていたのが懐かしのストーンフライだったりする。
流石にここを人間化出歩くのは面倒なので、モンスター形態になる。
進化してからなにげに初めてかもね。
皮膚が黒く変色していく。そして目も真っ黒。白いであろう牙も黒い。メキメキと巨大化していき、そこらにある木をモンスター化の余波だけでなぎ倒していく。
そこにいたのは、もはやモンスターではなく死を司る神。
そう形容してもおかしくない程に雄大で、恐怖を掻き立てる絶対的強者がそこにはあった。
その神をモンスターに当てはめるのならば、ドラゴンが最も近いであろう。
とてつもなく巨大で滑らかな曲線を描く翼。しなやかだがそこには圧倒的な力が詰め込まれたそんな感覚に陥る体、足。鱗は生えておらず、滑らかな一枚の革でつながっている。圧倒的機能性は、美しさすら醸し出していた。
それは二足歩行で立ち上がると、足の形状が変化し前足は手へと変わった。そして後足は走るのに適し、長くなる。明らかに骨格が変わったそれは龍人とでも言うべきフォルムに変わった。
今はその形をとっているだけのように見え、それは生物の危険信号がフルスロットルで叫びを上げる。そんな生物となっていた。
当の本人は……。
あ、あれ教科書でみたぞ確か勇者が命懸けで倒して村を救った物語で出てきた地龍っていうモンスターだな。物語よりかなり大きめなそいつは、ノシノシと歩いていたが、こちらを見て頭を下げて走っていった。
他には見たこともないモンスターがいっぱいだった。
例えば体はドラゴンなんだけど、全身に毛が生え顔と手が猿の猿ドラゴンとでも名付けたくなる高速で木々を飛び回るドラゴンや、どうやって飛んでるのそれっていうクネクネと蛇の動きを九十度回したような動きで飛ぶ白い発光する虫。
全てが少し会釈すると急いでどこかへ行ってしまう。
城が立っている山の近くに来ると懐かしの森が残されていた。そこで人間形態に戻り、散策するがここは変わりがなかった。
山をひょいひょいっと登るとそこは魔王城というよりは、洗練されたものを感じる黒い城になっていた。周りは恐らくL級であろう巨大すぎる龍がかなりの上空で飛んでいた。
うち一匹がフワッと僕達の斜め前に着地して深くお辞儀をしてから人の形となり話し始めた。
──ダンジョンマスター様、おかえりなさいませ。私はこの城の護衛を仰せつかっております龍騎士団団長ベルと申します。ベルダ様は、只今留守にしておりますので代わりに私がこの城を案内させていただきます。
と、しなやかな筋肉を持った身長の高い好青年が言った。言ったと言うより頭に直接って感じか。
ベル……ね。多分最初に生み出したモンスターとかなのかな。
燕尾服を着たベルについていく。
入り口の扉を開く。
確かここは昔は神殿みたいになってたっけ。
目に入った光景は衝撃的だった。
──ここは、庭園でございます。楽園を模して作ったそうです。ここの手入れはエルフと呼ばれるモンスターにまかせております。
すると耳の尖った容姿端麗な女性が木を真剣な表情で剪定しているのが見えた。
あれか。
それは置いといて、この庭はとても気に入った。
とても美しく、流れる空気がきれいに感じる。そう感じる程に、川のせせらぎ、草葉の揺れる音それら全てが計算しつくされたように美しい音色を奏でている。
そしてどこまでも高く感じる青い空。
まさに楽園。
そこの奥に進むと妙な円が描かれた場所が現れた。そこに乗ると、上の階へと移動した。
使えるところはそのまま使う。匠の技って奴だね。
その上の階は、さながらとても巨大なレストラン。そこで、いろいろな種族の人間がご飯を食べていた。が、こちらを見ると全員立ち上がり。
「おかえりなさいませ!!」
と、予行練習でもしていたのかと思うぐらいにピッタリと揃えていた。
「別に気にしなくてもいいから、そのままご飯食べて」
と言うと、しばらく座らなかったが、ハッとした顔をして、みんな座って食べ始めた。
高価そうな机達の中にこれだけ混んでいるのにもかかわらず、空いているかなり装飾がされた机があった。
あれ何?と聞くと、マスターと仲の良い人達の机でございます。とのことだ。
奥の階段に進むと、そこには立派な僕の肖像画が飾られていた。手心なく、そのままに書いてあるね。
なんか恥ずかしいな。と思って、外すように言ってみたけど、この絵を崇拝している宗教なようなものまであり、外すと面倒なことになりかねないので勘弁してくださいとのことだった。
恥ずかしいけど、しょうがないか。
その階段の先は、客室だったはずだがそこには無数の人間界にあった店が立ち並んでいて、それが十階あった。高い場所に行けば行くほど、高そうなお店が増えていった。
そして、その扉には鍵がかかっていたが、目の前に来るとカチャリと外れた。その扉にはペットの部屋と書かれていた。そこでは、白さに磨きがかかった蜘蛛と、その腹を布団のようにして寝ている人間化したわにがいた。
蜘蛛がキシキシと嬉しそうな声を上げ、声を上げないように、と優しい顔をして口元に手を当てた。
後で来るか。
この部屋は、ぱっと見だが、高そうな敷物等で、家具にこだわり抜いて作られているように見えた。
その上は、ベルゼの部屋。この中には、気持ち悪いほどに僕の写真が貼られていた。いつの間に撮ったんだ……。
そっとじして上の階。ここはベルダの部屋になっていた。まだ、手がつけられていないベーシックな状態で、家具等が一応置いてあるが、多分誰もそこからは触っていないのであろう掃除のみがされている部屋となっていた。
そりゃあそうか。ずっとこっちいたもんな。
そして、最上階。マスタールームとなっていた。
中には、見たこともないほどに豪華な部屋。天井もモンスター化しても大丈夫な程に高い。そこにこの世のものとは思えないほど綺麗なメイドさんと執事が五人ずついた。
彼らは、とてもいい声で、僕を迎えてくれた。すると、ベルは案内はここから専属の方たちに任せますね、と深いお辞儀をして階段をおりていった。
この人たちは僕専属らしく、頼んだ事を可能な限りでやってくれるらしい。ちなみに、あの大型レストランの絵は取れないらしいよ。
とりあえず家具を一通り見て回る。この家具一つ一つが一億ダンジョンポイントするらしい。聞いた瞬間ひぇっと言ってしまった。一つで人間が十万人召喚できてしまう……。凄い。
どうやってそんなに稼いだんだろ?
と、当然の疑問が出たので、聞いてみた。
すると、驚きの回答が来た。いつの間にか領土がとてつもなく広がって、増えたというなんか隠してんのかレベルの答えが帰ってきたが、とても豪華な台に載せられた驚く程に巨大化したコアが、板を吐き出すかと思いきや自分に支配地域を表示した。進化したな、コア。そしてこの星は丸かったんだなぁ。じゃないよ。なんと、人間界以外の全ての箇所が黒く染まり、所有地と書いてあった。
人間界は結構色が別れてきれいだ。
なんでこうなったか考えてみる。
もしかしてと、しばらく見ていなかったタブレット端末を見ると、死隷が完全にノルマ以上の仕事をしていた。何人か呼び戻すか。適正な数になるように命令した。
多分片っ端からダンジョンマスター殺して回ったんだろうなぁ。
人間界では、流石に影響が大きいからやらなかっただけで。
まぁ、納得して椅子に座ろうとすると、椅子を引いてくれ、マッサージを頼まずとも始めてくれた。
どういう基準でこの十人が選ばれたか聞くと、召喚で一番良いのをベルゼが選んだらしい。
ちなみに、コアができることはえげつなく増えており、召喚だけでも項目がかなり増えていて、領域管理も楽にできるように最適化されていた。
更に、人間界に関することもできて、なんと一兆DPあれば、太陽の国を買収できるらしい。いや、やらんけど。
そしてポイントはもはや桁が数え切れない程に膨れ上がっていた。
これは……。見なかったことにしよう。
ちなみに、あのメイドさんや執事さんは一人十兆ポイントらしいですよ。太陽の国が十個も買えちゃう!! もう、おかしすぎて何も言えない。
その内の一人にステータスを見せてもらう。
メイド
名前:無し
体力?
攻撃力?
魔力?
防御力?
速度?
知能?
技術?
運?
スキル
メイド、神
称号
死の下僕、万能神
おぅ……神であらせられましたか。
大丈夫、安心してください。ナントカナリマス。
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