ドラゴンへの道は血にまみれているようです
やぁ、僕だよ。トカゲだよ。
リミットは一年だからやってきたことを整理、そしてしっかり計画を建てないとね。
まず、進化したらおそらく寿命が伸びる。現に俺が見た光ったトンボはサイズこそ大きくなったが、石のトンボはもっとでかいものもいた。
個体差と言われればそれまでだが、おそらく幼体のようなものだと思われる。
現に石のヤゴは見たことがないが、ただのヤゴは見たことがある。
ヤゴというのはトンボの幼虫といえばわかりやすいね。割と柔らかくておいしいよ。
つまり、光ったのを進化と名付けるが進化はその魔物に転生するというのが正しいのではないだろうか。
だから僕は死にものぐるいで進化しないと。死んだらそこで試合終了だからね。
ということで仮説を立ててみたよ。
仮説1:場所の影響で進化する。
これはおそらくないであろう。だって、そこらじゅうにいるトンボが石のトンボまみれになったらこの世の終わりみたいな光景になるからね。
仮説2:敵を倒して進化する。
これはあるかもしれない。その時トンボはでかいハチを食べていた。
累積か、条件か、はわからない。が、おそらくは累積。
なぜなら、ハチを食べてるトンボは何度か見たことがあるけど、光ったりしてなかったからね。
後、運悪く条件から外れて進化できないとかだったら死んでも死にきれない。
精神論込になるけどこれがいい。
あと一つは年月によるものだけど、そんなにヨボヨボのトンボといった感じはなかった気がする。
ヨボヨボのトンボなんて見たことないけど。
ということで。僕が今からやることは力の限りの虐殺行為だね。
条件性の可能性も捨てきれないから今日は狙いにくいのも狙うよ。
まずは、目に入ったハエだ。あれはすばしっこい上に身が少ない。
だから基本狩らない。
勢いよく、ハエにつばを吹きかける。すると、粘着質のつばはハエを捉えた。
これこそが我らトカゲの特徴粘着質のツバだ!!小さいのなら動きを止められる。
ぶっちゃけ普段は使わない。
そしてもしゃる。うん、うまくはない。
そんな感じで狩りを続けた。今日の成果は。
·バッタ五匹
·トンボ一匹
·ハエ三匹
·カマキリ二匹
·ネズミ一匹
今日の成果で誇るべきはネズミだろうね。大きさは二十センチほど。
僕よりも見た感じはだいぶ大きい、体長ならしっぽが長いから勝つけど。
僕はトカゲの中なら実戦で鍛えてるだけあって最強を自負しているからね。狩りも食べる目的以外でも見つけ次第狩っている。
キリングマシーンとでも呼んでくれ。
ちなみに、ネズミは上から強襲した。首筋に一撃だ。
だけど、進化はしないね。普段狩るレベルだからだろう。
ウォーミングアップはここまでにして、次は狩ったことの無いあれ行きますか。
石のトンボ、一メートル。
え、無理って?やる前から諦めてたらドラゴンにはなれないよ。
作戦は決まってる。仕掛けで捉えて、やわらかそうな腹を食い破る。
心臓が止まれば死ぬやろ大作戦と名付けた。
まずは罠。罠はなんかよくわかんないけど頑丈なつるで適当に作成した。
締まるわっかがついてるだけ。器用な男子ってモテるよね。どうでもいいけど。
そして、それを木にくくりつけて完成。
トカゲの足でどうやったって?
なんか最近足の指が五本全体的に長くなって動かしやすくなったんだよね。
ずっと木を登ってたり、掴んで食べたほうが食べやすいから使った分器用になったのかね。わからん。
まぁとりあえずこれを木陰に隠して、そこの輪っかの中にしっぽを通して石のトンボがよくいるところで待機。
いてぇ!!食いついたな!!でかい羽音と鋭い痛み。それに負けずに、前に、とにかく前に、全力で進む。
すると規則的な羽音が乱れだす。頭に羽を巻き込まずにきれいに締まったようだ。
そしてしっぽを切り離して、暴れるトンボの腹に食いつく。
しばらくブリンブリンびたんびたんと叩きつけられる。
しかし耐えて、足で、最近生えてきた牙で、必死に食い破り内臓を食っていくと、ガリッと硬い感触に当たった。
不思議な感覚がする石だ。ただの石が躍動しているような感覚に襲われる。まさかこれが心臓?
やってやるさ。石のトンボの心臓が石でもおかしくはない!!やってやるさ。
半ばアドレナリンでおかしくなりつつも、ガリガリ噛んでいるとパリンと割れる。
甘い汁のような物が口の中にあふれた。こんなにも美味しいものがあったなんて、しっぽを切り離したかいがあったな。
そして、もともと暴れまわって疲れ果てていたトンボは動きを完全に止めた。
血塗れのトカゲは、のそりと外に出る。そして一日かけて食べ尽くした時異変が起こった。
そう、吐きそうになったのだ。いや、確かに食べすぎで確かに吐きそうになってはいたが、それではない。
体がチリチリと光が体を纏い、眩いばかりの閃光を放った。
なんだなんだ!!眩しい!!でも、心地良い光だね。高みに向かえるそんな気持ちになる光だ。
そして、そこに現れたのは一匹の一メートルより少し小さい程のトカゲ。体色は乾いた血のように赤黒く染まり、その牙は石をも砕きそうだ。そして奇妙なのはその足の形だろう。
例えるならば、トカゲ人間の手といった感じだ。早く駆けるには向いていないであろう足だがその脚ははちきれんばかりの筋量。
無理矢理にでもとてつもなく早く駆け抜けることができそうだ。
やった、やったんだ。
彼は雄叫びを上げ、天を仰いだ。小トカゲの頃に抱いた夢、それに一歩近づいたのだ。
あの頃から、いくつもの夜が明けた、しかしここまで清々しい夜明けがあっただろうか。
彼は数十年の時を経て、一歩進んだのだ。
人はそれを何がドラゴンだと、何年かかるんだよ、と鼻で笑うだろう。
しかし、彼の目にははっきりとそこまでの道筋が見えていた。
龍へと至る道が。
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ちなみに、打ち切りエンドではないです。二部終了じゃないです。
まだまだ続きます。