プロローグ 退屈な侵入
そこは魔法を使う者と魔法を使わないものが共存する国。
かつてはどの国の人々も魔法は使えたのだが、有りとあらゆる悪行に酷使された為、今や一部の人間のみ使用が認められている。
その悪行に使われた魔法は現在禁止魔法とされ地下深くに封印されているはずだった。
「貴様何者だ?」
地下への入り口を護る門番が侵入者と思しき人物に向かって槍先を首元に近づける。
「僕?僕はただ復習をするための材料を探しに来ただけさ。そこを退いてくれるかな?」
月も出ていない夜遅く。
彼の顔は見えなかったが、それはは静かに怒るような声だった。
「それはできない。手形でもあれば別だがな」
ここを通ることができるのは魔法管理局の局長と副長のみ。彼らにはここを通過するための特別な手形が渡されている。
「そうか……なら強行突破しかないかな?」
「ならばこちらもその気でいかせてもらおうか!その命頂戴するぞ!」
門番の言葉とともに槍先に雷が纏う。
それは一瞬だが暗闇に隠れていた彼の顔を照らした。
彼の顔は何故か笑っていた。
自分の死が近づいてるにも関わらず。
何か抵抗するわけでもなく直立不動のままの彼の心臓に門番は容赦なく槍を突き刺す……
門番は確実に仕留めたと思っていた。
それなのに手応えがないのだ。
よくよく見るとそこに彼はいない。
その槍は空振り、地面に小さく穴をあけていた。
「はぁ……つまらないなぁ……僕は復讐する為に強くなったのに……これじゃあの人に会った時瞬殺かもしれないな」
門番は腹部に違和感を覚えた。
そこには穴が空いている。
何が起きたのか理解する前に血を吐き、その場に崩れ落ちる。
彼が門をくぐった矢先警報が鳴る。
それを聞きつけた先程の門番と同じ武装をした者が何人もその道を塞いでいる。
「つまらない……非常につまらない……」
彼は襲いかかる者たちの攻撃をひらりと躱す、一人目は軽い蹴りで壁へと叩きつけられ、二人目は先ほどの門番のように腹部に風穴を開けられた。
彼の通るべき道を妨げる集団はその光景を見て恐れおののき一目散に逃げ出した。
彼はため息を吐きながら、肩を落としながら階段を下る。
つまらない。
つまらない。
つまらない。
つまらない。
何のために強くなった?
彼は自分に問いかける。
あの時見捨てられた復讐を遂げるためだろう?
漸く……これで漸く揃う。
これで復讐が完成する。
終わらせてやる。
魔法が支配するこの国を。