第十四話 二月期定例役員会
第十四話 二月期定例役員会
二月・三月の町内会活動は、三月の第四日曜日に開催される定時総会に向けての活動に占められる。先週は新年度役員選考会がすでに開催され、来年度の役員が決まった。そして今週、今日の土曜日は定例役員会で総会議案書の記載事項確認・予算案等の作成を行う。それを原案にして、明日の日曜には新旧の幹部役員が集まり更なる検討を行う。これから総会までは毎週土日は会議と議案書作成と総会準備に費やされるのだ。
それに加えて会計の俺は各部・各役職の決算報告書を取りまとめ、町会全体の決算報告書・各部活動費内訳書・来年度予算案等を作成し、二月の末までに監事による会計監査を受けねばならない。やっばりやるんじゃなかった会計。…まあ、予算案は町会長のハカセに作らせるけど。
「今年の新年度役員選考会は、去年のように我儘言って無闇に会議を引き伸ばす奴がいなくてよかったよな」
「…おい、ショウ君。その話題は先週イヤっていうほどやったよな」
「いや、俺にしてみればまだいじり足りないのだよ。なあ、堀ちゃん」
「そうですよねぇ。あの時、アタシが早く帰りたいがゆえに総務広報部長なんか引き受けちゃったのは、そもそも小西さんがグズったからであってぇ」
「分かった分かった。ほれ時間だ。役員会、始めようや」
「ちっ、しょうがない。いつもの反省会で初めからやるからな」
「ちっ、仕方ないですぅ。覚悟しといてくださいよぅ」
「こいつら……」
「あのなあ、墨田さん。老人会の決算報告書が提出出来ないってどういうことなんだよ」
「だからよう、まだ出来てねえんだよ」
「あのなあ、墨田さんよう。そもそも各部の決算報告書は一月中に提出するはずだったよな。老人会以外は全部提出していただいてるんだよ。それが間に合わないって言うから特別に老人会だけ延長して、二月の定例役員会までに提出して下さいってことだったよな?アンタ約束したよな?」
「な、なんだその口のきき方は!もう少しくらい待ってくれたっていいだろうがっ!」
「あのなあ、アンタ老人会の会長何年もやってるし、まして去年は町会長だ。明日の新旧合同部長会議でよ、町会の決算報告書もない、各部活動費内訳書もないじゃ会議も出来ねえじゃねえか。それくらい理解できるだろ?」
「分かってるよ!大丈夫だよ、明日の会議はちょっと先延ばしにすればよ、まだ二月も前半だ、な、ヒロシよ?」
「いや、こればっかりは東海林会計の言うとおりですね。もう明日には決算報告書・活動費内訳書・予算案を提示して新旧幹部役員で検討しないと議案書の作成が間に合いません。皆さんその予定で明日の日曜日の都合をつけているんですから、老人会さんの都合でそれを先延ばしにするわけにはねえ」
「いや、申し訳ないのは分かっているけどよう、そこをなんとかよ」
「あのよ墨田さん。老人会の会計は誰だ?これから電話するからよ」
「な、なんでだよ?」
「だって老人会も会計係が決算報告書まとめてるんだろ?だったらアンタじゃなく会計さんに出してもらった方が早いだろ?誰が会計やってんだ?」
「……俺だよ」
「…なんだと。アンタが会長やって会計もやってんのか?」
「そうだよ。しょうがないだろ、みんなめんどくさがって会計なんかやってくれねえんだからよ」
「…呆れたもんだな。なんという組織だ。まあいいや。それは老人会の問題だからな。だったらアンタが決算報告書を作成して提出すればいいだけの話じゃねえか。なんか提出できない理由があんのか?」
「…ほら俺もよ、入院したりして忙しかったしよ」
「…おい、いいかげんにしろよ。てめぇ、イボ痔の手術して退院したのは餅つき大会の翌日くらいだろうが?あれからもう一か月は経つぞ」
「あ、テメェなんで俺の痔のこと知ってんだよ?」
「ばーか、お前のイボ痔の話はノロになってから面白おかしく町会中に知れ渡っとるわ。いまさら何言ってんだよ」
「タッ、タダシ!テメェ!不愉快だっ!帰る!」
「おっとダメだ。アンタ上手く誤魔化して、いつものようにトンズラしようとしてるだろ?マサ、入り口ふさいでくれ」
「ちっ、しょうがねぇな」
「墨田さんよ、ほらマサが通せんぼして帰れないからよ、観念して理由を言えよ。なんで決算報告書の提出が出来ねえんだ?さぼってたのか?」
「ヒ、ヒロシ、こいつら横暴だぞ!い、いいのかこんなことしてよ」
「墨田さん、ご自分が無茶言っているのはお分かりでしょう?このままだと総会までの予定が全てダメになってしまいますよね。正直にお話いただけませんか?出来ることならお手伝いもしますから」
「……領収書が何枚かないんだよ」
「いつのだよ?」
「夏祭りの時のだ」
「正確には何枚なくて総額いくらだ?」
「枚数は分からん。金額は、えーと一万千八百円ちょっと。領収書なくてもいいかタダシ?な?」
「ダメに決まってるだろ。あのなあ、墨田さんよ。夏祭りの時だったら十月に中間決算があったよな。あの時、気が付かなかったのか?」
「いや、気が付いたんだけどよ、どうせ後から出てくると思ったからそのまま報告した。ほら中間決算は領収書の添付はいらないからよ」
「…どうしようもないな。墨田さんよ悪いけどその分の金は出せないから、その分を抜いた決算報告書を今日中に作って出してくれ」
「じゃあその約一万二千円はどうなる?」
「領収書がないなら一円たりとも出せない。アンタ個人で補填するのか老人会で補填するのか、勝手にしてくれ」
「何だよ、その言い方はよ!俺たちだって町会費を使い込んでるわけじゃねえんだぞ!夏祭りの食材かなんかで使ったのは間違いねえんだからよ」
「あのなあ、墨田さんよ。この町会はさ、アンタらが頑張ってくれてよ、運営も経理もしっかりやってくれてたから法人格も取得できたんじゃないのか?」
「そうさ、俺たち四菱のOBが苦労して作ったんだ」
「だったら法人格持った団体が領収書のない支出を認めるようなこと出来るわけねえだろが?いいか、アンタはな『俺たち夏祭りで十万円使いました、でも領収書は九万円分しかありません。でも十万円使ったのは間違いないので十万下さい』って言っているんだぞ。誰が聞いても馬鹿な小学生の主張だろ?」
「なっ、なんだとっ!」
「ストーップッ!ストップ。一旦落着きましょう。会計と老人会会長でヒートアップしても解決にはなりません。ショウちゃん頼む。少し黙って僕に任せてくれ」
「…ち、分かった」
「墨田さん、申し訳ないが私も会計さんの言うとおりだと思いますよ。墨田さんだって無理言ってるのはご自分でよく分かってるんでしょう?」
「……ああ」
「じゃあ落着いて思い出して下さい。老人会で食材を購入したのは一人でしたか、複数人でしたか?」
「確か大量に購入したものは公設市場で、調味料とかはスーパーでだったから、手分けして買出しに行った。当日も足りないものをスーパーに買いに行ったから何人かで買ったんだ」
「その人たちから間違いなく領収書を回収しましたか?」
「ああ、全員から……、あれ?どうだったかな。そう言われると…」
「あのとき墨田さん病気で調理は禁止でしたけど、買出しは行ったんですか?」
「いや俺は手伝うって言ったんだけど老人会のみんながよ、止めろ手を出すなって言うからよ、吉田に任せたんだよ」
「さすが、墨田回虫、あ、間違えた墨田会長」
「タダシてめえ!」
「ショウちゃん、止めろって。で、墨田さん、夏祭りの買出しは吉田さんが中心になって行ったということですね?」
「うん、そうだと思う」
「領収書がなくなったと気付いたときに、他の老人会の人に提出してない領収書が手元に残ってないか尋ねましたか?」
「先月の会合の時にそれとなく聞いたけど誰も残ってないと…」
「その会合は老人会全員が出席したのですか?」
「いや、半分も出席しねぇよ。吉田も欠席しやがったしよ」
「…なるほど。では墨田さん、これから吉田さんに領収書が手元に残ってないかどうか、それから買出しに行った人の手元に残ってないかどうか、この二点を確かめて下さい。皆さん領収書やレシートの重要性は理解しているはずですから捨てたりはしてないと思いますよ」
「…そうかな。で、今からか?」
「ええ、まだ八時半です。常識的な時間のうちです。領収書があればそれを含めた決算報告書を今晩中に作成してもらいます。なければさっき会計さんが言ったとおり、それを含めない決算報告書を作成してください。私と会計さんの二人は今晩ここで、明日使用する資料作成をしながら待ってますから、出来上がったらすぐに持って来て下さい。今晩中です」
「…明日じゃダメか?」
「町会長、もういい!こんな馬鹿にいつまでも付き合っていられねえや。俺がこれから吉田さんちに行ってくる」
「待て待て、行くから。俺が行くから…」
「町会長、こいつはダメだ。信用ならん。町会長から吉田さんに電話で事情説明して、一緒に確認してもらうよう頼んだ方がいい」
「大丈夫だよ、俺一人で行ってくるからよ」
「ダメだな。マサの言うとおりアンタはもう信用出来ん。吉田さんに付いてってもらわねえと途中で投げ出す恐れがあるな」
「あー、もしもし南田です。すいません夜分に。…はい、実はですね…」
「いいか、墨田さん。会長が今、吉田さんに説明してるからさっき言ったように領収書を持っていそうな人、全員に確認取ってくれ。見つかったらその時点で会長の携帯に電話してくれ。見つからなくてもだ。次の作業指示はその時に説明するからな。分かったよな?」
「私も同行しましょう。その方が確実だ」
「そうですね。じゃあ申し訳ないが小松崎副会長、一緒に行っていただいてよろしいですか?」
「分かりました。じゃあ墨田さん、行きましょうか?」
「…ああ、スマン…」
「じゃあ堀北部長、時間がもったいない。小松崎さんが帰ってくるまで議案書記載事項の確認やってしまいましょう」
「は、はい。では配布した仮議案書に沿って確認していきますぅ。一ページ目は『総会次第』となりますぅ。1の開会の辞から始まり……」
「いや、すまんかった。このとおりだ。まさか老人会の会計報告がこんなんなってるとはな。町会長、タダシ、迷惑かけた、申し訳ない」
「いえいえ、吉田さん。頭上げてください。吉田さんのおかげで領収書も見つかったんですから、なぁショウちゃん」
「ええ、そうですよ。今晩中に会計報告いただければ何の問題もないっすから」
定例役員会も終わりふるさと会館に残っているのはいつもの俺たち三人と堀北総務広報部長・浅井婦人会会長、そして老人会を代表して吉田さんが一連の騒動の謝罪に来ている。
「二人にそう言ってもらえると助かるぜ。まさか老人会の会計報告がこんなことになっているとはなぁ。もう何年も墨田さんが会計と兼務で会長やってたからよ、任せっぱなしの俺たちがいかんかった。報告書はほとんど出来てるみたいだから、日付が変わる前には墨田さんに届けさせる。本当に悪かった」
「もういいですって、ハハハ。でも会長と会計の兼務はいろいろとまずいでしょう?」
「そうなんだけどよ、ここだけの話ということで聞いてくれ。あのな、墨田が会長やるとな、事務局長とか会計をやるって人がいなくなってな。今年度は俺が事務局長やってやったんだけどよ、会計やる奴がいなくてよ」
「あれだけ会員いるのにっすか?」
「いや、タダシよぅ、頭数は七十はあっけどな、実際に会合とかに出てくるのは三分の一ってとこかな。それによ、やっぱり四菱OBは煙たがられててよ……。ま、老人会もいろいろあってな、はは」
「はあ、それで墨田さんが会長やるときは自分で会計もやってんですか?」
「まあ、そういうことだ。あいつ、ああいう性格だろ?人に頭を下げるのが嫌だからさ、誰かに頼むより老人会の会計くらい自分でやっちゃえってな。今まではそれでもなんとかやれたんだけどなぁ、やっぱ無理があるよなぁ」
「結局領収書は青山さんが保管してたんですって?」
「おう、町会長から電話もらった時に夏祭り関係の領収書って聞いてな、前日までのは全部俺がまとめて墨田に渡してっからよ、当日分の買出し担当の青山さんしかいねえなと思ったわけよ」
「青山さんが会計兼務の墨田さんに渡さなかったってことですかね?」
「いやな、青山さんの話によるとな、祭りの夜に模擬店の販売品が品切れになってよ、当日分の買出しが終了したってんで領収書をまとめて墨田に渡しにいったらな、涼しい会館の中で酒飲みながら『今夜は浴衣着ててポケットないから後でもらいにいく。見りゃ分かんだろ』って言われたんだと。青山さんもカチンときたらしくてな、その後ウンともスンとも言ってこないけど自分で取りに来るって言ったんだからほっておけってなってな」
「あー、なんか青山さんの気持ち、分かるなあ、マサよ」
「ああ、捨てなかっただけでも大人だよな」
「墨田も墨田で領収書が足りないとか言ってくれたらよ、こんなギリギリまであたふたしないでお前らにも迷惑かけなかったんだけどな、すまん」
「いえ、ホントにもういいですって。でも老人会もあの人には手を焼いてるってとこですかね」
「うん、まあな。あいつ昔からああいう性格だろ?会社でも浮いててな、四菱の亀有工場が移転したときにリストラされなかったのが不思議なくらいでよ。老人会でも野球部でも揉め事が多くてな。去年は町会長やっててくれて老人会の方は平和だったんだけどな、今年戻ってきただろ、正直なところ扱いに困ってんだわ、俺たちも」
「…なんというか。吉田さんたちも大変ですねえ」
「ああ、一昨年まではタダシの親父さんがいてくれたから良かったんだけどな。東海林さんが亡くなられてからは面と向かって、あの馬鹿に意見してくれる人もいなくなっちまったからよ。なんか勘違いしてんだよ、墨田はよ…」
「正直、墨田さんの言動が老人会全体のイメージダウンになりつつありますからねえ、放っとけないっすよ」
「そうなんだよ。今年はヒロシが町会長でよ、夏祭りや餅つき大会で老人会を立ててくれてたのによ、墨田一人で足引っ張ってるみたいだしな。老人会も会員が増えてきたしよ。これからは俺たちも遠慮しないであの馬鹿を注意するわ」
「申し訳ないですねえ、よろしくお願いします」
「ああ。今日は本当にすまんかったな。これから墨田んちに行って、早く決算報告書持って来るよう言っとくからよ。悪いけどこれで失礼するわ」
「どうもありがとうございました。助かりました」
吉田さんは背中を丸めて足早にふるさと会館を出て行った。
「なんか墨田さんのイメージが変わるようなお話でしたねぇ」
「そうかい堀ちゃん?俺たちにしてみりゃやっぱりなっていう感じだけどな」
「でも去年の町会長さんだし、老人会でも毎年のように会長やられてたって聞いてましたから」
「うん、浅井さんや堀北さんにしてみれば意外な感じはするかもねぇ」
「な?堀ちゃん。あいつは昔から小物なんだよ。体も小物なら人間的にも小物なんだよ。俺やマサがさ、ぞんざいに扱うのも無理ないだろ。その程度の男なんだって俺たちは子供の時から本能的に察してたんだよ。だから久しぶりに町会でな、役員としてあいつに再会したときにさ、なんでこいつは墨田のくせに偉そうにしてるのか不思議だったんだよ」
「うーん、まあ墨田さんのことをよく知っている人ほど扱いはぞんざいだよね。だから老人会でも『墨田さんだから会長さん』じゃなくて、『会長なんか墨田にやらせとけ』っていうのが実情らしいよ」
「高校の生徒会長みたいなもんですねぇ」
「ハハハハ、そうだねえ。だから町会じゃそれを知らない人の方が多いから、態度も自然と大きくなっちゃっうんだろうね。浅井さん、そんな感じだったでしょう?」
「ええ、去年はノリノリで町会長やってましたからね」
「ふふふ、そりゃ大変だったろうな」
「まあ今年も顧問でデカイ顔出来ると思ってたんだろうけど、マサと俺がしょっぱなからそいつをつぶしちまったからな。奴にしてみれば予想外だったろうな、うははは」
「二人ともずいぶんヒドイことしましたからねぇ」
「おい、堀ちゃん、これでも遠慮してんだけどなぁ」
「そうは思えませんけどねぇ」
「ハハハハ、でも老人会もいろいろあるみたいだよねえ」
「ああ、吉田さんもハッキリとは言わなかったけどな」
「お、なんだマサ、何か知ってんのか?」
「老人会もだんだん四菱色が薄れてきたってことだよ」
「なんだそれ?やな色だな。でもそりゃしょうがないんじゃないのか?悪いことでもないだろ?なあハカセよ」
「そうだねえ。子供会や婦人会は会員が減ってきているけど老人会だけは増えてるからね。そもそも町会役員と違ってこの三団体は強制力がほとんどない。会員が増えてるだけでもたいしたもんだと思うよ。ただこの増加している老人が今はほとんどが四菱とは無関係の人ばかりだから、うちの老人会は今いろいろと問題が表面化してきたみたいだね」
「どんな問題なんですかぁ?」
「うん。昔は老人会イコール四菱OBという図式だったから、老人会の運営とかツーカーでよかったんだ。でも年々四菱関係者じゃないご老人が増えていけば、そのツーカーがおかしいだろっていう意見も増えてくる。そういった力が大きくなってんだよ」
「派閥争いみたいなもんですかぁ?」
「そういうこと。四菱OB派と反四菱派。今まで四菱OB派は圧倒的な多数勢力だから当然の如くやりたい放題だったけど、ここ数年反四菱派の数が増えてくると当然反対意見も多くなる。まして七十五歳以上がほとんどの四菱OB派は人数は減る一方だし個々の活力も低下。対して七十五歳未満を主体とする反四菱派は数は増えるわ元気はいいわ頭はいいわ」
「頭いいのか?」
「もともと四菱の下っ端社員が主体の爺どもだし、老化は進んでるし。まあ比較論だな。そいつらに比べればいろいろな経歴の団塊の世代が主体のご老人たちだ。正論でやりあえば四菱OBがかなうはずがない。会合でも老人会規約とか町会規約を持ち出して四菱OBをやり込めてるそうだ」
「なるほどな。そんな人たちからすれば墨田みたいな馬鹿は一番受け入れがたいタイプだもんな」
「正直、老人会がこれからどういう組織に変化して、町会という上部組織にどんな影響を及ぼすのか僕には分からないけどね。町会役員としては今みたいに適当におだてれば、祭りや餅つき大会なんかの手伝いを喜んでやってもらえる便利な団体でいてもらいたいなぁ、ハハハハ」
「相変わらず腹黒いご意見だな、町会長」
「ハハハ、でも近い将来この町会も老人だらけになれば、老人会どころか町内会もどうなるか予測がつかないよね」
「おそらく町内会イコール老人会みたいになるんだろうからな。専担の町会長とか会計とか、役員自体が報酬もらって専従でやってもらうとかな。俺はそれでいいと思うけどな。でも絶対俺はそんなのやりたくないけどよ」
「うん、報酬もらえればやりたいって人は出てくるよね。僕はやりたいかも」
「お前は無報酬でやれよ」
「そうだ、それどころか金払ってやらしてもらえ」
「ハハハ、ひどいよ二人とも」
―ガラッ!
「遅れてスマン!タダシ、老人会の決算報告書が出来た。チェックしてくれ」
吉田さんに付き添われて決算報告書を届けにきた墨田は何も言わず俺のチェックが終わるまで神妙に待っていた。立ったまま待っているので座るよう促しても立っているので
「余計やりづらいから座ってくれよ」
「そうですよ、お茶入れますから座って下さい」
と浅井さんに言われてようやく座った。どっちにしてもそばにいられるとウザイので決算報告書のチェックを俺が二回、ハカセに一回してもらい異状がないことを確認しとっとと帰ってもらった。吉田さんに連れられて帰っていく墨田の姿はいつもより小さく見えた。
これからハカセと二人で明日の新旧合同部長会議で使用する資料作成、つまりは総会議案書原案の作成をするため、いつもの反省会はお開きとなった。日付も変わりそうな時間になってしまったので、浅井先生と堀ちゃんを送っていくようマサに頼んだ。律儀に戻ってきたマサと三人で資料作成を行ったのはいいのだが、途中でいつもの馬鹿話なんぞ始めたり夜食を食いににんたまラーメンまでドライブしたりしていたので、結局完成したのは夜も明け始めた頃になってしまった。




