エミリアの力
テーブルにポトポトと雫が落ちた。
見上げると、お茶のカップを片付けながらエミリアが泣いて居た。
「どうしたの?」と僕は心配になり聞いてみた。
「あれ、、どうしたのかな、、変ですね。」
エミリアは笑い顔を作りながら、溢れる涙を指先で拭った。
僕は立ち上がり、彼女の傍に寄り添った。
「本当にどうしたの?エミリア。」
僕は彼女の肩を抱きながら、ティーカップを持つ手に手を添えた。
「良く分からないんです。考えると、何故か涙が溢れちゃって、、。」と涙声で、笑おうとする。
「落ち着いて、座って話してごらん。」
僕は肩を震わせて涙を流しながらも、僕に笑顔を向けようとするエミリアを、ソファに座らせた。
「こんな気持ち、感じた事無くて。 どうしたら良いのか分からなくて。」
ソファに座ったエミリアは、僕を見上げながら戸惑い、拙つたない言葉で伝えようとした。
「ゆっくり話してごらん。 その気持ちの事をね。」 と、僕は出来るだけ優しく呟いた。
目を閉じて、目尻から零こぼれる涙をそのままに、エミリアは話を始めた。
「ユウトが妹を大切に想う気持ち、私分かるんです。 私にも兄妹がいますから。」
小さな、囁くような声で『みのり』の事を話した。
「お友達を大切にする気持ちも、分かります。 村に居た頃は、私にも友達が居たから。」
またテーブルに涙を零しながら、エミリアは言った。
「だからユウトが私にしてくれる事を、妹さんとも友達ともしなかったのを知ってます。」
僕は何の事を話しているのか分からなかった。
「ユウトが私を大切に思ってくれていて、私に『小さな家族』が出来たら良いなと、思ってくれてるの知ってます。」
僕はまさかと思いながらも、ただ言葉も無くエミリアの話を聞き続けた。
「でも今日ユウトが、あの少女と、私と同じ様に『小さな家族』作ろうとしたのを知ったら、胸が苦しくて、涙が出てきちゃって。 変ですね。」 と目を閉じて涙を浮かべながら、また笑おうとした。
エミリアは、『ほのか』の事を知っている。 みのりの事を。 ユナの事を。
「私はエルフだから、心を読む私たちは、だから嫌われるんです。」
僕の心に浮かんだ「何故?」に答えるかの様に、エミリアは呟いた。
「ごめん、エミリア。」
エミリアを失うかも知れない恐怖を、帰ってエミリアの居ないこの部屋を想像し、僕は胸の中が苦しくて、ろくな言い訳をする余裕も無かった。
ずっと一緒に暮らして行きたかった。
「おかえり」と彼女が言ってくれるのが何より嬉しかった。
もし妊娠したのなら、結婚して家族になりたかった、、、
エミリアは僕の腕の中に飛び込んで来て、僕の首に手を回して引き寄せると、激しくキスをした。
「もう良いの。ユウトが私以外と『家族』を作ろうとしないでくれるなら。今のその気持ち見たら、私、安心だから。」
エミリアは自分の「嫉妬」の感情が分からず、戸惑い、傷付いたのだろう。
僕はもう二度とするまいと心に誓っていた。
何故なら、愛しているし。 浮気しようにも筒抜けだったから。
2人でお風呂に入り、僕は幸せを感じていた。
「君は僕が愛してる事、見えてるんだね。」 と聞いてみた。
「うん。」と答える彼女が可愛かった。
濡れない様に金髪をアップにまとめた彼女が、どうしようも無く可愛かった。
「今朝お友達のユナさんを、私と間違えてキスした事もしってます。」
エミリアは俯きながらそう呟いた。
「お友達だから、キス位は当然みたいですね? ユナさんには。」
そう彼女は僕に言った。
「でも、どうしてだろ。 凄く胸が痛いの、、」
そう言ったエミリアを、僕はきつく抱きしめていた。
彼女の中に生まれた「独占欲」を、少しだけ感じながら。




