佐藤さんの家
テーブルに戻り、何処に家を買うかで揉めている二人に話しかけた。
会話を聞いていたら「ニューヨークが良い。」だの「スイスの方が良いわよ。」だのと訳が分からなくなって居たので、止めるには丁度良いタイミングではあった。
「実は細貝さんがね、何回か殺されかけたらしいんだよ。」
僕はそう切り出した。
「それ本当の話?」 瑠奈は唖然として僕に聞き返した。
「らしいんだ。 僕は後1時間位しかこの世界に居られないから、護る事出来なくてさ。」 と言うと。
「私たちに護衛しろって言うんでしょ?」
みのりがストローを咥えて弄びながらそう言った。
「先生にも秘密打ち明けて、金魂で『結界』張らせれば良いじゃない。」 と、瑠奈は「なんでそれに気付かないかな?」と言う目付きで僕にいった。
「それも考えたんだけど、君達みたいに使い慣れてないとさ、部屋の中とかでいきなり結界を拡げたりしたら、、」
「家が内側から吹っ飛んじゃうかもねw」
みのりは笑いながらそう言った。
「確かに細貝先生は凄腕だけど、ネクタイとかいつも曲がってるし、チャックとか半開きだし。 不器用そうな気はするわね。」
瑠奈は眼鏡を直しながら、溜め息混じりでそう言った。
僕は事務員の佐藤さんの住所を書いたレシートを、瑠奈に渡しながら「頼むね、瑠奈。」と呟いた。
ポケットから金魂を取り出すと、二人に5個づつ渡した。
「これ、どうしたら良いの? おにいちゃん。」
キョトンとした顔で僕を見ながらみのりは聞いてきた。
「暗殺だとか物騒な手を使う相手だから、二人とも必要だと思った能力が欲しかったら『魔魂』で手に入れて良いからね。」
僕は、本当に良いのだろうかと悩みながらもそう言った。
「僕にとって二人は、本当に大切だから、、」
この言葉は本心だった。
僕はスマホのナビを使いながら、事務員の佐藤さんの家を探していた。
あまり高度を取って飛んでいると、自分が今、表示されたナビのどの上空に居るのかが分からず苦労した。
佐藤さんの家は松本市近郊の、四賀村と言う過疎の進んだ寂れた村に在った。
山裾にあるその家は、周りを森に囲まれた古びた洋館だった。
今にもチェーンソーを持った大男が、剥いだ人の顔の皮で作ったマスクを着けて出てきそうな、そんな不気味な雰囲気が漂っていた。
「いやぁ 遠い所を来ていただいて恐縮です。」 と、洋館の玄関のドアの、細く開いた隙間から顔を覗かせながら、細貝弁護士はそう言った。
「昨日佐藤さんの車に乗せてもらっていた時に、狙撃されましてね。こんな隙間からすみませんね。」
彼はドアを開けながら、僕を手招きした。
「先生、蚊が入りますから早く閉めてくださいね。」
奥から声がして、佐藤さんが現れた。
「突然来て、すみません。ちょっと先生に渡したい物があって。」
僕は相変わらずの佐藤さんの無愛想さに、思わず言い訳じみた挨拶をしていた。 顧客なのに、、
僕は時間も無かったので、手短に異世界の事から始まる自分の境遇を話した。 そして妹と元彼女が今夜護衛に来る事も話した。
「まあ確かに白鳥さんも妹さんも、銃で撃たれても怪我さえされなかったですからね。そう言う不思議な事も、世の中にはあるでしょう。」 彼は頷きながらそう言った。
「佐藤さーん、あの、お客さんの寝室って」 と細貝弁護士が廊下の奥に向かって言い終わる前に、、
「もう二人分、ご用意出来てます。」
事務員の佐藤さんは、廊下の奥から無愛想な声でそう言った。




