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ハーフライフ  作者: スノウ
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金の球、銀の球

 


「そろそろ帰らないと叱られるから。 わたし、本当に嬉しかったです・・・」


意を決した様子でエミリアは、突然それだけ言うと駆けて行った。


走り去る彼女の後ろ姿を見ながら、売られた彼女達がどれ程過酷な生活を強いられているのかと思ったら辛かった。


しかし今は自分の置かれた状況さえ把握しきれて居ないし何より無一文だった。


先ずはこの街を知らなければならない。


生活の糧を得られなければ飢えて死ぬだけなのだから。


女主人に聞いた道を歩いて行くと、程なくひときわ大き建物の前に辿り着いた。


看板の文字は日本語のカタカナにも平仮名にも、ましてやアルファベットにすら見えない初めて見る文字で書かれていた。


何故かその文字を理解出来ている僕が居た。 


いや、そもそも僕は今日本語を話して居るのだろうかそれさえも分からなかった。


看板に書かれた『魔魂換金所』の文字を見て、ここが倒した魔獣が落とすと言う金や銀の玉を換金する場所なのだと理解した。


向こうで妹と晩御飯を食べに出たのが確か午後6時だった。


あの後この世界に転移してからどの位経ったのだろうかと、スマホを出して時間の経過を確認した。 


ディスプレイはカウントダウンタイマーのまま『09:45:32』を表示した。


転移してから2時間15分過ぎた訳だ。


カウントダウンを回していても意味が無いと思いリセットしようとタップした。 


だがカウントダウンは止まらなかった。


メイン画面に戻し時間を見ると20時17分を表示した。


時計は壊れていない様だった。 


他の機能はどうか?と試しに『魔魂換金所』を撮ってみた。カメラは使えた。


そうこうしてスマホを確認していたら換金所に入って行く二人連れの狩人の姿が目に入った。


まだ開いているのだろうか? 中を見ておきたかったので僕も恐る恐るドアを開けた。 


換金所の中は20畳程の広さで、6つのランプが灯されていた。 


ランプの灯りは眩しい程で、光源がとても炎とは思えない明るさだった。


受付は2つあり先ほど入った二人連れも含めて5人の狩人が並んでいた。 


換金の様子を見ていると、受付の小窓から出された木の皿に狩ってきた金や銀の珠を入れて小窓から渡していた。 


しばらくすると小窓からは、それぞれの稼ぎに応じた金が渡される仕組みのようだった。 


まるでパチンコの景品引き換え所の様だった。


魔獣から落ちると言う珠は直径1センチ程で、パチンコ球程のものだった。


部屋のランプ1つが暗くなり始めた。 


すると換金所の中の小さなドアが開き、初老の男が現れた。


男は歩み寄るとランプの蓋を開け、ポケットからあの銀色の珠を摘まみ出した。


ランプの蓋から指先を入れ「パキッ」と珠を潰す音がした。するとまたランプは明るく輝き出した。


男は仕事に戻るためドアに向かいながら潰した珠を床に捨てて居た。


僕は玉を観察したくてわざとポケットから財布を落とし、財布と共にそれを拾ってみた。


掌の上の潰れた珠は、厚みは1ミリ程で中空だった事が見てとれた。


キラキラ輝く銀色のそれは、材質は分からなかったが意外に比重のあるものだった。


よく見れば床の所々に捨てられ踏み潰された珠の残骸が落ちていた。


足元に捨てられた金色の残骸も拾ってみた。


踏まれたらしく潰れてはいたが、銀のと同じくやはり中空だったらしい事が見て取れた。


換金所のシステムはこれ以上見る事も無かったので、僕はそそくさと部屋を出た。






夕食に食べたのがエミリアと半分に分けた硬いパンだけだったので空腹だった。 


財布は持っていたがまさか日本円を使えるとも思わなかった。


明日は何とか仕事を探して食い物を手に入れなければと切実に考えた、


スマホで時間を確認するといつの間にか零時を過ぎようとしていた。


タイマーは相変わらず動いていて、表示は『06:02:42』を示していた。


明日のために寝ようと通りをぶらつきながら横になれる場所を探した。 


通りの外れにベンチを見つけたので横になった。


あちらの世界でも職探しでハローワーク通いだったが、まさか異世界に来てまで食べる為に職を探さねばならないのかと思うと深い溜め息が出た。


明日のためにと思い目を閉じると、僕はいつの間にか眠りに落ちていた。



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