Youtubeの間抜け面
「ミシッ、、ミシッ」 窓を閉めきったフィットの車内まで、床から伝わる不気味な音が聴こえた。
車体長3.8メートルのホンダフィットは、8畳間の僕の部屋の中にピッタリと収まっていた。
木造住宅の実家の、2階の僕の部屋の中に。
重さ1.3トンの重量が、ミシミシと、床に音を立てさせていた。
息をするのも怖い。 一体どうすれば良いのか、、
「お、おにいちゃん、、これヤバく無い?」 また僕のベッドで寝ていたみのりは、その光景を見ながら恐る恐るそう言った。
頼むから動かないでくれと僕は思いながら、そっとリアシートに手を伸ばし皮袋を探った。
金と銀の魔魂の入った袋に指先を滑り込ませ、色も見ずに玉を潰した。
「浮いてくれ!」と念じながら。
一瞬車体が揺れ、「床が抜けたかのか?」と覚悟した。
サイドウィンドウから見えていた、ベッドに座っていた妹の顔が見えなくなった。
重さ1.3トンの車体は、僕の部屋の中で浮いていた。
ドアを開け、フローリングの床に降りた。
ベッドの上で唖然とした顔で座る、妹の横に腰を下ろした。
「これ、いつまで浮いてるの?」 床から50センチほど浮いているフィットを見ながら、みのりは聞いて来た。
現実感の無い光景を見ながら、「わからない、、」 僕は呟いていた。
掌の中の潰した珠を見た。今ごろ潰したのが銀魂だったのを知った。
魔力が切れたら家の床が抜けると思い、急に心配になった。
僕は浮いたフィットに登って、珠の入った皮袋から、銀より魔力の強いと聞く『金魂』を探し出し、「浮け!」と念じながら珠を潰した。
目には見えなかったが、その瞬間、空間に何かが満ちるのを感じた。
みのりも異変を感じたのだろう。
「何? 今何だか変な感じしなかった?」と、僕に聞いて来た位だったから。
浮いたフィットから降りると、ようやく僕はホッとした。
「みのり、ただいま。」 間の抜けた顔で浮かんだ車を見詰めている妹に、僕は声をかけた。
「あ、、うん。 おかえり。」
寝起きで夢を見ている様に感じたのか、手の甲で目頭を擦こすりながら彼女は言った。
僕は窓から外に車を出せないものかと、両手を使い幅や高さを計ろうとした。
すると急に我に返ったみのりが浮かんだフィットを見ながら、「まあこれ見たら納得したんだけど、、おにいちゃん! 大変な事になってるよ!」と、窓枠を計っていた僕に言い出した。
「ん? なんの事?」
僕がそう聞くと、妹は浮いたフィットを避けながら、部屋を出て行った。
「これ見てよ。」
そう言いながら、開いたノートブックを持って来た。
ベッドに並んで座りながら、持って来たパソコンを見ると、そこにはYouTube の動画が再生されていた。
ハマーを持ち上げて「そこどいてくれ。」と、僕の顔が叫んでいた。




