兄妹
写真に映る老人の不気味さに僕は画像ファイルを削除しようとした。
しかしそれは同時にこの絵を二度と見れなくなる事を意味していた。
結局僕は写真を消す事は出来なかった。
スマホの電源を落とすといつの間にかかいた嫌な汗を流す為にシャワーを浴びる事にした。
今日は平日だったから父も母も仕事で高校2年になる妹のみのりも居なかった。
親は親で「就職しろ」口うるさかったし妹はまた違った意味で面倒だった。
みのりは僕より五つ年下で小さな頃から甘えん坊だった。
「おにいちゃん、、おにいちゃん」とカブトムシを獲りに林に行くにも近くの川に魚を捕まえに行くのにも付いてきた。
でも流石に僕が中学生になった時には一緒にお風呂に入ろうとするのだけは止めさせた。
それでも隙を見て何度も入って来る度に僕は股間を両手で隠して怒る振りをした。
その頃思春期だった僕は幼児体型とは言え妹の裸に反応してしまう自分が嫌だった。
大学は名古屋だったから当然親元を離れる事となった。
大学へと向かう前日の夜だった。
ベッドで横になりうとうとしていると夜中にみのりが部屋にやって来た。
「おにいちゃん、寂しいから一緒に寝よ」
自分の枕を胸に抱いて彼女はそう言った。
明日から僕はこの家を離れるから、みのりも寂しがってくれてるのだなぁと思うと「仕方ないな、おいで」と答えていた。
みのりは中学2年でテニス部に入っていた。
兄の僕が言うのも何だがスタイルの良い妹は目鼻立ちが整って、はっきり言って美少女だった。
それだけに彼女の後でお風呂に入る時僕は、意識して脱衣入れから見えるパンティやブラから目をそらしていた。
理由は単純な事だった、もしも妹に「異性」を意識したらと思うとそれが怖かった。
「おにいちゃん、夏休みは帰って来る?冬休みは?」
枕に回した僕の腕の中でみのりは寂しそうに聞いた。
「帰るよ、みのりの顔見れなきゃ寂しいからね」
寂しがる妹が可愛くて、微笑みながら僕はそう言った。
「本当?」
「当たり前だろ」
これは素直に本心から出た言葉だった。
やがて僕は眠気に負けて目を閉じた。
何か柔らかく温かいモノが唇を塞いでいた。
気付いたらみのりが僕の上に乗り僕の両手首を押さえつけながらキスしていた。
抗えば抗えたろう。何せ相手は中学2年の女の子なのだから。
僕はされるがままにキスをした。
心の中のどこかでいずれ僕達は間違いを犯すだろう予感をしては居た。
求めてくる妹の舌に僕は流されるまま舌を絡めてた。
翌朝の僕らはまるで何事も無かったかの様にお互い「おはよう」と言い、僕はそのまま大学のある名古屋へと旅立った。
これは僕達の、誰にも言えない共犯の記憶だった。
僕はシャワーを浴びた。設定温度を下げ冷たい水で頭を冷やそうとした。
「きゃっ! 冷たいよ、おにいちゃん」
いつの間に入ってきてたのかみのりが僕の背中に裸で抱き付いて来た。
「みのり、、お前ももう高3なんだから、一緒に入っちゃ駄目!」
温度を上げて温かいお湯をみのりにかける。風邪を引かせたくないから。
「兄妹なんだから、良いの。」
「あのなあ、、」
みのりはシャワーソープを手に取り、僕の身体を掌で洗い始めた。
「ちょ、ちょっと待って、みのり。」
僕は恥ずかしさで股間を押さえ、逃げようとした。
「もう、おにいちゃんは、、兄妹なんだから別に恥ずかしく無いでしょ?」 そう言いながら泡だらけの手で僕に抱き付いて来た。
「当たってる!当たってるよ、みのり。」
背中に当たる乳房に僕は気が動転し、転がり出るように浴室を逃げ出した。
「もう、変なの。 おにいちゃんは。」
浴室からみのりの残念そうな声が聞こえた。
そんな面倒な妹が、僕には1人居た。