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向き不向きが有ると気付くのに、それほど時間は掛からなかった。
それは生まれ持った反射神経であったり、勘の良さであったり。
または個々の集中力の違いも理由なのだろう。
何度試してもミスをして、近距離での速射が苦手で涙まで浮かべたメリルだった。
しかし遠くの的に当てるのは誰よりも早く、それはエミリアやカイルをさえも凌ぐ腕だった。
逆にミアを始めとする何人もが、遠くの的に当てる事が苦手だった。
しかし近距離での速射や、指先からの同時撃ちの才能には秀でていて、教えるカイルもうかうかしては居られない程だった。
試しに拳銃やライフルを持たせて撃たせてみた。
最初はその音と反動に驚いて居たが、それに慣れる頃には的を外す娘など皆無だった。
メリルと変わらない、背の低く幼い体つきのサラがライフルを持つと、カイルの目にもそれは不釣り合いに見えた。
身長を越える大きなライフルを苦労して据え付けて、はるか遠くに置いた的に易々と当てると、二人は不満そうな声で言っていた。
「近すぎるよ、カイル。」 と。
これならそうそう当てられないだろうと、20リーグを越える距離まで離れて、高い樹の梢に縛り付けた木の的を、縛り付ける端から吹き飛ばされた時にはカイルも絶句した。
風で揺れている樹の的だった。
梢など左右に、両手で広げた幅ほども揺れている的だった。
それは青い光を撃つ時も変わらずに、メリルとサラは当て続けた。
「遠い的を撃つのは、二人には敵わないわね。」
エミリアもそれを見て、呆れながらそう言うばかりだった。
確かに『安産のお守り』の青い光の玉は、残弾を気にせず撃ち続けられるし威力も大きかった。
しかしそれにも弱点が在ることにカイルは気付いて居た。
それは射手の位地が一発でばれると言う事もだったし、弾筋が曲がらず進む青い光は、落差を計算して隠れた的に当てる事は出来なかった。
それだけに拳銃やライフルにも慣れさせておく必要を感じていた。
早速今夜から始める見張りの、当番のジェシカ達四人が仮眠をとるために、町長の家へと帰って行った。
昼間は二人のペアで充分だろう警備も、魔獣の力の強くなる夜は、4人で警備しようと話し合っていた。
音の無い『安産のお守り』の攻撃だったなら、住民を起こす事無く撃てるので。
夜に彷徨く魔獣を「的にして練習出来るわ。」と彼女達はワクワクしながら飛んで行った。
町長や商店街の人達が気遣って、彼女達に二軒のレンガ造りの空き家を用意した。
最初は一人一人に個室が出来て喜んでいた。
「みんな行けば、この大きな部屋は誰が使うの?」 と、メリルとサラが言い出して、町長に相談していた。
家に残りたいと言う二人の言葉に、彼は笑みを浮かべて喜びながら二人の頭を撫でていたのを、エミリアは思い出していた。
まるで孫娘の様に可愛がる町長を見て、つい最近まで毛嫌いされて避けられていた自分達にも、少しづつ居場所が出来てきたのだと感じ、嬉しかった。
「ご飯は面倒だから、町長の家で食べさせて。」
そう言い出したのはミアだった。
何が変わる訳でも無く、町長の屋敷で過ごす彼女達に、一番に喜んでいたのは町長なのかもしれない。
最初はエルフを毛嫌いしていたあの家政婦の彼女まで、「食べるのは良いですけど、ジェシカとサラはお野菜を残したら許しませんよ!」
そう嬉しそうな顔で言っていた。
エミリアは思う。
何故人が居て、自分達エルフが居るのかと。
姿に違いなど無く、言葉さえ交わせるお互いだった。
ほんの小さなきっかけで歩み寄ってくれた人達が居る。
愛する男は「人」だったし、家族の様に思ってくれる友人達もみな「人」だった。
いつか垣根など崩れ、ここブリデガルドの様に生きていける世界が来る。 そんな予感がした。
「ユウトなら、変えてくれる。」
カイルと競争して射撃をし、飛び回る彼女達を見ながらエミリアは小さく呟いていた。




