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ハーフライフ  作者: スノウ
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当然のご褒美


もう何十回目かの往復になる、大型バスを屋上に降下させた。


疲れ切っていた。 たった一人で7400人を救おうと、トイレに行くのも我慢しながらバスを往復させていた。


スマホに着信があった。 ディスプレイを見て、ユウトからの電話だと分かった。


「もしもし、、」


もう間に合わないと分かっていた私は、泣きそうになる気持ちを抑えて電話に出た。


「瑠奈、全員を助ける方法が見つかった。 みのりと一緒にロングビーチまで今すぐ来てくれ。」


ユウトは上擦うわずった声でそう私に言った。


「でも、、バスの人たちを運ばなきゃ、、」


私はぼんやりとした頭でそう答えて居た。


「バスじゃ間に合わない。 今すぐ来るんだ。」


彼は少し怒ったような声で、私にそう言った。


隣に降下したバスにも、消防士の案内で次々と被災者達が乗り始めていた。


風が強いから煙が上に上がらずに、西へと流れていた。


もし風がなかったら、この屋上の人達もただでは済まなかったろう。


私はたなびいて行く黒煙をぼんやりと見ていた。


「瑠奈さん! おにいちゃんがすぐ来いって。 行くわよ。」


手に持ったスマホを見たら、いつの間にか電話は切れていた。


運転席の窓から腕を掴まれて、みのりちゃんに引き吊り出された。


「no! no!」


「help! runa!」


後ろから、何千人と言う被災者たちの悲鳴が聞こえて来た。


「逃げる訳じゃ無いのよ、、ユウトが呼んでるの、、ユウトが、、」


みのりちゃんに手を引かれ、私は飛んでいた。


振り返ると、立ち上る黒煙でビル群は煙り、かすんで見えていた。


「ごめんね、、」


私は逃げ出したような罪悪感で、そう呟いて居た。








ユウトは港の上空で浮かび、私達を待って居た。


「あれ、浮かべようと思う。」


そう指差したのは、あの有名なクイーン・メリー号だった。


「おにいちゃん、あんな大きなの浮くの?」


みのりちゃんがビックリした顔をしてユウトにそう言った。


「ユナの乗ったジャンボジェットを救助した時、僕は重さとか感じなかったんだよ。 あれ100トン近くあったらしいんだ。」


ユウトは私達の顔を見ながらそう言った。


そう言えば、ファレルのビジネスジェットを浮かべてロスに飛んでた時も、重さは感じなかったのを思い出した。


「もし一人で駄目でも三人なら、浮かべられると思うんだ。」


ユウトはそう言うと、ポケットから赤銅色の『特級珠』を取り出した。


「特級珠の魔力を何個か同時に掛ければ、念動力の力も強くなると思うんだよね。」


彼はそう言うと私達に『特級珠』を配ろうとした。


「あ、私自分のあるから要らないわ。」 みのりちゃんはそう言うと、ポケットから赤銅色の玉を幾つか取り出して次々に潰して行った。


私もポケットから『特級珠』を一握り取り出して、念動力を強化させて行った。


「手分けしてあの係留してある鎖を切ろう。」


ユウトはそう言うと、クイーン・メリー号へと飛んで行った。


私も後を追い、ユウトとは逆に回って次々と係留用の鎖を切って行った。


鎖と言っても太さが10センチはある巨大なチェーンだったが、念じただけであっけなく切れて行った。


一周回って鎖が残って居ない事を確認し、船のブリッジへと向かおうとした。


確か300メートルと聞いた巨大な船体が、浮かび上がり始めていた。


ユウトが浮かべたのかと思ったら、隣で唖然あぜんとした顔でクイーン・メリー号をながめていた。


「全然重さ感じないね! おにいちゃん。」


操縦席のあるブリッジの屋根の上に立ったみのりちゃんが、大声で私達に向かってそう言った。


300メートルの巨大な船体が音も無く、上空へと上昇して行った。


私はみのりちゃんの隣に降り立ち、500メートルは下に見えるロスアンゼルス港を見下ろしていた。


まるで悪い冗談の様だった。


ユウトが船の中にあるレストランの従業員達だろうか、コック姿のアメリカ人達に捕まっていた。


私は空を駆けてそこへ飛び、話を聞いた。


「一体何事が起ってるんだ? なんで空に、、」


年配のシェフらしき人が聞いて来た。


「今USバンクタワーで火災が怒ってるのを知ってますか?」


私はコックたちの先頭に居る彼にそう言った。


「当たり前だ。 あ、君は、、Ms.runaじゃ無いか! 救助はしなくても大丈夫なのか?」


と彼は、テレビで見たらしく私が大型バスで被災者を救い出していた事を知って居た。


「バスじゃ間に合わないんです。 だから、この船で救助に向かいます。」


そう言うと、彼らは驚き、そして突然喜び出した。


「凄い! こんな瞬間に立ち会えるなんて!」


「wow!」


口々に歓喜の声を上げ、取り出したスマホで私やユウトとの写真を撮り始めた。


デッキにも宿泊客らしき人達が、カメラを片手に写真を撮って居た。


今話をしたシェフが、宿泊客達に説明を始めて居た。


200人を超す客達が、カメラやスマホを片手に私やユウト、そして操縦席の上で仁王立つみのりちゃんを撮って居た。


これから向かうのが燃え盛る高層ビルだと知って居るはずなのに、彼らは喜び興奮していた。


アメリカ人と言う人種の不思議さを、私は感じていた。


船はもう、USバンクタワービルの屋上に横付けしようとしていた。


屋上の被災者たちは誰もみなほうけたような顔をして巨大な船体を眺めていた。


それはそうだろう。 300メートルを超すクイーン・メリー号が空を飛び、自分達の元へ向かう様子を見たなら、私でも唖然とするだろう。


みのりちゃんの念動力の支配下にある船体は、あのヘリコプターの墜落事故の時のフィットの様に、結界で強化されているらしかった。


軋む音一つ立てず空を飛ぶのだから、物理法則の支配から開放されているのだろう。


6000人の被災者達を、私と一緒に救助に当たっていた消防士たちが誘導した。


デッキに乗りきらない人達は、船内へと案内されて行った。


この奇跡の瞬間を感じようと、多くの人達がデッキに残りたがった。


最後の消防士が乗り込むと、私に合図を送って来た。


「みのりちゃん。」


私がそう声を掛けると、彼女は屋上から船を遠ざけた。


サービス精神旺盛なみのりちゃんは、一瞬でマッハの世界へと被災者達を連れて行った。


歓声が上がった。


それも一瞬だった。


2秒後には35キロ離れたロングビーチに着いて居た。


拍手が沸き起こり、歓声が上がった。


クイーン・メリー号は静かに降下して、元の係留場所へと下ろされた。


私は何百と言う人達に抱き締められ、頬にキスされた。


消防車と救急車のサイレンが、そして何十台と言うパトカーのサイレンと共に近づいて来た。


「瑠奈、がんばったね。」


ユウトのその声を聞き、私は後ろを振り向いた。


安堵と、そしてユウトの優しい声で膝から力が抜けていた。


抱き締めて受け止めたユウトに、私は抱き付いてキスをしていた。


周りを取り囲む人々から歓声が上がっていたが、それも気にせずに私はユウトに抱き付いて居た。


(これ位のご褒美は、当然よね。)


そう心の中で呟きながら。



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