屋上にはまだ6000人
サンタローザ島の上空を過ぎた当たりで速度を落とし、衛星電話で瑠奈に電話した。
「もう少しで着くよ。どんな状況なの?」
僕は日本を出てから2時間近く経っていたから心配で、瑠奈にそう聞いた。
「今火事が56階まで燃え広がって居て、私が助け出した人数はまだ1569人よ。 このままじゃ間に合わないわ。」
電話口の向こうからは鳴き声や叫び声が聞こえ、彼女が慌ただしい状況の中だと分かった。
「先生は?」
僕は新しい情報は無いか知りたくて、瑠奈にそう聞いた。
「シティーホールで一連のテロの情報を集めて居るわ。 FBIに頼まれて。」
彼女はそう言った。
「今どこ?」と、瑠奈と交代してあげようと思いそう聞いた。
「USバンクタワーの屋上! ちょっと忙しいの、切るわよ。」
瑠奈はそう言うと、電話を切っていた。
「みのり、瑠奈はあのビルの屋上だ。」
ダニエルを乗せて隣を飛ぶフィットに向かい、僕はそう言った。
衛星電話を使う為に速度を落としていた僕達は、一気に加速した。
10棟ほどの高層ビル群の一角から、もうもうと黒煙が上がって居た。
風が強いのか、黒煙はサン・ディエゴの方へと何キロもに渡ってたなびいていた。
バンクタワービルの周囲を旋回して状況を見ようと近づいたら、丁度瑠奈の操って居るであろう大型バスが屋上から飛び立った所だった。
すぐ隣にそびえたつビルの屋上へとピストン輸送をしていたらしかった。
「chase bank」とあるビルの屋上には、消防隊が待ち受けて居て、すし詰めのバスから降りる被災者達を誘導していた。
chase bankの屋上にフィットを近づけて降りると、瑠奈の操るバスへと飛んだ。
「あと何人残ってるんだ、瑠奈。」
僕は彼女にそう聞いた。
「まだ6000人も居るの、間に合わないかもしれない、、」
疲れ切った瑠奈はハンドルに額を押し付けながらそう言った。
「瑠奈さん、代わろうか?」
いつ飛んで来たのかみのりが、僕の後ろに浮かびながらそう言った。
「みのりちゃん、市長に連絡してもう一台バスを手配して貰うから、一緒に運んでくれる?」
瑠奈は縋る様な顔でみのりを見詰めると、弱々しくそう呟いた。
「わかったわ。 どこに行けば良いの?」 みのりは瑠奈にそう聞いた。
「あの白い建物よ。 分かりづらいわね。よく見ててね。」
瑠奈はそう言うなり右手の人差し指をピストルの形にして狙いを着けた。
「今屋上が吹き飛んだ、あの白い建物ね?」
僕には見えなかったが、遠視を使う2人は理解し合って居た。
「行くわ。」 そう言うとみのりは上空に浮かべた黒いフィットへと飛んで行った。
「ユウト、何か方法を考えて。 もう61階まで火の手が広がってるらしいの。 時間が無いわ。」
そう言うと瑠奈は同乗している消防士と共に大型バスで、もうもうと黒い煙を上げて燃えているUSバンクタワービルへと飛んで行った。
サンタローザから高度を落としてロスアンゼルスに向かう途中、僕は何かを見ていた。
まだ6000人もの人があの煙に包まれたビルに残されて居る。
バスでは精々100人を運ぶので精一杯だろう。
サンタローザ上空で何か考えが浮かんでいた。
一度の大量に運ぶには、、そう、、上空からでもその大きさが分かるほどの客船を見たんだ。
「先生。今話せますか?」
僕は繋がるなり細貝先生にそう言っていた。
「白鳥さん。 大変な事が分かりまして、、」
先生はまた余計な事を探し出したようだった。
「先生、今は時間が無いので聞いてください。 近くに大量に人を乗せられる大型客船とかタンカーはありませんか?」
「ロサンゼルス港のロングビーチに、クイーン・メリー号が停泊していますね。 もしかして、それでビルの人たちを運ぼうと言うんですか?」
感の良い先生は、先にそう言っていた。
「許可は取れますか?」
僕はそう聞いた。
「目の前にロスアンゼルス市長が居ますから大丈夫です。」
先生はそう僕に言った。
スマホのgooglemapで「クイーン・メリー」で検索すると、港と停泊場所が分かった。
「これから向かいます。」
僕はそう言うと、フィットに戻る時間も惜しんで空に舞い上がった。
大型客船「クイーン・メリー号」の停泊するロングビーチへと向かって。




