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わんにゃん戦争  作者: 猫又
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第一話 「始まりの咆哮」

紅く染まった空に爆発音が轟く。辺りから響く乾いた音の銃声。人の悲鳴。獣の雄叫び。

恐らく外では何かが暴れているのだろう。この街は現在、避難指示が出されている。何者かの襲撃に街はパニック状態だ。すぐにでも避難しなければならない。

 しかし俺は真っ暗な部屋の片隅でノートパソコンをいじっている。某大型掲示板で情報収集をしているのだ。この街で、今何が起こっているのか、まずは情報がないとなにも始まらない。日頃、現実でゾンビが現れたらとか、異世界に転移してしまったとか妄想を得意とする俺は冷静だった。

 ある動画に目が留まった。その動画はこの街の某大型掲示板の利用者が撮影したものらしい。俺は最初はテロだと思った。それか妄想も甚だしいがゾンビとか。しかしその動画に映しだされていたは・・・・・・「犬」だ。犬と言っても、チワワやプードルなんて可愛いもんじゃない。

見た目はそう熊のような体格の真っ黒な毛で覆われた狼?だろうか。山から下りてきたのか?いやこの街の山に狼なんているのか?しかしこんな大きな狼は見たことない。しかも二本足で立っている。狼男か?その狼と思わしき生き物は前足の爪で人をいとも簡単に切り裂いている。動画の音量は消していたが、動画からその場にいる人達の恐怖、悲鳴、驚愕がヒシヒシと伝わってくる。警察隊や自衛隊の放つ銃弾の雨をものともせず殺戮を続ける狼。狼一頭だけなら制圧され、街に平穏が戻るのも時間の問題だと思ったが、動画のアングルがぐるりと変わる。そこには何十頭もの犬の群れ。先ほどの狼以外にもゴールデンレトリバーらしき犬やパグみたいな犬。多種多様にいる。だが普通ではない。通常の倍以上に巨大な体、二本足で立ち、牙をむき出し垂れる涎が嫌に目に付く。その顔から溢れんばかりの憎悪。もはや犬ではなく。まるで漫画やアニメにでてくる怪物だ。そして動画はひどく乱れ終わっていた。撮影者は、動画を撮り終えてすぐ某大型掲示板にアップロードしたようだ。動画投稿の後、1レスだけ残して、その撮影者のレスはなかった。

----「この街にいる人がこれを見ていたら、すぐ逃げろ!この街だけじゃない恐らく日本はもう終わりだ。どこかに隠れるんだ。どうか生き延びてくれ。」

俺は大広場に救助隊がいるとゆう情報を確認しお祭り騒ぎの某大型掲示板を閉じ、行動を開始した。


 

 

 外からは相変わらず銃声、悲鳴、爆発音、雄叫びが響いている。あの化け物を止められずにいるのだ。俺は急ぐように身支度を始める。まずはサバゲー用の服---迷彩服---に着替え、あの化け物相手に約に立つかわからないがエアガンを装備する。そしての趣味のナイフコレクションから実用性のありそうなナイフを手にする。この非常事態だ、刃物やエアガンを持っていても自分を守るための道具だと主張できるはずだ。

家の付近で---家といっても一戸建てではなく二階建てアパートなのだが---悲鳴が聞こえた。

 「だ・・誰かぁあああ!!!助けて!助けてください!」

カーテンを閉め切っている窓の隙間から外を見ると、路地に女性がいた。そして数メートル先には例の犬。

犬種は多分柴犬か?しかし二本足で立ち屈強な筋肉を持っているのが遠目でもわかる。

俺がスーパーヒーローなら格好良く登場して助けるだろう。しかし!俺はスーパーヒーローじゃないから今助けを求めている彼女を助けることはできない。すいません。ヘタレなんです。ごめんなさい。

「だ・・だれか・・いやあああああああ!」

グシャ ビシャアア 窓の隙間から覗いていた俺の目の前に血が吹き上げる。俺は恐怖に呑まれガチガチと歯を鳴らし、震えた。無理だ。こんなおもちゃの銃でなんとかなるはずない・・。俺もすぐ見つかり彼女みたいに真っ二つに引き裂かれるだろう。部屋の片隅にうずくまり、絶望に怯えた。

ウ”ワオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ン!!!!

柴犬が吠えている。その雄叫びに一層と恐怖が俺を蝕む。ガチガチガチガチガチガチガチ

外で柴犬は周りの様子を窺っているのか、それとも先ほど殺した獲物を食べているのか、遠くに響く銃声しか聞こえない。怖くて、怖くて外の様子を見ることができない俺はしばらく息を潜めることにした。

 

 何時間経ったのだろう。ゆっくりと慎重に、カーテンの隙間から外を窺う。もう柴犬はいなくなっていた。あの助けを求め叫んでいた女性の死体も。俺はまだ若干震える脚に喝を入れ、逃げる準備を始める。

今は自分が生き残る方法を模索しよう。他人を助けている暇などない。自分も助けれない人間に他人を助けることなどできない。

「とりあえずこんなものでいいか・・。」

俺は玄関の扉をゆっくり、少しだけ開け様子を窺う。遠くから聞こえる銃声を除けばこのあたりは静かだ。いたるとこで火事が発生しているのだろう。夜なのに空が紅く染まって明るい。俺はゆっくりと尚且つ慎重に扉を閉め階段を降りる。役には立ちそうにないがエアガン---デザ-トイーグルのガスガンだが---を構え、音をなるべく立てないように移動する。女性が倒れいた辺りは真っ赤な血で染まっていた。車一台が通れそうな路地を某ゾンビゲームを思い出し移動する。闇雲に行動しても犬達に見つかってしまうだろう。とりあえずは救助隊がいる大広場に向かわなければ。


------この惨状を愉しもうじゃないか。(厨二病)


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