表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

四話 調薬



 恵みの森は薬草や果実など植物系のアイテムを採取出来る場所だ。


 旅立ちの草原の適正レベルが1レベルなのと比べて恵みの森の適正レベルは5レベルと高く、本来なら1レベルの俺が探索できるような場所ではないのだ。


 まあ今の状態の俺なら、ってはなしだけど。


 しかし……。


「おい! 湧いたぞ!」


「死ねぇぇ、クソ犬が!」


「他には湧いてないのか!」


「ダメだ、何処を探してもいねぇよ」


 こんな感じで恵みの森のモンスターも狩り尽くされているようだ。


 恵みの森で出てくるモンスターは犬系が多く、十人近くのプレイヤーに囲まれてフルボッコにされていた。


 とにかく、理由がなんであれここでも安全に採集が出来るんだ。ガンガン採っていこう。


 それに隠密のレベル上げも同時にやるとつもりだ。何処かに隠れて使わないと隠密の経験値は手に入らないのだ。


 ついでに探索も使っておこう。


 探索の範囲は1レベルで半径10メートルでレベルが上がるごとに少しずつ半径が大きくなっていくらしい。


 ちなみに隠密は1レベルの段階では気配がちょっと薄くなる程度で、相手の後ろに立ってイタズラをするぐらいしか使い道がないらしい。


 どちらもまだ使い勝手が良いとはいえないので、どうにかして手っとり早くレベルを上げたいが、スキルの経験値は一回使うたびに

少しの経験値が手に入るようになっているらしい。


 結局はスキルを何度も使ってコツコツとレベルを上げるしかないようだ。


 そうして、スキル上げも平行しながら日が暮れるまで採集を続けたのだった。






 俺は人通りの少ない路地裏に来ている。採ってきた物を使って調薬をするためだ。


 調薬のリストにはレベルにあった薬だけが載っていて、原料しか書いてない。


 いくつか手順があり、それを間違えると薬の効能が落ちてしまうのだ。


 つまり、正しい調薬方法を探りながら作っていかなければならないということだ。


 さいわい、初級ポーションの材料であるアモネ草が大量にある。これを使って練習することにしよう。


 まずは、沸騰している水になんの処理もしていないそのままのアモネ草を入れる。そして十分ほど待つ。


 そうしてできた物がこれだ。



 色の付いた水

アモネ草の苦みだけが移った、ただの苦い水。



 失敗作か。いや、もしかしたら苦みが何かに使える日が来るかも……来ないな。


 試しに飲んでみたが青臭さと苦味があるだけで何の効果もなかった。


 次はアモネ草を細かくちぎってから沸騰している水に入れる。今度はさっきよりも早く水の色が変わり五分ほどで完成した。



 劣化初級ポーション +HP5%

アモネ草の成分が足りない粗悪品。多少はHPが回復する。



 一応それらしきものは出来たがまだ違うようだ。


 これも苦いが青臭さは軽減されているようだ。何でだろう?


 今度はアモネ草をすりつぶしたものを沸騰している水に入れ、色が変わったらアモネ草のカスを取るために布で濾す。



 初級ポーション- +HP10%

アモネ草を使ったポーション。制作者の腕が未熟なため通常のものと比べて効能が少し低くなっている。



 よし、やっと完成品ができた。少し効能が低くなっているようだが何度も作って調薬スキルのレベルを上げればそのうち普通のものも作れるようになるだろう。


 苦味は残っているが青臭さは完全になくなったお陰でかなり飲みやすくなった。


 とりあえず、他の薬を作る前にレベルを上げたいのでひたすらポーションを作るか。ポーションなら使い道に困ることはないだろうし、ザックに買い取って貰えばいい。


 そうして二時間ほど作り続けた結果がこれだ。


劣化初級ポーション×3

初級ポーションー×13

初級ポーション×24

ドロドロした液体×1

ネトネトした液体×1


 初級ポーション +HP15%

アモネ草を使ったポーション。平均的な仕上がりで薬草の効能を十分に引き出している。


 初級ポーションーを12個作ったときに調薬スキルが5レベルになり、それからは-補正の付かない普通の初級ポーションが作れるようになった。


 といってもときどき失敗するようで劣化初級ポーションが3つ、初級ポーションーが1つ、そして謎の液体が2つ出来上がった。


 ドロドロした液体は赤色をしていてネトネトした液体は黄色だ。


 アイテムの説明をみても失敗作としか書いてなく自分が被験者になる勇気もないのでいったん保留ってことで。


 やっと調薬スキルが10レベルになったのだ。


 今度は本命の毒薬作りだ。


 材料は

アモネス草×3

パルセ草×4

目眩草×1

痺れ茸×3

夢見草×2

だ。


 パルセ草と痺れ茸は麻痺毒を持っていて上手く調薬すれば大きな戦力になってくれるはずだ。


 まずはパルセ草から。


 初級ポーションと同じようにすりつぶして沸騰した水に入れ、色が変わったら布で濾す。


 蒸発した水分が目に入ってピリピリする。濾すのに使った布も薄い黄色に変色してしまっている。かなりの効能が期待出来そうだ。


 そうして出来たのがこれだ。



 中級麻痺毒ポーション 麻痺毒4

パルセ草を使った強力な毒薬。小型のモンスターに使えば一本で動けなくなるだろう。中級以上の解毒剤でなければ効果がない。



 おお! いいぞ! これなら十分に使える!


 まだデスゲームが始まってから一日も経っていない。中級の解毒剤を持っている奴なんていないどろう。


 つまり、今の段階ではこの毒薬は一撃必殺の武器になるのだ。麻痺毒なので毒自体に威力はないが数秒間行動不能になるのだ。殺すのに十分な時間だろう。


 他の毒薬も慎重に作っていく。


 中級毒ポーション 毒4


 中級混乱ポーション 混乱4


 中級睡眠ポーション 睡眠4


 ゲル状の液体


 混合麻痺毒ポーション 麻痺5


 混合麻痺毒ポーションはパルセ草と痺れ茸を同時に使って出来たもので現状では一番強い毒だろう。ちなみに痺れ茸オンリーだと中級麻痺毒ポーションだった。


 違う素材を同時に使うと効能が上がることもあるみたいだ。


 なら、同じ素材も同時に使えるのでは?


 アモネ草が切れているので初級ポーションで代用しよう。


 方法は簡単だ。初級ポーション10本分を鍋で煮詰めるだけ。単純な計算でも十倍の効能が期待できる。


 さて、どうなるのだろうか。


 すっかり日が沈んだ町で鍋を見つめながら今夜の作戦を再確認していた。


 ゲームの中だというのに少しだけ寒く感じる。指先だけが冷えるといったところまでは再現できていないが、それでもかなり現実に近い状況だろう。


 そんなリアルのようなゲームで俺は本当に人を殺せるのだろうか?


 うじうじ悩んでも仕方がないことは分かってる。それでも不安に感じてしまうことはしょうがない。


 俺はただの人間だ。


 主人公のように正義感が強い訳ではない。


 悪人ほど度胸がある訳でもない。


 ただの自分が可愛い一般人でしかないのだ。


 おっと、ポーションが完成したようだな。


 まあ、殺すしか生きる道がないのだから殺す、今はこれでいいんだ。余裕が出来たときにまた悩めばいい。


 さて、ポーションの結果はっと。


 過剰回復ポーション 激痛7 +HP50%

初級ポーションが濃縮されて出来たポーション。通常のポーションと比べて回復速度、回復量は多いが副作用として凄まじい激痛が体を駆け巡る。対策をしていなければ痛みで気絶、稀にショック死してしまうことがある。



 ……ずいぶんと凶悪なものが出来たな。


 HP50%回復は凄いと思う。初級ポーションで15%だから、だいたい上級ポーションぐらいの効果じゃないかな? そんなものがゲーム開始直後から作れてしまうなんて。


 これだけだったらゲームのクリアを大幅に早める素晴らしいポーションになっていただろう。


 問題は「激痛7」だ。


 ポーションの説明文を読む限り、このポーションを使うと凄まじい激痛に襲われ、場合によっては死ぬこともあるとか。


 少なくとも戦闘中には使えないな。回復しても激痛で動けなくなってその隙に攻撃されてしまう。


 そもそも回復する代わりに死ぬかもしてないポーションなんて誰も使いたがらない。


 そう、自分自身に使いたいと思うプレイヤーはいないだろう。


 俺の考えでは、これは殺人用の道具ではないだろうか? それも不意打ち、そして拷問の為の。


 このポーションは一応回復ポーションに分類されているから危険察知とか毒耐性に引っかからない。つまり、普通のポーションだと偽って飲ませることが出来るのだ。


 毎回道具の確認なんてしないので、ある程度親しくなってから手渡しすれば何の疑いもなく飲んでしまうだろう。


 もう一つの使い方、例えば相手を動けないように拘束してからこのポーションを飲ませ続けるとか……。


 まあ、俺には関係のない使い道だ。俺の場合は殺せればいいだけなのだから。



 とりあえず、ポーションの方も準備が出来た。


 あとは実戦、殺しに行くだけだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ