表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1話

元々「パワードスーツとかロボットみたいな機種とか地球では発展しないけど、じゃあどういう状況ならありえるだろう」

詰まっている際にふと思い浮かび、勢いに任せて書き始めたものです

 機動歩兵という名の人型ロボット兵器が発展するきっかけとなったのは人類が宇宙へと進出した後の事だったという。

 地上でなら機動歩兵の出番はない。

 ロボット兵器もそうだが全身に装甲と武装をつけたパワードスーツを装着するより、生身のまま素早く、より小さな隠蔽に、より静かに隠れられる方が有効だからだ。だから人類が生身で動けるような場所にいる限りはパワードスーツというのはあくまでアシスト機能を重視した追加装備の類だった。

 だが、宇宙ではそうはいかない。

 地上と同じく生身のまま、或いはちょっとしたマスクとゴーグル程度の軽装備程度で大丈夫な惑星ばかりならいいのだが生憎人類が生身で暮らすには問題のある惑星の方が遥かに多い。人類は五十度の熱い気温や、マイナス百度の寒冷下で長時間活動可能な生物ではない。酸素濃度が濃すぎてもダメ、薄すぎてもダメ。酸素濃度が大丈夫でもそれ以外の有毒ガスが大気中に含まれていれば矢張りダメ。宇宙放射線が一定以上地表に降り注ぐような惑星でもやっぱり生身で動くのは危険。

 かといって、十分なレベルのテラフォーミングには金も時間もかかり、とても人類にはその完了を待っていられるような余裕はなかった。それだけ人口爆発も食料・水を含めた資源の不足も深刻な状況だったのだ。

 そうして未だ過酷な環境の惑星へと殖民を行った人類だったが、ここでも人類は戦いの業から逃れられなかった。

 

 人類発祥の地である地球自体は最後の世界大戦の影響で荒廃し、資源も殆ど掘り尽された状態だった為にテラフォーミングを終えた惑星が誕生するなり富裕層、支配者層が真っ先に逃げ出していた。

 結果的に、現在の地球は人類発祥の地として環境浄化を行った上での人類共通の保護区と化している。

 なまじ、人類が太陽系に生まれた為に他と比べても資源に乏しいこの星系を多大な犠牲を払ってまで奪うだけの価値をどこも見出せなかった故の妥協の産物だったとも言える。


 そこまではいいのだが、資源を巡って争い、より良い環境の惑星を巡って争い……。

 そうした中で生まれたのが機動歩兵だった。

 過酷な環境の惑星では宇宙服やそれを改造した地上作業服を着込んだ状態での戦闘を余儀なくされた。

 そうした服は当然動きにくいし、かといって脱いだらあの世逝き確定。

 ならばと、宇宙服自体にパワーアシスト機能や耐弾装備、武装を施した戦闘用宇宙服が誕生した。

 それが発展を続け、何時しか生まれたのが機動歩兵。

 2G、3Gという高重力下でも活動を保証する筋力強化機能、戦闘車両や他の機動歩兵の装甲を撃ち抜けるだけの大型武装、長時間の行動を可能とする為のバッテリーや生命維持システム、探知システムなどを積むに連れ、機動歩兵は大型化し、しかし、ある程度以上の大型化は今度は的になりやすいとして現在一般的な機動歩兵は全高4m程度の人型兵器と化している。

 

 ……などと述べはしたものの。


 「まあ、そうはいっても俺は機動歩兵でもねえし、戦車の需要もなくなってねえ訳だが」

 「何言ってんすか、車長」


 呆れたように俺の独り言に返してきた部下に「何でもない」と返しつつ、手元の電子書籍を閉じ、マグカップに熱い珈琲を注ぐ。今読んでいたのは暇潰しに入れていた兵器の歴史に関する本。人類は未だ紙の書類、紙の本という奴を捨てられないでいるが、こうした空間が極めて限られた場では電子書籍という奴が便利だ。何といっても嵩張らない。

 何せ今、俺が乗っているのは88式戦闘車両、要は戦車だ。

 反重力ホバーシステムとそちらが故障した時に用いる緊急時用のキャタピラを持ち、主砲は120ミリレールカノン。他に砲塔側面、左右に各1門の対空対人兼用のパルスレーザー砲を搭載し、分厚い装甲表面には耐レーザー被膜が施されている。

 操縦手と砲手兼車長という二人の乗員で構成されている車内は長時間の作戦行動を考慮して多少の広さは確保されているものの、矢張り狭い。まあ、戦車の中が広々していたらそれは裏を返せば戦車の車体そのものがデカイという意味であり、的になりやすいという事だから戦闘車両としては歓迎したくない話じゃあるが。

 これが作戦行動中でなければ後部に搭載された緊急時のシェルター兼用の休憩室を展開して横になったり出来るのだが今はそうもいかない。

 ……それでも機動歩兵よりはマシなのだが。

 現在では山岳地帯や森林地帯といった戦車が動きづらい地形では機動歩兵が、それ以外では戦車という分業が一般的だ。

 だが、機動歩兵は基本一人乗り。おまけにその構造中椅子を倒してのリクライニング機能もない。戦車のように少しでも立ち上がって背を伸ばすという事さえ出来ない。


 『戦車兵は辛いよ、でも機動歩兵はもっと辛いよ』


 そう言われるのは悪い意味で伊達ではない。

 この為、作戦行動可能時間は機動歩兵の方が遥かに短い。機械は持ち堪えられても中の人間が耐えられない。ここら辺はかつての艦船乗りと潜水艦乗りの関係に近いとも言える。


 「……にしても、やるならとっととおっぱじめて欲しいもんだぜ」

 「……同感ッス」


 とはいえ、逆に言えば戦車兵は機動歩兵より長時間車内に缶詰にされるという事でもある。

 無線封鎖中の現在、他の車両と話をする事も出来ないし、長年の相棒である部下とでは今更話すような話題もない。

 かといって生身でこの惑星で屋外に立っていたら、一時間どころか十分ともたず氷の彫像の出来上がりだ。そんな惑星で戦争するなんぞ正気の沙汰とも思えないが、氷の下には豊富且つ貴重な鉱脈が眠っているお陰で3つの国が睨み合っている状態が続いており、お陰で自分達もこうして戦場にいる。

 初期の頃の開発は3国共同でやっていたらしい。要はどこの国も単独で開発出来るだけの金がなかったって事らしい。

 そのまま仲良く資源を分け合えば良かったものを、その内1国が難癖をつけて独占を図った。いや、記録に残ってる限りは難癖どころの話じゃなく、「うちは資源が他より不足しているから多く得て当然」という態度だったそうだ。当り前だが、他2国が反発すると、戦力を送り込んで占領を図ったがこれを事前察知した2国が共同で艦隊を派遣、睨み合いになってしまった。

 ここで一旦、先に手を出しかけた国が2国同時に相手するのは分が悪い……と察したと思った。

 少なくとも交渉に応じる態度を取っていたんだが、この間にも物資補給船は送り込まれていた。当然だな、物資がなけりゃたちまちこの惑星じゃ悲惨な事になる。が、その補給船に紛れて、戦闘兵器を送り込んでいたんだなあ、これが。

 奇襲で一気に現地掘削施設を占領してしまった。おまけに、交渉に当たっている振りをした宇宙艦隊もこれに合わせて行動、奇襲攻撃を仕掛けて2国艦隊に多大な損害を与えるに至った。

 事ここに至り、他2国は激怒して同盟を結び戦争が勃発した。奇襲で艦隊戦力に大きなダメージを受けていたというのもあったようだ。

 その後押し返した2国もまたこの惑星に地上戦力を送り込み、しかし、騙まし討ちをした国はと言えば国民に嘘に基づいた教育を施し、自分達こそ被害者という立場を流す事で不利な状況にありながら挙国一致体制を取り、二ヶ国連合に対抗している。

 無論、これはあくまでこちら側に流れている話だ。相手側の情報と合わせてみたらまた別の姿が見えるのかもしれない。

 しかし……。


 (元々、3つの国の国力ってほぼ互角だったというからなあ……)

 

 次第に連合側が押しつつある。

 それを実感しているのは最前線の自分達だと思う。

 昨今、自分達同盟軍側は新たな戦闘車両や新たな機動歩兵の開発に成功し、投入を開始した。

 これに対して、敵軍は未だ旧式となりつつある兵器のまま更新されないままでいる。 

 単純に輸送が滞っているだけという可能性もあるが、それはそれで大問題だ。


 (敗北した後を考えると、連中も必死だろうからな)


 敗北したからとて、惑星自体の制圧まで至る可能性はまずない。

 惑星の一部だけを支配しているだけでもそこまで戦力を運び、惑星表面に降下し、億単位の人口がいる惑星を制圧する。考えるだけで気が遠くなるぐらいの金と物資と手間と時間が必要になる事は確実だ。かといって宇宙軍を壊滅に追い込んで惑星を封鎖した所で惑星全土を統治しているなら生活するだけなら干上がる可能性もまずない。封鎖する為の手間と金を考えるだけ無駄である。

 結局の所、同盟側が勝利するといった所で資源惑星を抑えるというだけでしかないのだが、ただでさえ相手は資源が枯渇しかけていたからこそこの資源惑星を独り占めしようとまでしたのだ。これで惑星を手に入れ損なえば間違いなく現政権は倒れる事になるだろう。そもそも、資源惑星を手に入れ損なえば経済的にも困窮する可能性はかなり高い。

 なまじ裏切ったという前例を作ってしまった為に、新たに開発を行う為のパートナーとなる相手を探すのも困難だろう。


 しかし、それも最早限界に達しているのかもしれない。

 そう思わせるのはここ最近の相手方の動きだ。

 立派に見える陣地を構築しているのに、妙に脆い。

 いざ侵攻してみれば作りかけのまま放置されている部分が各所にあったり、見た目だけ立派に見える物だったり……形だけ抵抗して放棄という状態が連続していた。

 当初こそ「何かの罠ではないか」という疑いを持っていた。

 何しろ、この惑星での戦闘は捕虜を得るのが非常に難しい。怪我をした状態で機動歩兵や戦闘車両の外部に放り出されて生きていられる程優しい環境ではないからだ。

 それでも二度三度と繰り返され、相手が後退を続ける内に、相手の装備が更新されていない事もあって限界説が広がりつつあった。


 ……それが間違いであった事を嫌と言う程思い知る事になるまであと少しの時間だけが必要であった。

地球ではロボット兵器というかパワードスーツ開発するより、生身の兵士を鍛えて装備持たせた方が安上がりなんですよね

なのでパワードスーツというかパワーアシストアーマーなら医療用含め開発が進んでいるものの、それらはハインラインの「宇宙の戦士」とかに代表されるような全身に着込むパワードスーツみたいなのとは全く異なるんですよねえ

けど、宇宙服を着込まないと生きていけないような環境下なら、必然的に発展するんじゃ?そう思いつつ気づいたら、書いていました。既に投稿中のお話優先ですので、当面更新予定は……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ