罰当たり
昨年、わが家は色々な厄介ごとに見舞われたため、落ち着きのない日々を過ごした。
そこで神様におすがりすることにした。大きな願いがあるわけでもない。平穏無事に地道な生活を送れるようにお願いしたいのだ。何も有名な神社仏閣を選ぶ必要もない。
と、いうわけで地元の神社に夫婦でお祓いを受けることにした。毎年お正月に初詣をしている神社だ。やっぱりこういうときも地元の土地神様を頼るのが筋な気がする。
正月は普通にお参りしたし、間がなさすぎるのもどうかと思ったので、二月の都合の良い日にお願いした。
その時私は平安初期の国風文化衰退時代に、和歌の復興に尽力を注いだ人たちのお話を連載していた。そして古今和歌集の「仮名序」と呼ばれる部分の訳と解釈が必要で、いつも頭の片隅にそれがあった。神社と言う場所は当時の文化を色濃く残している場所。いやがうえにも作品世界に浸ってしまう。
いかん、いかん。今日は本気でお祓いを受けに来たのだ。邪念は捨てねば。
でも平安時代の装束のような狩衣を身に着けた神主さんの姿を見ると、やっぱり気分が盛り上がる。いつも自宅兼社務所でお守りをいただく時は、セーター姿なので新鮮だ。極寒の北海道仕様の近代的な建物でも、普段は入ることのない社殿内に入れてもらい、録音だろうとも雅楽が厳かに流れればそれなりの雰囲気になる。そして神主さんがやまとことばで家内安全の祝詞を唱えてくれる。
「いやしろの、みけみきを、ささげまつりて……」
御饌神酒。お神酒のことだ。日本酒一本献上すればよかったかな?
またもや邪念が。家内安全に集中しろ!
「まがことなく、なりわいを、いやつとめに……」
仮名序にある「ことわざ」の解釈に、「言葉の生業」って意味も含めたいのよね……って、邪念がまた! 集中、集中!
「かしこみ、かしこぉ~み、もおすぅ~」
……うちの夫、「かしこみ」をずーと、「かしこめ」だと思ってたのよね。「かしこめ、かしこめ」じゃ、「かごめ、かごめ」の親せきみたいだ。あー、「カ○メ」の野菜ジュース飲みたいな。
邪念もここまで進むと顔まで緩んでくる。ニヤつきながらお祓い受けるって、どうなのよ?
それでもなんとか顔を引き締め直し、玉串も無事に捧げてお祓いは終了した。信仰心のかけらもないまま終えた気が……。
あれからひと月半。私は夫の提供してくれた、貧乏神が福の神への出世を目指す話と言うネタをもとに、火の女神の孫が放火したり株を操作したりする短編を書き、
「株の操作が出来るなら、国の最高神に国政操作させよう!」だの、
「簡単に出世させずに、男神と恋愛して今度はその子供が騒動を起こす、壮大なエンドレスはどうだ?」
だの、実に罰当たりな会話で盛り上がっている。(書くかどうかはわからないけど)
お祓いの後でいただいたお札はうちの一番目立つ場所に御安置して、毎朝水を上げて手を合わせている。でもその一方でこの会話(そして女神ネタの小説)。
神様は、冗談を理解してくださるだろうか? ……お願いですから、してくださいませ。




