ダンジョン
「よいよ。我が主が負けるわけがないのだし」
「そういうこと。わたしにきみは自分に賭けろって言ったんだから、最後までちゃんと賭けさせなさいよね。わたしはずっと、ヨウイチくんに賭けるって決めたんだから」
二人は、燿一言葉を発する前に、すでにその決断を降していた。
「ブヒヒヒッ! 決まりだな」
二人の言葉を聞いて、ポルダーバール卿はそう告げる。
ばかな。ダメだ。なぜ彼がその申し出をしたかわからないのか。それは、絶対に、絶対に勝てる自信があるからで。
「勝負の方法はそうだな。最近予がはまっているスポーツがあってね。ダンジョン・ダイビングで決めるというのはどうだろう」
「ダンジョン・ダイビング?」
燿一が疑問の声を口にすると、カーネリアが答える。
「最近貴族の間で流行っている遊びよ。かつて魔王が居城としていた、この国の西にある洞窟は、魔王亡きあとも瘴気が残り、現代でも唯一魔物が自然発生するの。しかも魔界の影響で、洞窟内の作りは入るたびに複雑なダンジョンとなりその姿を変える。一度たりとも同じ姿になることはないと言う。そこに、あらゆる強い武器や防具を揃えて、強靭な戦士を引きつれてはいって、ダンジョンを探索するのが、ダンジョン・ダイビング。自然発生するモンスターは魔王がいなくなった今となってはかなり弱いものだけで、強い防具をつけてればめったな危険もないから、適度なスリルが楽しめるダンジョン探索は貴族の中で最近人気となっているの」
また、性悪な趣味だ……。
「ブヒヒッ。そう。同時にダンジョンに入り、どちらの方が先に最深部にたどり着けるかを競うゲームだよ。ブヒヒヒヒヒッ!」
説明を一度聞いただけではいまいち伝わりにくかったが、つまりダンジョン・ダイビングとは貴族が行うスポーツなのだろう。そんなもの、趣味として行っているポルダーバール卿と、初めて行う燿一とでは、そもそも勝負にすらならないではないか。
「ブヒヒ。ただし二週間猶予をやろう」
「なに?」
「どうせやったことがないのだろう? 二週間みっちりダンジョンについて勉強し挑むのだね。二週間後の正午12時きっかりに、ダンジョンの前で落ち合おう。そこでゲームスタートだ。予が勝てば貴様の奴隷二人を、そしてきさまが勝てばこの奴隷を」
二週間。二週間と言う期間があれば大概の対策はとれる。
ちらと燿一はポルダーバール卿を見つめる。どうやらそうとうこのゲームに自信があるようだ。一切勝ちを疑っていない。しかし燿一だってギャンブラーだ。時間さえ与えられれば、どんな種目であろうと、なにかしらの突破口。勝つ道筋くらい立てられるはずだ。いや……。
勝たねばならぬのだ。なにがあっても。ルチルは助け出さねばならないし、それにこの二人を手放すつもりも毛頭ない。だから、勝たなければならないのだ。どんな方法を使ったとしても。
「わかりました。それで、決めましょう」
「ブヒヒヒヒッ。ではせいぜいダンジョンの対策に時間を費やすのだな。ちなみに! 予は基本的に毎度五時間は切るぞ。ブヒヒヒヒッ!」
そう言って馬車の中に戻ったポルダーバール卿は従者と奴隷を引きつれて中央街に向かって行進していく。
「ヨーイチ……」
「ルチル、少しだけ待っていてくれ。なんとしてもきみをそこから、おれは……」




